障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称) 協議関連意見 2019年9月5日 及川智 1.第1回検討会に関する補足意見 8月7日検討会において協議された条例の事項に関して、以下の通り意見を表明する。 ?障害者差別解消法をはじめ、各地条例にも見直しが明記されているが、常にその時事に即応した条例として活かすことができるよう、検討下の条例についても同様の規定を設けるべきである。 ?条例には前文を設け、下記の内容を盛り込むべき。 @制定の趣旨、制定が必要な現状認識を示す。 A宮城県において障害者がおかれている状況を概観する。すなわち障害者が真に地域社会 に参加するための取り組みがなされてきたが、未だ不十分であることを示す。 B東日本大震災において障害者がより困難な状況におかれたことを示す。 C差別をなくすことを通して、すべての県民が共に安心して自由に暮らせる環境をつくっていく決意を表明する。   ?前回提起した検討会における傍聴者の意見表明について、構成員の皆さまのご意見をお聞かせ願いたい。 2.条例に定めるべき定義について ?本県条例において定めるべき定義と望ましい規定例 @障害者(児) ・概ね障害者差別解消法の定義に準じることで問題ないと考える     A障害者差別     ・客観的に正当かつやむを得ないと認められる特別な事情なしに、不均等待遇を行うこと又は合理的配慮を怠ることをいう(長崎条例) ・障害を理由として障害のない人と不当な差別的取扱いをすることにより,障害のある人の権利利益を侵害すること又は社会的障壁の除去の実施について合理的配慮をしないことをいう(茨城条例)     B社会的障壁 ・概ね障害者差別解消法の定義に準じることで問題ないと考える     C不利益取扱い(不当な差別的取扱い) ・障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付すこと(参照:解消法及び文科省ガイドライン)     D合理的配慮 ・障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの(権利条約) E虐待 ア 障害者の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。 イ 障害者にわいせつな行為をすること、障害者をしてわいせつな行為をさせること又は障害者であることを理由に、本人の意思にかかわらず、交際若しくは性的な行為を不当に制限し、若しくは生殖を不能にすること。 ウ 障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。 エ 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放置をすること。 オ 障害者の財産を不当に処分することその他当該障害者から不当に財産上の利益を得ること。 カ 保護者、養護者又は障害者の福祉サービスに従事する者が、アからオまでの事実を知りながら、又は障害者が自らの利益や健康を明らかに損なう行為を継続的に行っていることを知りながら放置をすること。 (さいたま市条例)   ※障害者虐待防止法は、病院・学校・保育所等に行政への通報義務を課していない。 さいたま市条例は、「市民、並びに事業者及び関係機関(これらの従業員を含む)」に行政への通報義務を課した。     F障害に関するハラスメント ・障害に関連して、相手の意思に反する言葉や行為によって相手に不快感や不利益を与えたり、相手の生活や就労等の環境を害することにより、障害のある人の人としての尊厳を傷つけたり、障害のある人が地域で分け隔てられることなく生活し、社会参加する権利を否定する目的又は効果をもたらすことをいう。 (障害者権利条約の批准と完全実施をめざす京都実行委員会 仮案) G障害の社会モデル ・障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会的 障壁と相対することによって生ずるものとする考え方をいう。(東京都条例) ※「障害の社会モデル」に関連して 社会モデルの定義としてユニバーサルデザイン2020行動計画にある「社会的障壁を取り除くのは社会(全体)の責務」に準じることに反対する。言葉の趣旨はまちがってはいないが、社会モデルは責務を示したものではないので、定義としては不適当だからだ。 単に本人の機能障害に焦点を当てる、従来の“障害の医学モデル“に代わって示されたもので、「障害とは、個人の機能障害などと、周囲の態度や環境による社会的障壁との間で生じる相対的なものであり、機能障害などに対応していない(しない)環境、物理的・社会的障壁こそが障害である」と捉えるモデルである。 障害の社会モデルとは、何を障害と捉え、何を改善すべきかを示しており、とても重要なものである。 社会モデルの定義では、障害の考え方を示し、社会的障壁の除去は、県・県民の責務に区別して書かれるべきである。 ?障害者差別 定義についての整理 @差    別:不利益取扱い(不均等待遇)をすること、合理的配慮をしないこと。 A正当化事由:T過重な負担がある場合  U事物の本質的な変更が必要となる場合 ?ガイドラインに定めるべき事項 @条例に定める定義 A生活場面における不当な差別差別的取扱い(不利益取扱い)と典型的(代表的)事例 B典型的(代表的)事例の望ましい対応例 現在の骨子においては、ガイドライン等による啓発に力点がおかれている。県民への正しい理解・啓発のためにも定義をしっかり定めた方がいいのではないか。 3.関係者の責務・役割について ?県の役割・責務 @県は、条例の目的・基本理念に則って、障害や障害をもつ人への理解を深め、障害をもつ 人への差別をなくすための施策を策定し、実施する。 A県は、条例施行に必要な予算措置を行う。 B県は条例の目的・基本理念に基づいて、あらゆる社会的障壁を除去するための施策を策定し実施する。 ?県民の役割 @県民は、条例の目的・基本理念に則って、障害や障害をもつ人への理解を深め、差別をなくすよう努める。 A県民は、県が策定する施策に協力し、社会的障壁を除去に努める。