障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会報告書(案) 令和2年1月 (参考) 1 報告書(案)は,次のように取りまとめを行っております。   【条例の構成や規定する内容についての発言】   ◆ 〜意見する。    ○ 〜規定すること。    ○ 〜設けること。 など   【両論(又は複数)の意見があった場合】   ◆ 〜について両論(又は複数の意見)があったので,慎重に検討されたい。    ○ 〜ではないか。    ○ 〜が必要である。 など 【条文の文言についての発言】   ◆ 〜意見を述べる。    ○ 〜としてはどうか。    ○ 〜いただきたい。 など 【施策などについての発言】   ◆ 〜要望する。    ○ 〜とすべきである。    ○ 〜が望ましい。 など 2 皆様から御指摘を頂いて修正した箇所には,下線を付しています。 目  次 一 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会の概要  1 目的 1ページ  2 役割 1ページ  3 構成員 2ページ  4 開催状況及び検討事項 3ページ 二 検討会における意見の概要 ◇ 目的や理念等 1 条例の構成について 4ページ   2 条例の目的・基本理念について 5ページ   3 条例に規定する定義について 8ページ   4 関係者の役割・責務について 9ページ ◇ 障害を理由とする差別の解消に関すること   5 障害を理由とする差別の禁止について 12ページ   6 合理的配慮の提供義務について 15ページ   7 相談体制について 18ページ   8 助言・あっせんについて 20ページ ◇ 情報保障に関すること  9 情報保障について 22ページ   10 意思疎通支援について 25ページ 附属資料 29ページ 一 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会の概要 1 目的 障害の有無によって分け隔てられることなく,人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のため,その基本理念や実現に向けた方策等を掲げた条例(障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称))の制定に向けて,広く障害当事者や学識経験者等からの意見聴取及び意見交換を行うことを目的に,知事の諮問機関として設置。 2 役割 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)の構成や規定する内容について,条例の骨子(案)に基づく議題に沿って検討を行い,その内容をもとに,知事に「望ましい条例(案)」の報告書を提出する。 なお,報告書には,多様な意見を反映させるため,内容によっては検討会としての意見集約を行わない場合もある。 ※ 条例の骨子(案)のうち,「手話の公的認知」については,別に条例を制定することとされたことから,本検討会での議題の対象外。 【参考】 条例制定過程イメージ 知事及び事務局(障害福祉課)は,条例検討会(要綱設置)に条例の構成や規定する内容について,検討を依頼し,報告書を受け取ります。 知事及び事務局(障害福祉課)は,障害者施策推進協議会(条例設置)に条例案について説明し,障害者施策推進協議会では審議を行います。 知事及び事務局(障害福祉課)は,県民に対して,「団体ヒアリング」,「パブリックコメント」や「タウンミーティング」などで,条例についての意見聴取を行います。 知事及び事務局(障害福祉課)は,県議会(議決機関)に条例案を提案し,県議会では議決を行います。 3 構成員 検討会は,学識経験者,弁護士,障害当事者,事業者,福祉,行政の代表からなる計17名により構成。なお,構成員のうち,障害当事者は9名である。 構成員は次のとおり。 1 氏名 阿部 裕二 所属等 東北福祉大学 総合福祉学部 備考 座長 2 氏名 及川 篤生 所属等 公益財団法人宮城県視覚障害者福祉協会 3 氏名 及川 智 所属等 みやぎアピール大行動実行委員会 4 氏名 小山 賢一 所属等 みやぎ盲ろう児・者友の会 5 氏名 笠原 太良 所属等 仙台弁護士会 備考 副座長 6 氏名 加藤 孝吉 所属等 公益社団法人日本てんかん協会 宮城県支部 7 氏名 神田 拓 所属等 特定非営利活動法人 自閉症ピアリンクセンターここねっと 8 氏名 木村 香奈 所属等 一般社団法人宮城県社会福祉士会 9 氏名 木村 綾子 所属等 仙台スピーカーズビューロー 10 氏名 熊沢 治夫 所属等 公益社団法人宮城県バス協会 11 氏名 今野 恵理子 所属等 宮城県商工会連合会 12 氏名 佐藤 久美子 所属等 名取市役所 13 氏名 高橋 久 所属等 障害者共同生活援助 萩 14 氏名 細川 かおる 所属等 一般社団法人宮城県聴覚障害者福祉会 15 氏名 最上 陽子 所属等 宮城労働局 16 氏名 谷津 聡 所属等 公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会 17 氏名 和田 邦子 所属等 宮城県サルコイドーシス友の会 (五十音順,敬称略) 4 開催状況及び検討事項 令和元年8月から令和2年1月までの間,全6回の会議を開催し,条例の構成や規定する内容について,各回,条例の骨子(案)の項目に沿って検討を行った。 第1回 開催日 令和元年8月7日(水) 検討事項 ○ 条例の構成について ○ 条例の目的・基本理念について 第2回 開催日 令和元年9月5日(木) 検討事項 ○ 条例に規定する定義について ○ 関係者の責務・役割について 第3回 開催日 令和元年10月18日(金) 検討事項 ○ 障害を理由とする差別の禁止について ○ 合理的配慮の提供義務について 第4回 開催日 令和元年11月14日(木) 検討事項 ○ 相談体制について ○ 助言・あっせんについて 第5回 開催日 令和元年12月23日(月) 検討事項 ○ 情報保障について ○ 意思疎通支援について 第6回 開催日 令和2年1月23日(木) 検討事項 ○ 報告書(案)について 【参考】 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)の骨子(案) 1 目的や理念等 (1)目的 障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現 (2)定義 障害のある人,事業者,社会的障壁,障害の社会モデル (3)基本理念 五つの理念 @個人の尊重,A活動機会確保,B意思疎通や情報取得手段の確保,C性別や年齢の複合的困難に応じた適切な配慮,D障害の社会モデルの理解 (4)県の責務 基本理念にのっとった施策展開 (5)市町村等との連携 市町村,県民,事業者と連携 (6)県民の役割 理解促進,施策協力 (7)財政上の措置 財政措置の努力義務 2 障害を理由とする差別の解消に関すること (1)障害を理由とする差別の禁止 県民は,障害を理由とする不当な差別的取扱いを禁止 ※ 差別の定義は規定せず,ガイドライン等の策定を検討 ポイント 障害者差別解消法では行政は義務,事業者は義務,県民は規定なしだが,県民も義務に拡大する(障害者基本法では「何人も」禁止)。 (2)合理的配慮の提供義務 事業者は,合理的配慮に努める ポイント 障害者差別解消法では行政は義務,事業者は努力義務,県民は規定なしで,障害のある人とない人の相互交流を考慮し同様とする。 (3)相談体制 県は,障害者権利擁護センターに相談業務を委託可能 センター職員等に守秘義務 (4)助言あっせん 県に対し助言あっせんの求めが可能 調整委員会が助言あっせん 委員会に説明・資料提出要求権限 (5)勧告・公表 正当な理由がないあっせん案拒否や委員会の要求拒否に勧告 正当な理由がない勧告拒否は意見聴取等を経て公表 (6)調整委員会 調整委員会(委員10人程度)設置 委員に守秘義務 3 手話を言語として認識することを始めとした情報保障に関すること (1)手話の公的認知 手話を言語と認識し必要な施策を実施 (2)情報の取得及び意思疎通における障壁の除去 情報の取得及び意思疎通ができるようにするために必要な支援を実施 支援に当たっては障害の特性に配慮 (3)障害のある人に配慮した情報発信等 障害のある人に配慮した形態,手段及び様式による情報提供 (4)意思疎通等の手段の普及 多様な情報提供方法の普及 生活に必要な訓練の実施 (5)意思疎通支援者の養成等 意思疎通支援者の養成・技術向上 意思疎通支援者の指導者の養成 意思疎通支援者の派遣 参考 キーワード 1 社会的障壁 障害のある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会の事物,制度,慣行,観念その他一切のもの。 2 障害の社会モデル   障害のある人が日常生活又は社会生活において受ける制限は,障害のみに起因するものではなく,社会的障壁と相対することによって生ずるものとする考え方。 3 不当な差別的取扱い 障害のある人に対して,正当な理由なく,障害を理由として差別すること。 4 合理的配慮の提供 障害のある人から,社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに,負担が重すぎない範囲で対応すること。 5 手話を言語として認識 手話を言語として認識する。 手話をはじめとする手段により,情報取得や意思疎通が図られる環境を整備する。 二 検討会における意見の概要 ◇ 目的や理念等 1 条例の構成について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)では,条例の構成としては,条例の目的や理念等を規定する部分,障害を理由とする差別の解消に関する部分,情報保障に関する部分の大まかに3つの部分で構成することとしている。 ■ また,それぞれの構成部分には,以下のような内容を盛り込むこととしている。 @ 条例の目的や理念等を規定する部分には,目的や基本理念のほか,定義規定や県の責務,市町村等との連携及び県民の役割等の内容などを盛り込む。 A 障害を理由とする差別の解消に関する部分には,差別の禁止や合理的配慮の提供義務のほか,差別についての相談体制の整備や個別の事案を解決するための助言・あっせんを行う調整委員会の設置等の内容などを盛り込む。 B 情報保障に関する部分には,障害のある人に配慮した情報発信や多様な意思疎通手段の普及,意思疎通支援者の養成等の内容などを盛り込む。 【意見の概要】 ◆ 条例の構成について,条例の目的や理念等を規定する部分,障害を理由とする差別の解消に関する部分,情報保障に関する部分で構成することについては了承する。 ◆ 条例の骨子(案)の項目にはないが,次の内容を条例に規定するよう意見する。 ○ 条例には,何故この条例を制定したのかを県民により分かりやすく伝えるために,制定の趣旨,条例制定が必要な現状認識,東日本大震災時に障害者が置かれた困難な状況,差別をなくし全ての県民が共に安心して暮らせる環境をつくっていく決意等を述べた前文を設けること。 ○ 障害者が社会参加し,自分自身の行動を決めるに当たって「情報」は不可欠であるので,前文には,それぞれの障害の状況に合わせた「情報」が必要ということを入れること。 ○ 常にその時事に即応した条例として活かすことができるように,見直し規定を設けること。 ◆ 本条例は,「障害を理由とする差別の解消」と「情報保障」の2つを条例に規定することとしているが,次のとおり意見する。 ○ 県の「だれもが住みよい福祉のまちづくり条例」において,「防災上の配慮」がすでに規定されているが,東日本大震災のとき,避難生活や仮設住宅などにおいて,特に障害者は非常に厳しい状況に置かれたことも踏まえ,本条例にも災害時の対応について規定し,基本理念にも明記すること。 ○ 東日本大震災のとき,盲ろう者や視覚障害者は移動に大きな困難を抱え,自力で避難することが難しかったことを踏まえ,災害時や緊急時などの移動支援に関する規定も設けること。 ○ 障害や精神疾患は,誰の身にも起こり得る身近なものであることから,障害者や精神疾患に対する理解の促進や,普及啓発に関する規定を設けること。 ○ 相談・紛争解決のしくみについて,障害者に対する不快な対応や嫌がらせの事例も多いことから,障害者に対するハラスメントについて規定すること。 ○ 合理的配慮に関する部分に,合理的配慮を提供する事業者が必要な物品の購入に対して助成金を出す規定を設けること。 ○ 障害者虐待防止法では,学校,病院,保育所などが通報義務から除外されているので,障害者への虐待防止,特に通報義務について規定すること。 ○ 差別を未然に防ぐために,県・県民がどのような実践を行うのかを明確に示すため,「基本的な施策」として,差別を未然に防ぐための方針等(啓発・交流促進事業,関係機関との連携強化,障害者の政策形成過程への参画推進,好例等に対する顕彰,施策・事業の計画的な実施)を明記すること。 2 条例の目的・基本理念について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)では,条例の目的として,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指すこととしている。 ■ また,共生社会の実現のための基本理念として,以下の内容を規定することとしている。 @ 県民は,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること。 A 障害のある人は,社会を構成する一員として社会,経済,文化などのあらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 B 障害のある人は,可能な限り,意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されること。また,情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 C 障害のある人は,その性別,年齢等による複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合においては,その状況に応じた適切な配慮がなされること。 D 障害を理由とする差別の解消は,多様な人々により地域社会が構成されているという基本認識の下に,障害,障害のある人及び障害の社会モデルに関する理解を深めることを基本として推進すること。 【意見の概要】 ◆ 「条例の目的」について,次のとおり意見する。 ○ この条例は,障害を理由とする差別の解消あるいは禁止を目的・基本理念とすることを明確に示すこと。 ○ 条例の名称または略称・通称には「差別禁止」「差別解消」に類する語を用い条例の意図,趣旨を明確にすること。 ○ 障害の有無によらず,参加できる地域社会を県民全体で構築していくことを示すこと。 ○ 差別する側とされる側とに分けて,相手側を一方的に非難し制裁を加えようとするものであってはならないこと。 ◆ 「基本理念」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ @の「個人としての尊重」について,個人として尊重されるほか,権利の行使を保障されることまで含めていただきたい。 ○ Aの「活動機会確保」について,障害のある人も社会の一員として,地域生活を営む権利があることまで含めていただきたい。 ○ Aの「活動機会確保」について,社会の構成員の前に一個人ということもあるので,例えば,「個々人の望む生き方が保障されている中,社会を構成する一員として」といった私生活の尊重を意識した文言を入れてはどうか。 ○ Bの「意思疎通や情報取得手段の確保」について,意思疎通の手段の部分に,具体的に,「言語,手話や点字,音訳,デジタルデータ」といった文言を入れていただきたい。なお,「音訳」は,「音声」を用いたデータやコミュニケーション・情報ツールでもよい。 ○ Bの「意思疎通や情報取得手段の確保」について,社会全体にもう少し強く努力してもらうため,「可能な限り」という文言を,「最大限」あるいは別の表現としてはどうか。 ○ Bの「意思疎通や情報取得手段の確保」と,Cの「性別や年齢の複合的困難に応じた適切な配慮」について,何故こうならなければならないのか,例えば,「障害のある人は,社会的障壁があるという認識のもと」という理由も記載してはどうか。 ○ Cの「性別や年齢の複合的困難に応じた適切な配慮」について,「年齢等」という文言について,児童のみならず,高齢者も含むということが認識できるような表現としていただきたい。 ○ Dの「障害等の理解」について,障害についての無知が,差別や偏見あるいは社会での障壁の原因になっていると考えるので,教育又は啓蒙を意識した文言も入れていただきたい。 ○ Dの「障害の社会モデルの理解」について,障害のある人もない人も生きやすい社会の実現のため,ダイバーシティを意識した規定にしてはどうか。 3 条例に規定する定義について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)では,「障害のある人」,「事業者」,「社会的障壁」,「障害の社会モデル」の4つの用語について定義規定を置くこととしている。 ■ 「障害のある人」,「事業者」,「社会的障壁」の定義は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)に準ずることとする。 ■ 「障害の社会モデル」の定義は,政府が平成29年2月20日に発表したユニバーサルデザイン2020行動計画に準ずることとする。 (補足説明) ○ 定義規定とは,用語の意義を明確にし,解釈上の疑義をなくすためのものです。条例の用語の意義は,国語的にあるいは社会通念によりますが,広狭の幅があったり,多義的であったりする場合などに,どのような意味でその用語を用いているのか明らかにするために定義規定を置きます。 【意見の概要】 ◆ 「条例に規定する定義」について,条例の骨子(案)の4つ以外にも,次の用語についても定義するよう意見する。 ○ 「共生社会」,「障害者差別」,「不利益取扱い」,「合理的配慮」,「虐待」,「障害に関するハラスメント」という言葉についても定義すること。 ◆  「条例に規定する定義」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ 現在では,「発達障害=精神障害」という観念は,かなり前のものであるという理解が進んでおり,また,難病がこの条例の範囲に含まれるということを分かりやすくするため「障害のある人」を定義する際には,発達障害と難病を,身体障害,知的障害,精神障害と並列して記載していただきたい。 ○ 差別意識や偏見によるつらい経験をしてきたので,「社会的障壁」を定義する際には,「人々の差別意識や偏見」というものも含めていただきたい。 ○ 「障害の社会モデル」を定義する際には,ユニバーサルデザイン2020行動計画に準じることなく,「障害とは,個人の機能障害などと,周囲の態度や環境による社会的障壁との間で生じる相対的なものと捉えるモデル」であることが分かるように定義していただきたい。 ○ 「障害の社会モデル」を定義する際には,障害は個人の心身機能の障害によるものであるという「医療モデル(個人モデル)」の考え方から,障害は社会(モノ,環境,人的環境等)と心身機能の障害とがあいまって,つくりだされているものであるという「社会モデル」の考え方となった経緯が分かるようにしていただきたい。 4 関係者の役割・責務について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,関係者の責務・役割として,以下の内容を規定することを想定している。 @ 県の責務 県は,基本理念にのっとり,障害を理由とする差別の解消並びに情報の取得及びコミュニケーション支援の促進に関する総合的な施策を策定し,実施する責務を有する。 A 市町村,県民及び事業者との連携 県は,障害を理由とする差別の解消並びに情報の取得及びコミュニケーション支援の促進に関する施策を策定し,実施するに当たっては,市町村,県民又は事業者と協力し,連携して取り組むものとする。 B 県民の役割 県民は,基本理念にのっとり,障害のある人に対する理解を深めるとともに,県が実施する障害を理由とする差別の解消並びに情報の取得及びコミュニケーション支援の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。 C 財政上の措置 県は,障害を理由とする差別の解消及び情報の取得及びコミュニケーション支援の促進に関する施策を推進するため,必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 【意見の概要】 ◆ 条例の骨子(案)の項目にはない「障害者の責務」を規定すべきかについては,次のとおり複数の意見があったので,慎重に検討されたい。 【規定した方がよい】 ○ 障害者が,障害及び社会的障壁の除去について,必要な支援を可能な範囲で伝えることにより,理解を得られるよう努める旨を規定してはどうか。 【規定する必要はない】 ○ 障害者の努力規定は,Bの「県民の役割」で読み込める内容であり,また,障害者には多様性があり,それぞれ障害の種別,個人によって伝える困難さがあるので,あえて規定する必要はないのではないか。 ○ これまでの経緯を考えると,障害者の言葉や思いを受け止めてこなかった結果が差別の原因の一つになっていると思うので,現状で更に障害者の役割として,もっと訴えてほしいというのは,少し捉え方が違うのではないか。 ○ 障害者が,障害と社会にまつわることを発信することの意義や有用性は十二分に承知し,実感しており,更に取組みを活発に行うことが重要と考えているが,それは条例に規定すべき義務や役割ではない。 ○ 障害者の発信を前提にした対応ではなく,「障害者の発信」が当事者にプレッシャーにならないよう配慮や支援など環境づくりが大切である。 ○ 責務として規定するのではなく,障害者は社会的障壁の除去を求める発信をする権利を有し,県民には,その権利を擁護・保障する義務があるとしてはどうか。 【その他】 ○ 障害者の発言は,メッセージ性があり,一般社会にすごく効果があるのではないかと思う。 ○ 障害に関することを伝えるということに関しては,健常者や行政よりも,障害があるからこそできるという部分がすごくあるので,行政や社会のサポートがあれば,もっとより多くのことを伝えることが実現可能になる。 ○ 障害者が障害に関する情報を発する重要性を感じるが,個人の力で情報を発信できる範囲には限界があるので,行政や事業者との連携が必要である。 ◆ 「市町村,県民及び事業者との連携」の中の「県民との連携」について,次のとおり両論あったので,慎重に検討されたい。 ○ 「県民との連携」を規定するのであれば,「県民の役割」で規定すべき内容であり,違和感がある。 ○ みんなが手をつないで繋がるというイメージがあるので,「県民との連携」という言葉は必要である。 ◆ 条例の骨子(案)の項目にはないが,次の者の役割についても条例に規定するよう意見する。 ○ 障害者の社会参加や自立は,それを支援する人によって支えられているので,「介助者」や「意思疎通支援者」等の役割を規定すること。 ◆ 「関係者の役割・責務」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ @の「県の責務」について,「総合的な施策を策定し」という文言は,「総合的かつ具体的な施策を策定し」とし,現場レベルでの具体的な方針を定めることを明記してはどうか。 ○ @の「県の責務」について,相互理解が差別偏見をなくす第一歩であるので,「障害及び障害者への理解の促進を図ること」を入れていただきたい。 ○ @の「県の責務」として,条例の目的・基本理念に基づいて,「あらゆる社会的障壁を除去するための施策を策定し実施すること」を明記していただきたい。 ○ @の「県の責務」について,障害を理由とする差別に関する相談窓口や調停の役割を入れていただきたい。 ○ Bの「県民の役割」について,障害を「社会モデル」として捉え,社会的障壁の除去を県民一人一人の責務として規定すべきである。 ○ Bの「県民の役割」について,県民の意識の醸成につなげるためにも,単に「努める。」と規定するのではなく,「主体的に差別の解消に向けて行動するよう努める。」としてはどうか。 ○ Cの「財政上の措置」について,地方自治法上,予算の議決は議会の議決事項ではあるが,「講ずるよう努めるものとする。」ではなく,「講ずるものとする。」と規定していただきたい。 ○ 「コミュニケーション支援」という文言について,その意味するところが曖昧なので,内容を示すようにしていただきたい。 ◇ 障害を理由とする差別の解消に関すること 5 障害を理由とする差別の禁止について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,次のとおり規定することを想定している。 何人も,障害を理由として,障害のない人と不当な差別的取扱いをすることにより,障害のある人の権利利益を侵害してはならない。 (補足説明) @ 障害を理由とする差別の禁止を義務づける範囲については,「何人も」としたいと考えております。なお,障害者差別解消法では,「行政機関等」と「事業者」については,差別禁止の規定があるものの,「国民」については,規定されていないことから,「拡大」となりますが,障害者基本法では,「何人も」と規定され,差別が禁止されています。 A 障害を理由とする差別の禁止について,「不当な差別的取扱い」の具体例を個々に記載するのではなく,包括的に規定したいと考えております。その上で,何が差別に当たるかについては,ガイドライン等を策定し,「不当な差別的取扱い」の具体的事例を示したいと考えております。 これは,何が差別に当たるかは,様々であり,これらを全て条例上網羅することは困難であるとともに,現在想定されていないような新たな差別が問題となった場合に,柔軟かつ機動的に条例改正を行うことが困難であること,また,何が差別に当たるかについては,ガイドライン等を策定し,それにより差別の具体的事例を広く県民に周知する方が,理解が得られやすいと考えるからです。 意見の概要】 ◆ 「不当な差別的取扱い」の具体例を条例に規定するか,あるいは骨子(案)のとおり,条例では包括的・抽象的に規定し,具体的事例はガイドライン等を策定し,示すこととするかについては,次のとおり両論あったので,慎重に検討されたい。 【条例に具体的に規定した方がよい】 ○ 差別の事例を具体的に規定した方が,義務を課される事業者や県民にとって,何が差別に当たるか分かりやすい。 ○ 条例には,どのようなことが差別に当たるのか,共通の尺度を持つことが必要であり,はっきりと条文で示すことが非常に重要だと考えるので,生活場面ごとに分類した不当な差別的取扱いを具体的に規定した方が良い。 ○ 条例に生活場面ごとに分類した不当な差別的取扱いを規定するとした場合,「福祉サービスの提供」,「医療の提供」,「商品及びサービス(役務)の提供」,「労働及び雇用」,「教育(幼保・学校)」,「建築物・公共交通機関等の利用」,「不動産」,「意思表明の受領」,「情報の提供」,「性別の違い,家族形成」,「不快な対応,ハラスメント」,「災害時対応」について規定する。 ○ ガイドラインにおける生活分野の例示が,何を根拠に選定され書き込まれるのか不透明であり,行政のみで策定されるガイドラインに委任されることに強い懸念がある。 ○ 限定列挙との誤解を避けるため,包括的規定に加えて,具体的規定も設けてはどうか。 【条例では包括的・抽象的に規定し,ガイドライン等を策定した方がよい】 ○ 差別的取扱いの具体例は,ガイドラインに記載し,柔軟に対応する方が良い。 ○ ガイドラインには,より実際的で実用性のあるものとすべく,障害者全般及び障害別の差別事例と,その事例がどのような年齢層や性別などで起きたのかを記載していただきたい。 ○ 差別の事例を条例に具体的に規定した場合,規定されていない行為は差別ではないと誤解を招くおそれがある。 ◆ 「障害を理由とする差別の禁止」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ 「何人も」という表現は,法律に合った文言ではあるが,一般県民に分かりにくいので,「全ての人」としてはどうか。 ○ 「障害を理由として」の前に,「障害者と健常者の人権,権利は平等のものであるにもかかわらず」という文言を入れていただきたい。 ○ 障害のある人を,障害のない人と比べること自体に違和感がある。 ○ 条文の文言としては,「障害のある人に対し,障害を理由として,不当な差別的取扱いをすることにより」とした方が分かりやすいと思う。 ○ 差別の根絶を徹底すべく,人を差別することは,人の命を軽視するものであるという趣旨が読み取れるようにしていただきたい。 ○ 差別的「取扱い」という言葉は,障害者を物のように扱っている印象を受けるので,差別的「行為」としていただきたい。 ○ 作為だけでなく,不作為によっても差別の助長はなされるので,「不当な差別的取扱い」の後に,「これと同等の作為及び不作為」という文言を追加してはどうか。 ○ 例えば,点字ブロックの上に不法駐輪するなど,差別が無意識にされることが多いので,「不当な差別的取扱いを」の後に,「意識的又は無意識に行うこと」という文言を追加してはどうか。 ○ からかい等によって傷ついている障害者もいるので,「権利利益」の侵害だけでなく,「尊厳」の侵害もしてはならないと規定してはどうか。 ◆ 障害を理由とする「不当な差別的取扱い」を県民に周知するに当たって,次のとおり要望する。 ○ 女性障害者特有の複合的差別について,障害があることで被る差別に加えて,女性であることで,差別を被りやすい。例えば,「出産・育児・家事などは女性が担うべきである」という価値観が社会に根強いため、それらができないことで,役割を果たせていないかのような評価をされる。また,トイレや入浴などの異性介助に象徴されるように,性の尊厳が守られない。さらに,動けない・声を上げにくいことで,性被害に遭いやすい。これら複合的な不利益や差別について広く現状を知ってもらい,改善につなげることが重要である。このため,女性障害者特有の複合的差別を条例に規定し,相談対象とする必要がある。 ○ 医療の提供場面における差別の禁止については,例えば,精神障害の場合は本人に自覚がなく,他者への加害に及んでいる場合もあることから,適正な医療とは何かを踏まえて慎重に考える必要がある。 6 合理的配慮の提供義務について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,次のとおり規定することを想定している。 @ 県は,その事務又は事業を行うに当たり,障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害のある人がその意思の表明を行うことが困難である場合には,その家族,介助者等が本人を補佐して行う意思の表明を含む。)があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害のある人の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 A 事業者は,その事業を行うに当たり,障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害のある人がその意思の表明を行うことが困難である場合には,その家族,介助者等が本人を補佐して行う意思の表明を含む。)があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害のある人の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (補足説明) ○ 合理的な配慮の提供を義務づける範囲について,障害のある人と相手方の関係は具体的な場面によって様々であり,それによって求める配慮の内容や程度も多種多様であることから,「事業者」に関しては努力義務とし,「県民」については特に規定しない方向で考えております。 【意見の概要】 ◆ 事業者に対する合理的配慮の提供義務を「法的義務」とするか,あるいは骨子(案)のとおり「努力義務」とするかについては,次のとおり両論あったので,慎重に検討されたい。 【法的義務とすべき】 ○ 障害者の暮らしにとって,日常生活の多くで事業者との関わりが不可欠であり,適切な合理的配慮が提供されることは重要であることから,事業者についても,合理的配慮の提供を義務付けて良いと思う。 ○ 公共性の高い事業において,社会的障壁は放置してはならないことから,過重な負担のない限り,合理的配慮は義務とされるべきではないか。 【努力義務とすべき】 ○ 法的義務とした場合には,障害者からの要望に応じられないと,即違法であり,場合によっては損害賠償請求という話につながりかねない。 ○ 事業者の合理的配慮の提供は,努力義務とした方が事業者も話し合いやすく,相互理解・解決に向けた話し合いが進むのではないか。 ◆ 条例の骨子(案)では,県民に対する合理的配慮の提供義務については規定しないこととされているが,県民にも努力義務を課す方向で検討するよう意見する。 ◆ 「合理的配慮の提供義務」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ パワーハラスメントや虐待によって意思の表明ができない場合や,自らの意思をしっかりと伝えることが困難な方々もいることから,「意思の表明」の後に,「又は意思の表明と同等と認められる発信その他の行為や現象」という文言を追加してはどうか。 ○ 意思の表明が「あった場合」とすると,合理的配慮の開始が遅くなる可能性があるので,「確認された場合」あるいは「あると認められた場合」としてはどうか。 ○ 現在では,LGBTという言葉が普及しており,性別は多様なものだという共通認識があるので,「当該障害のある人の性別」という文言を,「当該障害のある人の自認する性別」としてはどうか。 ○ 「その実施に伴う負担が過重でないとき」という文言を,「その実施に伴う負担が過重である場合を除き」とすることにより,合理的配慮を行うことが原則であるということはっきりさせた方がよい。 ○ 合理的配慮の提供は,障害者と健常者双方がよく話し合い,双方の理解,受諾の上で成り立つものであるから,条文の中に,「お互いに建設的な対話を行い」という文言を入れてはどうか。 ○ 事業者に対して,障害者から配慮の提供を求められた場合に,それに合わせてすぐに対応する,「配慮義務」を求めることとしてはどうか。 ○ 「その家族,介助者等」という文言を,「その家族,支援者等」とした方が,障害者が発信したいとき,必要としたときに,本人以外が発信を支援でき,対応しやすくなるのではないか。 ◆ 「合理的配慮の提供義務」を県民に周知するに当たって,次のとおり要望する。 ○ バリアフリーと合理的配慮の提供義務との違いについて,事業者が学ぶ機会を設けるべきである。 ○ 施設や設備等の新設,改修に当たっては,「ユニバーサルデザイン」ありきではなく,地域の当事者のニーズの把握に努め,ハード面の合理的配慮がなされるように事業者や行政と対話ができる場を設けてほしい。 ○ 障害者・健常者双方に,障害に関する知識や専門用語などについて学べる場があると,よりよい「建設的な対話」ができると思う。 ○ あえて言えば,障害者がやることをやらずに配慮を求めることは「わがまま」であり,配慮する側,される側が組み合わさって初めて共生社会における合理的配慮のあり方になる。 ○ 配慮を提供する側に「過重な負担」であるとみなされた場合は,合理的配慮の提供義務はないが,社会的障壁は依然として存在していることから,状況の変化により障壁の除去ができる段階になれば,速やかに行う必要がある。 ○ 合理的配慮の提供は,平等を担保するために必要な具体的な行動や現実的な工夫であり,気持ちの問題ではない。 7 相談体制について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,次のとおり規定することを想定している。 1 障害のある人及びその家族その他の関係者は,県に対し,障害を理由とする差別等に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。 2 県は,特定相談があったときは,次に掲げる業務を行うものとする。 @ 特定相談に応じ,必要な助言及び情報提供を行うこと。 A 特定相談に係る関係者間の調整を行うこと。 B 関係行政機関への通知その他特定相談の処理のために必要な事務を行うこと。 3 県は,特定相談に関する業務を行わせるため,適当と認める者に,当該業務の全部又は一部を委託することができる。 4 前項の委託を受けた者は,正当な理由なしに,その委託を受けた業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。その業務に従事する者でなくなった後においても同様とする。 (補足説明) ○ 県では,平成28年4月に障害者差別解消法が施行されたことを受け,「宮城県障害者権利擁護センター」を障害者差別に関する県の総合相談窓口としております。 【参考】 相談体制と助言・あっせんの仕組み(案) 相談体制と助言・あっせんの仕組みの図 (以下、作成者が図を文章化) 事案発生 矢印 県への相談等 県から助言・情報提供 矢印1 事案解決 矢印2(相談では解決しない場合)知事に助言・あっせんの求め 県からの助言や相手方への指導 矢印1 事案解決 矢印2(必要に応じて) 公正・中立な第三者機関たる調整委員会による助言・あっせん 調整委員会からの助言・あっせん 矢印1 事案解決 矢印2(助言・あっせんに従わない場合) 知事による勧告 知事の勧告 矢印1 事案解決 矢印2(勧告に従わない場合) 意見聴取を経て公表 【意見の概要】 ◆ 相談業務を委託することについて,次のとおり要望する。 ○ 委託では専門性に不安があるので,相談業務は県で実施していただきたい。 ○ 委託先に全て任せてしまうことに不安があるので,相談業務を委託するのであれば,県として,委託先への助言や指導が必要である。 ○ 委託先は,難病や障害,全てのことに関して専門家である必要がある。 ○ 相談には,県も入って,責任を持って対応するようにしていただきたい。 ◆ 相談を受け付ける窓口について,次のとおり要望する。 ○ 県は範囲が広いので,各地域に窓口が必要なことから,県庁と保健福祉事務所の圏域ごとに,相談員を1〜2人配置すべきである。 ○ 地域相談員として,身体障害者相談員,知的障害者相談員や精神障害に理解がある人にも相談業務を担わせるようにしていただきたい。 ◆ 相談を受け付けた後の対応について,次のとおり要望する。 ○ 相談事案ごとに,解決方法が適切であったかを検証し,フィードバックできる体制づくりに取り組んでいただきたい。 ○ 個人を特定される可能性もあることから,秘密の保持は徹底していただきたい。 ○ 相談したことによって,その後の生活やサービス利用に影響が出ないようにしていただきたい。 8 助言・あっせんについて 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,以下の内容を盛り込むことを想定している。 1 障害を理由とする不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供について,県への相談では解決が見込めないときは,知事に対し,解決のための助言又はあっせんを求めることができる仕組みを規定する。 2 知事は,助言又はあっせんの求めがあった場合には,必要に応じて,公正・中立な第三者機関たる調整委員会に助言又はあっせんを求めることとし,当該調整委員会は関係者に説明又は資料の提出を求めることができることを規定する。 3 調整委員会は,事案を解決するため,助言又はあっせんを行うことを規定する(ただし,事案の性質上助言又はあっせんをすることが適当でないときは除くこととする。)。 4 調整委員会は,事案の解決に必要なあっせん案を作成し,これを当事者に提示することができることを規定する。 5 正当な理由なく,関係者が説明又は資料の提出を拒否した場合や,差別等をしたと認められる者が,調整委員会からのあっせん案を受諾しないときは,知事はその者に対して,必要な措置をとるよう勧告することができることを規定する。 6 知事は,正当な理由がなく勧告に従わない者に対しては,その者への意見聴取等を経て,その旨を公表できることを規定する。 7 調整委員会は,知事が任命する委員10人以内で組織することとし,委員には,守秘義務を課すことを規定する。 【意見の概要】 ◆ 調整委員会の委員について,次のとおり要望する。 ○ 調整委員会の委員は,原則奇数人で構成することとし,公正・公平であることを前提としながらも,ある程度障害者の暮らしに明るい人が入っている方が望ましいことから,その過半数については,障害者とすべきである。 ○ 10人の定員にこだわらず,事案に応じて,障害者や適切な知識,経験を有する人を適宜加えるような体制が望ましい。 ○ 委員の人材養成や育成も県の重要な役割だと考えるので,そのような仕組みが必要ではないか。 ○ 障害者差別事案の解決とその過程の検証などを通して,宮城県内の実態把握や課題を解決するため,障害者差別解消支援地域協議会と,調整委員会との連携も含めてより一層の協議検討が必要である。 ◆ 助言・あっせんを行った後の県民への周知について,次のとおり要望する。 ○ 助言・あっせん事例については,県民に共有されるよう,フィードバックをしっかりと行っていくことが重要である。 ○ どんな相談があって,どのように解決したのかということが公表されることが非常に重要であることから,事例の蓄積とともに,事案の詳細な報告書を作成するようにしていただきたい。 ◇ 情報保障に関すること 9 情報保障について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,次のとおり規定することを想定している。 (障壁の除去) 1 県は,障害のある人が情報の取得及び意思疎通ができるようにするために必要な支援を行うものとする。 2 県は,支援を行う場合は,障害の特性に応じた多様な対応が必要であることを認識し,障害の特性に配慮して行うものとする。 (情報発信等) 3 県は,障害のある人が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう,可能な限り,障害のある人に配慮した形態,手段及び様式によって情報提供を行うものとする。 【意見の概要】 ◆ 条例の骨子(案)の項目にはないが,次の内容も条例に規定するよう意見する。 ○ 障害者の日常生活においては,県民や事業者との関わり合いが圧倒的に多いことから,県による事業者への情報提供,コミュニケーションに関する支援についても規定を設けること。 ◆ 情報発信等の「可能な限り」という文言については,次のとおり複数の意見があったので,慎重に検討されたい。 ○ 「可能な限り」という言葉の判断基準が曖昧であり,障害者が障壁の除去を求めたときに,対話がない状況で断られてしまう一つの理由にもなるので,「可能な限り」という言葉は省いた方がよい。 ○ 県が対応に努力した上で,対応が難しい場合には,障害者に丁寧に説明すれば解決できることであるので,「可能な限り」という文言は特段入れる必要はない。 ○ 「可能な限り」という文言を省いても,県に対して,過大な予算措置を伴うものや,不可能を強いることは難しく,「可能な限り」という文言があったとしても,可能かどうか県と話し合って,もし不可能であれば,県から理由の説明がなされるので,同じになるのではないか。 ○ 「可能な限り」という文言を,「実施が不可能もしくは著しく困難でない限り」とし,配慮を行うことを原則として,どうしてもそれを行えない場合を例外として規定してはどうか。 ◆ 情報保障についての「障壁の除去」及び「情報発信等」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ 情報保障についての規定内容が具体性に欠け,例えば,精神障害者に対してどのような意思疎通支援がなされるのか全く想像できないので,どのような支援がなされるのか分かるように規定していただきたい。 ○ 手話や文字情報,点字や音声通訳,触手話,平易な文字表示など,一定の手段を規定し,意思疎通を可能とするために何をするのか,水準が分かるようにする必要がある。 ○ 「情報発信等」について,県政に関する情報だけでなく,県が作成するそれ以外の情報にも広く対応するような条文とした方がよい。 ○ 「情報発信等」について,何のための情報提供なのかということを明確にするために,「速やかに得ることができるよう」の後に「かつ,得られた情報をもとに県政に関する考えや意見を発信できるよう」という文言を追加してはどうか。 ○ 社会的障壁や障害の社会モデルを意識した,「県は,障害のある人が情報取得に困難を伴う原因がある場合には,個人の障害特性に由来する人的要因のみならず,障害の無理解及び偏見からくる社会的要因があると認識し,障害のある人への支援に加え,可能な限り情報取得を妨げる社会的障壁の除去及び改善に努めるものとする。」という条文を加えてはどうか。 ○ 「障害の特性に配慮して」や「配慮した形態」とあるが,県が行う情報の提供は義務とも言えるもので,配慮ということはそぐわないことから,明確な記述とした方がよい。 ○ 見出しの「障壁の除去」について,この見出しでは,障壁を個人の障害特性からくるバリアと捉えているように読め,誤解と偏見を招いてしまうので,「支援と対応」とした方がよい。 ○ 見出しの「情報発信等」について,障害者の情報発信が保障されているように思えるので,規定内容に合わせて「情報提供等」とした方がよい。 ◆ 県が,情報保障についての「障壁の除去」及び「情報発信等」に関する施策を実施するに当たっては,次のとおり要望する。 ○ 障害者が情報の取得及び意思疎通ができるようにするために必要な支援や,障害者に配慮した情報提供を行うに当たっては,障害の理解が大前提となることから,多様性を含めた障害への理解や合理的配慮の提供等の支援のあり方についての研修を,県職員全員に対して実施していただきたい。 ○ 盲ろう者,視覚障害者,聴覚障害者,精神障害者等,様々な障害者の中には,自ら情報発信できないこともあるので,これらの障害者が,情報発信をするために必要な支援を行っていただきたい。 ○ 盲ろう者は,コミュニケーションや移動,情報取得について困難を抱えており,それらを行政に伝えることにも困難を抱えているので,行政には,個々の障害者に配慮した対応に努めていただき,その事例等をデータベース化するなど,きちんと引継がれる体制整備をしていただきたい。 10 意思疎通支援について 【提示された案】 ■ 条例の骨子(案)に基づき,以下の内容を盛り込むことを想定している。 (手段の普及) 1 県は,障害の特性に応じた多様な情報提供の方法が普及するよう必要な施策を講ずるものとする。 2 県は,障害のある人自らが,情報の取得及び意思疎通を行えるよう,生活に必要な訓練を行うものとする。 (支援者の養成等) 3 県は,手話通訳,点訳その他の方法により障害のある人の情報の取得及び意思疎通を支援する者(以下「意思疎通支援者」という。)の養成及び技術の向上のために必要な施策を講ずるものとする。 4 県は,意思疎通支援者の指導者の養成を行うものとする。 5 県は,意思疎通支援者の円滑な派遣を行うものとする。 6 県は,1から5を実施するに当たっては,必要に応じて,市町村と連携を図るものとする。 【意見の概要】 ◆ 条例の骨子(案)の項目にはないが,次の内容も条例に規定することを意見する。 ○ 多様な情報提供の方法については,物的支援も重要な要素であることから,支援者の養成等と並列する形で支援機器の準備等の項目を設けること。例えば,「県は,障害のある人の情報の取得及び意思疎通を促進するための支援機器の準備及び整備を進めるとともに,その円滑な配布及び貸出を行うものとする。」と規定してはどうか。 ○ 障害者が生活に必要な訓練を受けるに当たり,そのサポートを行う人の養成に関する項目を設けること。例えば,「県は,項目2を実行するため,県独自の機関及び資源の整備を行うとともに,障害のある人の支援を行う者の養成に必要な施策を講ずるものとする。」と規定を設けてはどうか。 ◆ 意思疎通支援について,次のとおり整理することを意見する。 ○ 意思疎通は,適切な方法による障害者への情報提供と受信,及び障害者の意思を正確に伝えることを補助する人の両方がかみ合って初めて成立するものであるので,そのことを踏まえた条例の規定に整理すること。 ◆ 意思疎通支援についての「手段の普及」及び「支援者の養成等」を条文にするに当たっては,次のとおり意見を述べる。 ○ 1について,施策の徹底と支援者の人材確保の観点から,「普及するよう必要な施策を講ずるとともに,その施策の徹底を図り,普及のための啓発活動を行うものとする。」と規定してはどうか。 ○ 3について,要約筆記という文言を入れていただきたい。 ○ 3及び4について,盲ろう者への支援も含まれているということがはっきり分かり,また,社会から理解され,周知されるように,「盲ろう通訳介助員」あるいは「盲ろう者」という言葉を明記していただきたい。 ○ 3から5について,意思疎通支援者という言葉の他にも,情報保障者や情報支援者といった言葉も入れると解釈が広がりよいのではないか。例えば,盲ろう者,聴覚障害者,難聴者,視覚障害者,言語障害者,失語者,難病,精神障害者,自閉症,発達障害等の具体的な障害の種別を書いて,それらの障害のある人が意思疎通をするために必要なツールを書いた詳しい表を作成すると,条例を読んだ人も分かりやすくてよいと思う。 ○ 6について,県と市町村は対等の立場であるが,地方自治法には,県は市町村に対して,助言又は勧告ができるとあるので,市町村との「連携」だけでなく,「指導」もできるように規定していただきたい。 ○ 6について,NPO法人などの関係団体との連携も必要であり,また,様々な課題を踏まえて良質な支援を行う観点から,「市町村及び関係団体と連携を図るとともに,その効果を検証し,それに基づいて施策の改善及び向上を図るものとする。」と規定してはどうか。 ○ 精神障害者,発達障害者,知的障害者,失語者など,自分から情報発信することに困難を抱えている方々にも広く対応できるような条文にしていただきたい。 ◆ 県が,意思疎通支援についての「手段の普及」及び「支援者の養成等」に関する施策を実施するに当たっては,次のとおり要望する。 ○ 盲ろう者は,意思疎通,コミュニケーション,情報取得について非常に困難を抱えているので,情報の取得及び意思疎通を行えるよう,生活に必要な訓練を特に必要としていることを理解していただきたい。 ○ 手段の普及について,精神障害のことが抜けていると感じるので,県として精神障害も含めて様々な障害を正しく理解し,幅広い施策が行われるようにしていただきたい。 ○ 意思疎通支援者の数がまだまだ足りない状況にあるので,条例の制定を機に,もっと積極的に支援者の養成を図るとともに,養成した意思疎通支援者が十分に活動や職務に従事できるよう保障が必要である。 ○ 生活場面では,意思疎通がうまくいかず差別を受ける場合が多々あり,普及啓発事業の役割は大きいので,具体的に実施していただきたい。 ○ 意思疎通支援に関して,テレビ電話等の様々な新しい情報通信技術があるので,公的機関,事業者は,それらを積極的に活用し,普及していくことを事業として実施していただきたい。 ○ 盲ろう者が社会参加を果たすためには,情報保障と意思疎通支援に加え,移動も含めた包括的な支援が必要なことから,視覚障害や車いすの方など移動に困難を抱える方や,精神障害で外出が難しい方も含めた包括的な支援について,社会や県民から理解が得られるよう,また何よりも,県,行政が障害のある方への理解や認識を今以上に深めて取り組んでいただきたい。 ○ 実際の生活場面において,コミュニケーションが異なる者と関わることが難しいという意識があることから,手段の普及に当たっては,事業者や団体に対して,障害者等を講師とした研修を実施するなど,具体的な施策を展開していただきたい。 附属資料 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会開催要綱 (目的) 第1 障害の有無によって分け隔てられることなく,人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のため,その基本理念や実現に向けた方策等を掲げた条例の制定に向けて,広く障害当事者や学識経験者等からの意見聴取及び意見交換を行うため,障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会(以下「検討会」という。)を開催する。 (所掌事務) 第2 検討会は,次の事項について意見聴取及び意見交換を行うものとする。 (1) 障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)に関すること (2) その他必要な事項に関すること (構成) 第3 検討会は,別表に掲げる者(以下「構成員」という。)の出席をもって開催する。 (座長) 第4 検討会に座長及び副座長を置く。 2 座長は会の進行を行う。 3 座長に事故あるとき,又は欠けたときは,副座長がその職務を代理する。      (会議) 第5 検討会は知事が招集する。 2 知事は,必要があると認めるときは,検討会に構成員以外の者を出席させることができる。 (庶務) 第6 検討会の庶務は,宮城県保健福祉部障害福祉課において処理する。 (その他) 第7 この要綱に定めるもののほか,検討会の運営に関し必要な事項は,知事が別に定める。 附 則 1 この要綱は,令和元年7月25日から施行する。 2 この要綱は,令和2年3月31日限り,その効力を失う。 別表(第3関係) 学識経験者 東北福祉大学 総合福祉学部,阿部 裕二 弁護士 仙台弁護士会,笠原 太良 障害当事者 公益財団法人宮城県視覚障害者福祉協会,及川 篤生 一般社団法人宮城県聴覚障害者福祉会,細川 かおる みやぎ盲ろう児・者友の会,小山 賢一 みやぎアピール大行動実行委員会,及川 智 障害者共同生活援助 萩,高橋 久 仙台スピーカーズビューロー,木村 綾子 特定非営利活動法人自閉症ピアリンクセンターここねっと,神田 拓 宮城県サルコイドーシス友の会,和田 邦子 公益社団法人日本てんかん協会宮城県支部,加藤 孝吉 事業者 宮城県商工会連合会,今野 恵理子 公益社団法人宮城県宅地建物取引業協会,谷津 聡 公益社団法人宮城県バス協会,熊沢 治夫 福祉 一般社団法人宮城県社会福祉士会,木村 香奈 行政 宮城労働局,最上 陽子 名取市役所,佐藤 久美子 (障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会報告書(案)終わり)