(28ページから34ページまで) 重点施策 2 雇用・就労等の促進による経済的自立 <背景> 障害のある人の雇用・就労の推進は、社会参加の機会創出や生きがいづくりの面で大きな効果が期待されるほか、経済的な自立を促進する観点からも大変重要であるといえます。 このため、民間企業等における雇用機会の確保・拡大、職業訓練・職業能力の開発に対する支援はもちろんのこと、直ちに一般就労が困難な障害のある人のためにも、就労支援施設等の、働く意欲を就労に結びつける福祉的就労の場の確保・充実が必要であり、福祉的就労の場で働く障害のある人の工賃水準の引き上げや、福祉的就労から一般就労への移行を促進する環境整備が求められています。また、発達障害などの障害特性を有しながらも、障害者手帳を所持しておらず、障害福祉サービスを受けられない就労困難者もいることから、中間的就労の場の創出を含む横断的な支援が必要とされています。 <現状等> (1) 障害者雇用率 ◆ 障害のある人の雇用情勢については、障害のある人自身の働く意欲の向上と、社会全体の理解・関心の高まり等を背景に着実に進展しつつあり、障害者雇用促進法に基づく本県の雇用障害者数は、令和5年度で約6,800人、実雇用率は2.29%、法定雇用率の達成企業数830社といずれも過去最高となりました。 ◆ 他方、全国平均(2.25%)を上回っているものの、法定雇用率(令和5年度2.3%)には達していない状況にあり、一層の雇用機会の創出が求められています(※令和5年度の障害者雇用率が未公表のため、調整中)。 【図21】 障害者雇用率等の推移 (出典:宮城労働局資料) 雇用障害者数 平成30年度 5845人 令和元年度 6101人 令和2年度 6235人 令和3年度 6415人 令和4年度 6478人 令和5年度 6753人 障害者雇用率 法定雇用率 2.3% 平成30年度 2.05% 令和元年度 2.11% 令和2年度 2.17% 令和3年度 2.21% 令和4年度 2.21% 令和5年度 2.29% 【図22】 法定雇用率達成企業数等の推移 (出典:宮城労働局資料) 達成企業数 平成30年度 750社 令和元年度 788社 令和2年度 786社 令和3年度 808社 令和4年度 810社 令和5年度 830社 達成企業の割合 平成30年度 49.2% 令和元年度 50.4% 令和2年度 51.4% 令和3年度 50.7% 令和4年度 50.2% 令和5年度 51.1% (2) 福祉的就労からの一般就労 ◆ 福祉施設を利用していた障害のある人の一般就労への移行は、就労支援施設等(就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援)の利用人数の増加とともに、堅調に推移しており、平成30年度から令和4年度までの5年間で延べ2,180人となっています。 ◆ 雇用障害者数と比して、福祉的就労者数の増加率が高い状況です。一般就労への移行者数は、障害福祉計画の目標に沿って順調に推移しているものの、適切なアセスメントにより、能力に見合った就労先を選択することで、一般就労をより一層増加させることが必要です。 ◆ 新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、特に民間企業による実習受け入れの機会が不足しています。定着率向上と人材活用の視点でも、より一層の企業側の理解と連携・協力が必要とされています。 【図23】 就労支援施設等(利用人数)と一般就労への移行者数の推移 就労移行支援 平成30年度 816人 令和元年度 758人 令和2年度 745人 令和3年度 747人 令和4年度 729人 就労継続支援A型 平成30年度 774人 令和元年度 836人 令和2年度 990人 令和3年度 1114人 令和4年度 1267人 就労継続支援B型 平成30年度 4767人 令和元年度 5135人 令和2年度 5499人 令和3年度 5853人 令和4年度 6337人 就労定着支援 平成30年度 162人 令和元年度 232人 令和2年度 298人 令和3年度 331人 令和4年度 387人 一般就労移行者数 平成30年度 392人 令和元年度 412人 令和2年度 442人 令和3年度 452人 令和4年度 482人 ◆ 福祉的就労からの一般就労支援の中核をなす就労移行支援サービス事業所が廃止・休止するケースがあり、その数は減少傾向です。 【図24】 就労支援施設等(事業所数)の推移 就労移行支援 平成30年度 87事業所 令和元年度 78事業所 令和2年度 71事業所 令和3年度 73事業所 令和4年度 65事業所 就労継続支援A型 平成30年度 54事業所 令和元年度 53事業所 令和2年度 58事業所 令和3年度 59事業所 令和4年度 66事業所 就労継続支援B型 平成30年度 219事業所 令和元年度 234事業所 令和2年度 256事業所 令和3年度 290事業所 令和4年度 304事業所 就労定着支援 平成30年度 19事業所 令和元年度 21事業所 令和2年度 24事業所 令和3年度 31事業所 令和4年度 34事業所 (3) 平均工賃月額等の推移 ◆ 県では、「宮城県工賃向上支援計画(第四期:令和3年度から5年度まで)」を策定し、就労継続支援B型事業所等で働く障害のある人の工賃向上に向けた取組を進めてきました。 ◆ 本県の就労継続支援B型事業所で働く障害のある人に支払われた工賃は、令和4年度総額で約12.6億円と平成30年度と比べて約3.4億円増加しており、平均工賃月額についても18,169円と全国でも比較的高い水準を維持していますが、第四期計画に掲げる目標額23,000円には達していない現状にあります。 ◆ 利用者数及び事業所数の増加幅が大きく、また、事業所別の平均工賃月額の中央値が約13,100円となっており、平均工賃月額が10,000円以下の事業所が全体の約3割あります。 【図25】 平均工賃月額と工賃総額の推移 平均工賃月額 平成30年度 17490円 令和元年度 17477円 令和2年度 17247円 令和3年度 18240円 令和4年度 18169円 工賃総額 平成30年度 9.2億円 令和元年度 9.7億円 令和2年度 10.5億円 令和3年度 11.8億円 令和4年度 12.6億円 <施策の方向> 障害のある人の雇用・就労の機会の拡充に向け、企業の実習受け入れ等の協力・連携を強化するほか、適切なアセスメントと適切な支援により、福祉的就労からの一般就労移行の更なる促進を図るとともに、障害特性から就労困難となっている方々も含め、中間的就労の場など様々な就労機会を創出する取組への支援を行います。 併せて、職業能力の開発を図るとともに、就労支援施設等の企業的経営スキルの向上や商品開発・販路開拓に向けた支援、請負業務(BPO)の共同受注等を通じた工賃向上を促進します。 また、就労支援施設等の商品・役務等に係る行政機関等の優先調達とともに、民間企業・団体との連携による調達を推進します。 <主な推進施策> (1) 安定した雇用の確保 ◆ 「障害者雇用促進法」の改正による、令和6年4月からの法定雇用率の引き上げ等を踏まえ、地方公共団体等における障害者雇用率の向上に努めるとともに、民間企業における法定雇用率の達成に向け、宮城労働局をはじめとする関係機関と連携し、差別解消や合理的配慮を含む障害等に対する理解の促進や普及啓発活動、障害のある人の雇用を検討している中小企業者に対する助言等を行い、障害のある人の雇用の場の拡大を図ります。 ◆ 企業等に就職した障害のある人の離職防止への取組が重要であることから、「ハローワーク」や「障害者就業・生活支援センター」、「宮城障害者職業センター」等との関係機関と連携し、一般企業における障害のある人の受入体制の整備に関する支援等を行うほか、就労定着支援事業所と民間企業等とが連携し、一般就労へ移行した障害のある人が企業等で長く働き続けられるよう、就労に伴い生じる生活面の課題に対し、相談による課題把握や助言等の支援を行い、雇用の安定化を図ります。 ◆ 障害特性から就労困難となっている方々を含め、一定の支援や配慮により就労を可能にする中間的就労など、障害のある方々等の雇用機会の創出に向けた横断的取組を進めます。 (2) 就労支援施設等の経営力向上等を通じた工賃向上 ◆ 「宮城県第四期工賃向上支援計画(令和3年度から5年度まで)」の実績等を踏まえ、「第五期工賃向上支援計画(令和6年度から8年度まで)」を策定し、就労支援事業所の一層の工賃向上に向けた取組を推進します。 ◆ 就労継続支援事業所等による「工賃向上計画」策定や、策定した計画等を実践するための専門家派遣を行います。 ◆ 共同受注窓口を通じ、民間企業等からの請負業務(BPO)を受注し、安定的かつ継続的な生産活動機会を確保します。 ◆ 就労支援施設等の職場環境の改善や生産性の向上等に向けた活動を支援します。 ◆ 地元企業等と連携し、就労支援施設等による製品等の展示販売会の開催等を通じて、販路の開拓・拡大を図ります。 (3) 職業訓練・職業能力の開発 ◆ 「宮城障害者職業能力開発校」において、就業に必要な職業能力の開発・向上を図るため、雇用のニーズに即した職業訓練を実施するとともに、就業を促進するため、「ハローワーク」等の関係機関との連携を強化し、実習協力企業の開拓、当該企業における訓練生の実習等を通じて企業との信頼関係の構築を図ります。 ◆ 「障害者就業・生活支援センター」を中心に、一般就労の場を確保するため、企業等の開拓に取り組みます。また、センターの相談能力等の向上のため、セミナーや研修会を開催するとともに、各センター間の連携を深め、全てのセンターの支援機能の向上を図ります。 ◆ 就労移行支援事業所、企業及び支援機関の連携構築を支援し、障害のある人と企業の間で生じる課題の解消や企業の実習受入れ機会を確保・拡大すること等を通じて、福祉的就労からの一般就労移行を更に促すとともに、就労先での定着のための継続的な支援体制の充実を図ります。 ◆ 情報通信技術(ICT)の発達に伴い、障害のある人の就業機会の拡大が期待されることから、障害のある人に対するICTスキルの習得支援に取り組みます。 ◆ 特別支援学校と企業間の連携を強化し、生徒の職場及び実習受入先の開拓を行う機能の充実を図ります。このことによって、職場や実習内容に関する情報と実習体験の場を提供し、生徒一人一人のニーズに応じた就労に向けた支援を行います。 (4) 多様な就業機会の創出 ◆ 知的障害や精神障害のある人を、県の職場に短期間、実習生として受け入れ、職場体験の機会の提供と就労意欲の向上を図ります。 ◆ 障害のある人等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく、いわゆる「農福連携」推進のため、県内の農福連携に取り組む事業者や各種支援団体、自治体等で構成する「みやぎ農福連携推進ネットワーク」を活用し、相互の情報収集や課題解決を図るとともに、セミナーの開催、就労マッチング支援、障害のある人が働きやすい環境整備の補助事業等を行います。 ◆ 在宅での就業希望者を含め、パソコンを活用したICT・デジタル関連業務に従事する機会を創出し、生産活動を通じた一般就労のための訓練機会としても活用します。 (5) 行政機関等からの受注促進 ◆ 障害者優先調達推進法に基づき、県の優先調達方針を策定し、就労支援施設等が提供する物品・サービスの優先調達を推進していくとともに、宮城県障害者施策推進協議会等の場を通じて、関係団体等での優先調達を働きかけていきます。 ◆ 民間企業・団体の協力を得て結成した「みやぎの福祉的就労施設で働く障害者官民応援団」組織を活用して、継続的かつ安定的な受注機会の確保を図るととともに、協力先や活動内容の拡充を図ります。 (ここまで)