第6回障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)検討会 協議関連意見書 2020年1月23日 小山 賢一(盲ろう者) ●障害者権利条約のスローガン  「Nothing about us without us」  (ナッシング アバウト アス ウィズアウト アス)  「私たちのことを私たち抜きに決めないで」   ●持続可能な開発目標  SDGs(エスディージーズ)の基本理念  「leave no one behind」(リーブ ノーワン ビハインド)  外務省の公的な日本語訳では、「「誰一人取り残さない」となっていますが、取り残されがちな障害者を含めた私たちの立場では、「誰も取り残されない」などと使われることもあります。   ◆第1回検討会の議事要旨より  第1回検討会において、構成員や宮城県の事務局からの意見や説明のなかでも障害者権利条約のスローガンを引用されて、今回の条例検討会の目的や意義も「当事者(関係者)の声を聞くべき」と共通認識・共通理解のもとで、検討会が設置され、実施されている。    この「私たちのことを私たち抜きに決めないで」というフレーズは、権利条約の前から1981年ごろに生まれたフレーズである。  約40年の歳月が流れて今、この「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という障害者権利条約のスローガンに加えて、持続可能な開発目標の基本理念でもある「誰も取り残されない」社会の実現をめざし、宮城県と障害者、難病患者、子供からお年寄りまで、あらゆる人と共に理解し合い、学び、支え合える関係づくり、環境づくりが、さらに進むことを心から願いたい。   「みやぎ障害者プラン」でも重点施策として,障害を理由とする差別の解消が掲げられている。 第1回検討会で宮城県障害福祉課より、 ・2019年度においては、条例検討会での議論を深めていくことを基本とする。 ・2020年度以降、必要に応じてパブリックコメントの開催、再度各障害団体へのヒアリングを行っていくことを考えていきたい。 ・当然、その後タウンミーティング等が必要であるというような話になれば、また検討させていただきたい。  以上のように事務局(障害福祉課)より説明があり、検討会では、限られた時間のなかで、構成員が相互に多様性を認め合い、望ましい条例のあり方について、活発な意見交換や議論を展開してきた。  このような条例検討会を設置していただいた宮城県、会議での議論に参加された構成員、条例検討会の議論を見守ってくださった傍聴者の方々、関係団体のみなさまに心より感謝申し上げたい。    同時に、今回、宮城県が制定を目指す「障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)」の制定に向けて、本日(1月23日)までの条例検討会の実施回数、時間だけでは、まだまだ当事者(関係者)を交えた議論や意見交換の時間が必要、不可欠と感じる。  従って、今後の条例制定までの要望や願いを込めて、以下の通り、意見を出させていただきます。    1.アンケート調査の実施について    「みやぎ障害者プラン」を策定するに当たり、2017年に県内の障害者手帳を有する者4,000人を対象(うち1,910人から回答)に障害者福祉に関するアンケートを実施し、障害を理由とした差別についても調査されているが、無作為で抽出されており、盲ろう者を含めて、アンケートに関わることができていない、回答ができていない障害者も少なくない。  また、アンケートは、「みやぎ障害者プラン」の策定に合わせて調査が行われており、3年の年月が経過している。  第1回検討会で構成員から要望があった今回の「障害のある人もない人も共生する社会づくり条例(仮称)」の制定のために必要な実態調査、意識調査として、条例制定にリンクするようなアンケート調査の実施をご検討いただきたく改めて要望したい。  アンケートを実施される場合は、各障害者関係団体、障害当事者には障害者差別事例、困ったこと、条例や共生社会づくりに望むことなどをアンケート内容に含めていただきたい。また、県内の各地域、健常者や事業者についても現場の声や意識調査を含めて実施していただきたい。    アンケート調査の実施にあたっては、回答に時間がかかる障害者、配慮や支援が必要な方々もいることも十分に理解し、対象者が受信しやすい方法でアンケート調査について情報提供し、回答期限にも時間的配慮が必要である。    多くの県民の声が反映された条例づくりに間に合うように調査を実施し、条例案が県議会に提出される前にアンケート調査結果をまとめられるように要望したい。    2.障害者関係団体等へのヒアリングについて     各団体の代表者が一堂に集まり、全体で意見聴取する会議の他、個別に各団体へのヒアリングの実施も要望したい。    各障害者団体や関係者と情報交換・意見交換する機会と時間を設けることも大切であり、全体の場では十分な時間が取れないことも考慮し、直接、障害者関係団体に対してヒアリングを行う時間も確保していただきたい。    3.条例制定までのプロセス(過程)    今後、条例制定までのプロセス(過程)として、素案の作成、第1案、第2案、最終案の県議会による審議、議決を経て、条例が制定されると伺っているが、段階ごとに障害者関係団体へしっかり情報が共有され、共に考えていける時間が確保できるよう短期間で一気に進められることがないように要望したい。    4.タウンミーティングの再開催について    2019年2月に実施されたタウンミーティングは、周知期間も短く、短期間に集中して実施された経緯もあり、地域によっては極端に参加者が少なくなった地域もあり、条例検討会でもさらに広く当事者や県民の声を聞くべきだという声が未だに根強く残ると感じる。  一人でも多くの県民に周知し、多くの県民の理解と協力を得て、県民参加型の条例をつくるためにも、県民の関心を高めるためにも2020年度以降、これまでの条例検討会で話し合われた内容や条例案(素案、第1案、第2案のいずれか)が形になってきた段階で、各地域の県民への経過や内容の説明をしながら対話ができるようタウンミーティングの再実施をご検討いただきたく、要望したい。    5.宮城県障害者施策推進協議会との連携について    今後、宮城県知事に条例検討会の報告書が提出された後、条例素案が審議される宮城県障害者施策推進協議会(施策協)で条例の素案が審議されると理解している。  条例検討会で議論された内容を素案の審議でも活かせるよう、検討会構成員から代表(できれば複数名)の参加を求めたい。  また、可能であれば、条例検討会構成員関係者の傍聴も認めていただきたい。  6.盲ろう者の困難と「盲ろう時間」について    目と耳の両方が不自由な盲ろう者は、移動、コミュニケーション(意思疎通)、情報入手の困難を抱えている。障害の状態や困難は盲ろう者一人ひとり異なり、必要とする支援も一人ひとり異なるため、ニーズに合わせた柔軟な配慮や支援が必要である。    盲ろう者は、限られた視力、聴力等の感覚機能を活用しながら情報を受信することもあり、コミュニケーションや意思疎通にも時間がかかり、情報を受信して、理解して、考えて、発信したり動いたりすることに一つ一つ時間がかかることもあり、さらに必要な支援がなければ動けないことが少なくありません。    盲ろう者一人ひとり、目と耳の状態や情報の受信、発信方法や能力、コミュニケーション方法も異なり、その盲ろう者が動くために必要とする時間があり、それを「盲ろう時間」と言われることもあります。    多少、周囲よりも時間がかかっても盲ろう者にも必要な配慮や支援(時間的配慮も含む)があれば、盲ろう者も社会の一員として、自立と社会参加が可能になります。    条例検討会の構成員の一員として盲ろう者が条例検討会に関われたこと、僻地在住の障害者としても宮城県や構成員のみなさまのご理解とご支援、ご協力をいただき、共に学びながら参加できたことを大変ありがたく、感謝申し上げます。 (小山構成員意見書終わり)