(23ページから27ページまで) 重点施策 ◆ 基本理念に掲げる「だれもが生きがいを実感しながら、共に充実した生活を安心して送ることができる地域社会」をつくるためには、障害のあるなしに関わらず、お互いの人格と個性を尊重し、支え合うという文化を醸成していくことが何よりも重要です。 障害のある人に対する不当な差別の禁止等を定めた「障害者差別解消法」や「障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例」の認知度を向上させ、障害や障害のある人に対する理解を県民及び事業者に浸透させていくための普及啓発の取組を継続して実施していくことが求められています。 ◆ また、障害のある人が、地域社会の一員として充実した生活を送るためには、経済的な自立が不可欠であり、特に、働く意欲・能力を有する障害のある人の雇用・就労を引き続き促進することが重要です。 県内の一般企業における障害のある人の雇用率は法定雇用率に届いていないほか、福祉的就労の場で働く障害のある人の工賃水準も目標額とは未だ乖離があり、工賃向上の取組とともに、福祉的就労から一般就労への移行を促進するよう就労支援事業所及び企業等との更なる協力関係の構築、様々な形態での就労機会の創出が求められています。 ◆ 障害のある人が、地域で安心して生活するためには、住まいの場の確保や、その人の心身の状況等に応じた適切な支援・サービスを受けることのできる体制の整備が必要です。 県では、これまでも、障害のある人の地域生活移行等を推進するため、地域での生活の場となるグループホーム等の整備や、在宅サービス・相談支援体制の充実を図るとともに、重度・最重度の障害のある人のセーフティネットとなる施設入所サービスの充実にも取り組んできましたが、これらの一層の充実が求められています。 ◆ 県では、こうした経緯から、次の3項目を本プランにおける重点施策として位置づけ、基本理念の実現に向けた様々な取組を進めてまいります。 1 障害を理由とする差別の解消 2 雇用・就労等の促進による経済的自立 3 自らが望む地域・場所で暮らせるための環境整備・人材育成 1 障害を理由とする差別の解消 <背景> 障害のあるなしに関わらず、全ての県民がお互いの人格と個性を尊重し、支え合える地域社会づくりのためには、障害や障害のある人に対する深い理解が必要であり、これは障害のある人の地域生活への移行を進める上でも大変重要な要素であると言えます。   本県では、令和3年3月に「障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(以下この章において「共生社会づくり条例」といいます。)」を制定し、「何人も」「障害のある人及びその家族その他の関係者」に対して、不当な差別的取扱いをすることを禁止しています。 令和4年12月に県が実施した県民意識調査では、「障害者差別解消法や共生社会づくり条例を知っている」と回答した割合が26.7%と低い水準であるほか、令和5年3月に障害のある人に対して同様の質問をした基礎調査でも、同法や同条例を「知っている」と回答した割合は37.1%にとどまっており、制度の浸透を含め障害及び障害のある人に関する相互理解は十分に進んでいるとはいえない状況にあります。 また、県民意識調査において、障害を理由とする差別について「経験がある」、「その場に居合わせたことがある」と回答した割合が22.7%であったのに対し、基礎調査で「差別の経験がある」と回答した割合は36.5%(知的及び精神の障害がある人は約4割)となっており、県民の間でも意識の乖離が生じていると考えられることから、これらの解消に向けた取組を進める必要があります。 なお、今回の基礎調査結果では、差別の経験や外出頻度において、性別による大きな特徴は見受けられませんでしたが、「外出しやすくなるために必要なもの」として「県民の障害に対する理解が深まること」と回答した全体の割合が21.3%であったのに対し、女性の割合は37.4%であったことから、特に女性が、障害を理由とする差別に関する制度の浸透が不十分であると感じていると考えられます。また、国の障害者基本計画において、障害のある女性は、いわゆる複合的差別など更に複合的な困難等に置かれる場合があるとされており、こうした配慮も含めた差別解消の取組が求められると考えられます。 <現状等> (1) 令和4年県民意識調査の結果概要(抜粋) ◆ 本県に居住する18歳以上の男女4,000人に対して実施し、回収数が2,010通であった同調査において、県全体で「障害者差別解消法や共生社会づくり条例」の認知について回答している割合は「知っている(26.7%)」、「知らない(73.3%)」となっており、障害を理由とする差別に関する制度の一層の周知が求められています。 ◆ また、障害を理由とする差別の経験等について回答している割合は、「自分自身が経験したことがある(3.2%)」、「居合わせたことがある(20.6%)」となっており、そのうち、「差別された又は居合わせた場所」の割合が最も高かったのは「学校・塾(37.4%)」で、次いで「自宅周辺(25.5%)」、「職場(21.4%)」、「小売店・飲食店(20.6%)」の順となり、「差別の内容」の割合が最も高かったのは、「偏見を感じるような対応をすること(24.5%)」で、次いで「障害のある人が困っているときに手助けしないこと(10.0%)」、「サービス等の利用を拒否された・制限された(7.3%)」の順となっています。 【図19】 県民意識調査の結果(抜粋) 差別解消法・県条例の認知 知っている 26.7% 知らない 73.3% 障害を理由とする差別 経験がある 3.2% 差別の場面に居合わせたことがある 20.6% 経験がない 76.2% (2) 令和4年度宮城県障害者施策推進基礎調査の結果概要(抜粋) ◆ 令和4年度基礎調査では、全体で「障害者差別解消法や共生社会づくり条例」を知っていると回答している割合は37.1%となっており、障害のない人を含んでいる県民意識調査よりも認知度は高い状況です。 ◆ 他方、「差別を受けたことがある」と回答した人の割合は全体で36.5%となったほか、知的障害及び精神障害のある人については、約4割が何らかの差別を受けた経験があると回答しており、差別を受けた内容として最も高かったものが「偏見を感じるような対応をされた」となっており、制度の浸透に加え、障害及び障害のある人に対する理解と合理的配慮の推進を図っていく必要があります。 【図20】 基礎調査結果の概要(抜粋) 差別解消法・県条例の認知 知っている 37.1% 知らない 62.9% 障害を理由とする差別 経験がある 36.5% 経験がない 63.5% <施策の方向> 県では、障害当事者や関係団体の意見を踏まえて、「共生社会づくり条例」を制定するとともに、県民の障害等に関する理解を深めるための啓発や知識の普及、障害を理由とする差別に関する相談窓口、助言・あっせんのための調整委員会の設置により相談・紛争防止体制の整備を推進してきました。 今後も、これらの施策の充実を図りながら、個別の相談事例の収集・分析等を通じた望ましい対応の共有や、アートやスポーツなど障害のある人の社会参加や交流機会の確保を通じた障害及び障害のある人に対する県民の一層の理解促進と周囲の人々の配慮の促進に取り組みます。 <主な推進施策> (1) 行政機関等における配慮 ◆ 県が策定した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」に基づき、管理職又は新任の県職員に対する内部研修等を実施し、障害のある人に対する理解の促進と適切な対応ができる環境整備を推進します。 ◆ 障害のある人が、県が主催する会議や各種行事等に参加しやすい環境づくりのため、参加者の障害特性に応じて、意思疎通支援者の派遣、資料の点訳や電子データ(テキスト)化等の合理的配慮の提供を行います。 ◆ 障害のある人が、行政関連情報を円滑に取得・利用できるよう、ホームページや広報誌など、県の広報媒体における情報アクセシビリティの向上を図ります。 ◆ 県では「共生社会づくり条例」に併せて、「手話言語条例」を制定するとともに、「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」が施行されたことから、障害特性に合わせた情報の取得及び意思疎通に支援が必要な方々への情報保障の一層の充実を図ります。災害時における情報提供方法の支援を含め、当事者団体や支援者団体とも連携し、「宮城県視覚障害者情報センター」及び「宮城県聴覚障害者情報センター(愛称:みみサポみやぎ)」の運営による情報提供機能の充実を図ります。 (2) 普及啓発・広報活動の推進 ◆ 県の広報媒体を活用し、障害を理由とする差別の解消に向けた関連情報の発信や、障害福祉サービス及び障害を理由とする差別をテーマとした「みやぎ出前講座」の実施等を通じて、障害や障害のある人、社会的障壁等への理解を促進します。 ◆ 共生社会づくり条例及び手話言語条例に関する普及啓発用リーフレットの配布や障害者アートをテーマとしたイベントの開催等による啓発・交流活動等を行うことで、障害及び障害のある人に対する県民の理解・関心を高めるとともに、障害のある人の社会参加を促進し、共生社会づくりを進めます。 ◆ 障害者週間(12月3日から9日まで)等における各種行事の開催など、障害当事者団体や支援団体を含む関係機関等と連携した啓発・広報活動に計画的に取り組みます。 ◆ 特に、障害に対する理解・関心の向上には、子どもの時期から障害のある人と交流する環境づくりが有効と考えられることから、「共に学ぶ教育」の推進と障害のある児童生徒に対する支援の一層の充実を図ります。 ◆ 内部障害や難病の方など、外見からは障害等があることがわかりにくい方々に対して周囲の方に援助や配慮を促すヘルプマークの配布や、歩行が困難な人のための駐車場利用証を発行・配布する「パーキングパーミット制度」のほか、事業者によるモデル的な環境整備や取組事例の紹介等を通じて、合理的配慮に関する普及啓発を推進します。 (3) 相談体制の整備 ◆ 障害がある人に対する差別や虐待に関する県の総合相談窓口である「宮城県障害者権利擁護センター」及び「宮城県障害者差別相談センター」を設置・運営し、市町村や関係機関等と連携の上、障害を理由とする差別の速やかな解消と未然防止する相談体制の整備を推進します。 ◆ 障害を理由とする差別に関する相談で、解決が見込めないときに、事案解決のためのあっせんを行うことができる「宮城県障害を理由とする差別の解消のための調整委員会」を設置し、事案解決に向けた一層の充実を図ります。 (4) 関係機関と連携した差別解消の取組 ◆ 障害者差別解消法に基づく障害者差別解消支援地域協議会の役割を担う「宮城県障害者施策推進協議会」等において、障害を理由とする差別に関する相談内容や対応事例、合理的配慮の事例等についての民間企業を含む関係機関との情報共有や事例分析、研修事業の開催等を通じて、障害を理由とする差別に関する紛争の防止・解決力の向上を図ります。 (ここまで)