(35ページから40ページまで) 重点施策 3 自らが望む地域・場所で暮らせるための環境整備・人材育成 <背景> 障害のある人が、安心して生活するためには、住まいの確保や日中活動の場の充実とともに、保健・医療・福祉・保育・教育等の連携の下、その人の心身の状況に応じた、適切なサービス等を身近な地域で受けることのできる環境の整備が必要です。 特に、成長とともに支援のあり方に変化が生じる障害児に対する切れ目のない支援体制の構築や、発達障害の早期発見・早期療育、「医療的ケア」を要する人への支援の拡充等が求められています。また、地域での生活が困難な障害のある人の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据えた、障害のある人に対するセーフティネット機能等を充実させていく必要があります。 <現状等> (1) グループホームの利用状況等 ◆ 障害のある人の地域における住まいの場であるグループホームの整備状況は、令和4年度末において利用人数3,177人、住居数637戸と平成30年度に比べて、それぞれ828人、145戸増加しています。 【図26】 グループホームの利用人数・住居数の推移 利用人数 平成30年度 2349人 令和元年度 2497人 令和2年度 2751人 令和3年度 2963人 令和4年度 3177人 住居数 平成30年度 492戸 令和元年度 526戸 令和2年度 643戸 令和3年度 611戸 令和4年度 637戸 (2) 日中活動系サービスの利用状況 ◆ 障害のある人の日中活動の場等を提供する障害福祉サービス(生活介護・自立訓練・就労移行支援、就労継続支援A型・B型)の利用状況は、令和4年度における利用人数は13,479人と平成30年度と比べて、2,017人増加しています。 【図27】 日中活動系サービス利用人数の推移 生活介護 平成30年度 4711人 令和元年度 4791人 令和2年度 4758人 令和3年度 4800人 令和4年度 4881人 自立訓練 平成30年度 394人 令和元年度 372人 令和2年度 344人 令和3年度 290人 令和4年度 265人 就労移行支援 平成30年度 816人 令和元年度 758人 令和2年度 745人 令和3年度 747人 令和4年度 729人 就労継続支援A型 平成30年度 774人 令和元年度 836人 令和2年度 990人 令和3年度 1114人 令和4年度 1267人 就労継続支援B型 平成30年度 4767人 令和元年度 5135人 令和2年度 5499人 令和3年度 5855人 令和4年度 6337人 合計 平成30年度 11462人 令和元年度 11892人 令和2年度 12336人 令和3年度 12806人 令和4年度 13479人 (3) 障害のある人の地域生活移行状況 ◆ 「第5期宮城県障害福祉計画」では、平成29年度から令和2年度までの地域生活移行者数の目標値を、平成28年度末時点の施設入所者数(1,842人)の約6%に当たる113人としていましたが、実績は72人(目標値の約64%)にとどまりました。また、「第6期宮城県障害福祉計画」では、令和2年度から5年度までの地域生活移行者数の目標値を113人としていますが、令和2年度から4年度までの実績は52人(目標値の約46%)となっており、達成は大変厳しい状況にあります。 【図28】 地域生活移行の状況 各年度における地域移行者数 平成30年度 25人 令和元年度 16人 令和2年度 16人 令和3年度 19人 令和4年度 17人 地域移行者数の累計 平成30年度 528人 令和元年度 544人 令和2年度 560人 令和3年度 579人 令和4年度 596人 ◆ 「第6期宮城県障害福祉計画」では、入院中の精神障害のある人の地域生活移行目標として、入院期間1年以上の長期在院者数を2,506人以下としていますが、令和4年度末時点では、目標に届いていない状況にあります。また、新規目標として、精神障害者の精神病床から退院後1年以内の地域における平均生活日数の目標を、国の基本指針を踏まえ、316日以上としています。 【図29】 精神障害者の入院期間1年以上の長期在院状況 入院期間1年以上の長期在院者数 平成30年度 3092人 令和元年度 2735人 令和2年度 2913人 令和3年度 2767人 令和4年度 2627人 ◆ 「第6期宮城県障害福祉計画」では、本県の社会資源を勘案し、施設入所者の削減について目標を設定しませんでしたが、依然、多くの入所待機者が存在しています。 【図30】 障害者支援施設における利用定員・入所待機者の推移 利用定員 平成31年4月 1943人 令和2年4月 1943人 令和3年4月 1963人 令和4年4月 1963人 令和5年4月 1957人 待機者数 平成31年4月 553人 令和2年4月 544人 令和3年4月 626人 令和4年4月 581人 令和5年4月 561人 (4) 発達障害のある人に対する支援等の状況 ◆ 発達障害のある人の正確な人数の把握は困難ですが、県直営の「発達障害者支援センター」や「えくぼ」には、毎年多くの相談が寄せられており、発達障害のある人への支援の必要性は、依然として高いことがうかがえます。 【図表3-6】 発達障害に関する相談件数の推移 平成30年度 1216件 令和元年度 780件 令和2年度 861件 令和3年度 805件 令和4年度 821件 (5) 医療的ケアを要する人の状況等 ◆ 令和5年3月に県が実施した医療的ケア児等実数調査によると、県内の医療的ケアを要する人の数は、令和5年1月1日現在で634人であり、全圏域で生活しています。 【表3】 県内医療的ケア児者数(令和5年1月1日現在) 医療的ケア児(20歳未満) 仙南 18人 仙台(仙台市除く) 85人 大崎 29人 栗原 3人 登米 12人 石巻 17人 気仙沼 12人 仙台市 157人 合計 333人 医療的ケア者(20歳以上) 仙南 6人 仙台(仙台市除く) 52人 大崎 25人 栗原 5人 登米 9人 石巻 6人 気仙沼 6人 仙台市 192人 合計 301人 合計 仙南 24人 仙台(仙台市除く) 137人 大崎 54人 栗原 8人 登米 21人 石巻 23人 気仙沼 18人 仙台市 349人 合計 634人 <施策の方向> 障害のある人の地域生活への移行を進めるため、障害当事者の意見などを踏まえながら、グループホームや地域生活支援拠点等の整備を進めるとともに、利用者本位のサービス提供を可能にするための相談支援体制の充実や、介護人材の確保・育成、サービスの質の確保等に取り組みます。 特に、障害のある子どもに対する切れ目のない支援体制の構築を図るほか、発達障害に関する支援体制の充実を図るとともに、医療的ケア実施体制や医療的ケア児者及びその家族への相談支援体制の充実に向けた取組を進めます。 また、地域での生活が困難な障害のある人の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、建替整備が完了した県立障害者支援施設「宮城県船形の郷」は、県全域のセーフティネット、民間施設のバックアップ、地域の社会資源のコーディネートを担うセンター機能を備えた拠点施設としての役割を果たしていきます。 <主な推進施策> (1) 介護人材の確保・育成 ◆ 障害福祉分野における介護人材の確保・育成のため、職種や従事年数等に即した各種研修事業の充実を図るとともに、多様なケアに対応できる人材の育成を通じた介護人材の流動化、研修受講の促進に向けた支援を行います。 ◆ 国の制度等を活用しながら、事業所の処遇改善加算の取得支援などの介護従事者の処遇改善に取り組むほか、ICTを活用した業務改善等を図る事業者への取組支援など、働きやすい介護現場の環境整備を支援し、介護人材の職場定着を図ります。 (2) 住まい・支援拠点の整備等 ① 地域生活への移行の推進 ◆ 「宮城県障害福祉計画」に基づき、障害のある人の地域生活の場であるグループホームや、地域生活支援拠点等の整備を進めるとともに、施設入所者や精神科病院の入院患者等の退所・退院に向けた個別支援、地域の受入体制の調整等を行う相談支援体制の充実を図り、地域生活への移行を推進します。 ◆ 特に、精神障害のある人の地域生活への移行を進めるため、精神障害に関する正しい知識の普及啓発を図るほか、民間精神科病院や関係機関の協力を得ながら、24時間、365日の精神科救急患者の受入が可能な精神科救急医療システムの充実を図ります。 ② 医療的ケア提供体制の整備 ◆ 人工呼吸器の管理や経管栄養などの「医療的ケア」が必要な人が安心して在宅で生活できるための支援として、介護職員等の特定行為の研修受講、医療的ケアに対応した訪問系・日中活動系サービス事業所や医療型短期入所事業所の拡充など、医療的ケアの提供体制の整備を推進します。 ◆ 医療的ケア児支援法に基づき設置した、「宮城県医療的ケア児等相談支援センター(愛称:ちるふぁ)」において、医療的ケア児及びその家族がその居住する地域にかかわらず等しく適切な支援を受けられる体制の充実を図ります。 ③ セーフティネット機能の確保・充実 ◆ 地域での生活が困難な障害のある人を受け入れている障害者支援施設及び療養介護事業所について、施設間の連携を強化し、緊急時の対応も含めた柔軟な受入体制の整備や支援スキルの底上げを図ります。 ◆ 建て替えにより再整備した県立障害者支援施設「宮城県船形の郷」については、センター機能(県全域のセーフティネット、民間施設のバックアップ、地域の社会資源のコーディネート)を備えた拠点施設として、施設機能の拡充や支援内容の充実に取り組みます。 ◆ 地域で生活する障害のある人の重度化・高齢化、親亡き後を見据え、高齢者福祉施策と連携し、介護保険サービスへの円滑な移行が図られるよう、地域生活支援拠点の整備や機能の充実に当たり、地域包括支援センターと緊密に連携を行うことで、地域包括ケアシステムの中での移行支援の強化を図ります。 ◆ 県や市町村等による障害福祉サービス事業所等への実地指導等を通じて、各事業所の非常災害に関する具体的な避難確保計画の作成や、防災訓練の実施を指導します。 (3) サービスの質の確保・向上等 ① 相談支援体制の充実 ◆ 障害のある人やその家族の意向を尊重した適切なサービス提供を推進するため、サービス等利用計画・障害児支援利用計画の策定等を担う相談支援事業所への研修及び指導や、相談支援専門員の確保・育成に係る取組を推進し、地域における相談支援体制の充実を図ります。また、市町村による基幹相談支援センターの運営を支援し、障害のある人の相談や権利擁護、地域移行等のニーズに対して総合的に対応します。 ② 障害児支援の充実 ◆ 障害のある子ども(児童福祉法における「障害児」をいいます。)とその御家族に対して、子どもの成長過程に合わせた効果的、かつ、一貫した支援を可能にするため、「宮城県特別支援教育将来構想」等に基づく特別支援教育の充実に向けた取組を推進するほか、保健・医療・福祉・保育・教育等の一層の連携を進め、発達障害などの早期の発見・療育が有効とされる障害のある子どもが、身近な地域で必要な支援を受けられる体制の充実を図ります。 ③ 発達障害のある人の支援の充実 ◆ 「宮城県発達障害者支援センター」において、市町村や障害福祉サービス事業所、各圏域の発達障害者地域支援マネジャー等と相互に連携しながら支援を行う体制の強化を図り、発達障害のある人やその家族、支援者に対して、乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応した相談支援・発達支援・就労支援等を行います。 ◆ ペアレント・プログラムやペアレント・トレーニングの普及や啓発、ペアレント・メンター育成研修等の実施により、発達障害のある子どもを育てる家族への支援を推進します。 ④ サービス提供に係る指導等 ◆ 在宅及び施設等での障害福祉サービスが適切に提供されるよう、サービス事業者等や市町村に対して、実地による指導等を行うほか、サービス事業者に対する第三者評価やサービス情報の公表等を行います。 (ここまで)