障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例 令和三年三月二十六日 宮城県条例第三十一号 目次 前文 第一章 総則(第一条―第七条) 第二章 障害を理由とする差別の解消のための体制整備(第八条―第十五条) 第三章 共生社会の実現に向けた施策(第十六条―第十九条) 第四章 障害を理由とする差別の解消のための調整委員会(第二十条―第二十六条) 第五章 雑則(第二十七条―第二十九条) 附則 全ての県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重され、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現は、私たち全ての願いである。 このため、県では、「だれもが生きがいを実感しながら、共に充実した生活を安心して送ることができる地域社会づくり」を障害福祉施策の基本理念とし、「障害を理由とする差別の解消」を重点施策の一つに掲げ、「障害を理由とする差別の解消」に関し、合理的配慮の提供や普及啓発等の施策を推進し、障害のある人の社会参加や自立を進めてきた。 しかしながら、今なお、障害や障害のある人に対する誤解や偏見、理解不足等の社会的障壁により、障害のある人が、日常生活や社会生活の様々な場において、障害を理由とする不当な差別的取扱いを受けたり、情報の取得又は利用のための手段や意思疎通のための手段が十分に確保されていない等、困難や不便を余儀なくされ、暮らしにくさを感じている状況がある。 また、本県に未曽有の被害をもたらした東日本大震災では、障害のある人は、災害時の避難行動や避難所、応急仮設住宅での生活において大きな困難を抱え、障害の特性に応じた情報伝達においても、非常に厳しい状況に置かれた。 こうした状況を踏まえ、全ての県民が、障害や障害のある人に対する理解を深め、障害を理由とする不当な差別的取扱いを身近な課題と捉えてこれを解消し、建設的な対話を通じて、互いに理解し合い、歩み寄るとともに、手話、拡大文字、筆記、点字、音声、触手話、平易な表現等の障害の特性に配慮した適切な情報の提供や意思疎通のための手段の確保等を通じて、社会的障壁の除去に取り組んでいかなければならない。 ここに、障害者の権利に関する条約、障害者基本法及び障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の趣旨を踏まえ、障害のある人もない人もお互いを理解し、かけがえのない個人として尊重し、支え合い、共に暮らしやすい社会の実現を目指して、この条例を制定する。 第一章 総則 (目的) 第一条 この条例は、障害を理由とする差別の解消に関し、基本理念を定め、並びに県、県民及び事業者の責務等を明らかにするとともに、県が実施する施策の基本となる事項を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を図り、もって県民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 一 障害のある人 身体障害、知的障害、発達障害を含む精神障害、難病に起因する障害その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二 事業者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)第二条第七号に規定する事業者のうち、県の区域内において商業その他の事業を行う者をいう。 三 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (基本理念) 第三条 障害を理由とする差別の解消及び共生社会の実現は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。 一 全ての県民は、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有すること。 二 全ての障害のある人は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 三 全ての障害のある人は、可能な限り、意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 四 全ての障害のある人は、その性別、年齢等による複合的な原因により特に困難な状況に置かれる場合においては、その状況に応じた適切な配慮がなされること。 五 障害を理由とする差別の解消は、多様な人々により地域社会が構成されているという基本認識の下に、障害、障害のある人及び障害の社会モデル(障害のある人が日常生活又は社会生活において受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相まって生ずるものとする考え方をいう。)に関する理解(以下「障害等に関する理解」という。)を深めることを基本として推進すること。 (県の責務) 第四条 県は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障害を理由とする差別を解消するために必要な体制整備を図るとともに、共生社会の実現に向けた施策を策定し、及び実施するものとする。 2 県は、前項の体制整備を図り、又は同項の施策を策定し、及び実施するに当たっては、国、市町村、県民、事業者、障害者団体(障害のある人又はその家族その他の関係者で構成され、障害のある人に対する支援を主な活動とする団体をいう。以下同じ。)その他の関係者と協力し、連携して取り組むものとする。 (県民及び事業者の責務) 第五条 県民及び事業者は、基本理念にのっとり、障害等に関する理解を深めるとともに、県が実施する障害を理由とする差別の解消及び共生社会の実現に向けた施策に協力するよう努めるものとする。 (障害者団体の役割) 第六条 障害者団体は、基本理念にのっとり、障害等に関する理解を深めるための活動及び障害を理由とする差別の解消に資する活動に取り組むとともに、障害を理由とする差別の解消及び共生社会の実現に積極的な役割を果たすよう努めるものとする。 (財政上の措置) 第七条 県は、障害を理由とする差別の解消及び共生社会の実現に向けた施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 第二章 障害を理由とする差別の解消のための体制整備 (障害を理由とする差別の禁止) 第八条 何人も、障害のある人及びその家族その他の関係者に対し、障害を理由とする不当な差別的取扱い(障害を理由として、正当な理由がなく、商品、サービス若しくは各種の機会の提供を拒否すること、その提供に当たって場所、時間帯等を制限すること又は障害のない人に対して付さない条件を付すことその他の障害のない人と異なる不利益な取扱いをすることをいう。)をすることにより、これらの者の権利利益を侵害してはならない。 2 県及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害のある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害のある人の家族その他の関係者が当該障害のある人を補佐して行う意思の表明を含む。)があった場合において、当該障害のある人と建設的な対話を行い、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害のある人の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害のある人の性別、年齢、障害の状態等に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 3 県民は、前項の配慮に関し県又は当該事業者から必要な協力を求められた場合には、これに応ずるよう努めるものとする。 (障害を理由とする差別に関する相談) 第九条 障害のある人及びその家族その他の関係者は、県に対し、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第十四条の規定による障害を理由とする差別に関する相談をすることができる。 2 県は、前項の相談があったときは、次に掲げる業務を行うものとする。 一 相談者に対し、必要な助言及び情報提供を行うこと。 二 当該相談に係る関係者間の必要な調整を行うこと。 三 関係行政機関等への通知その他当該相談の処理のために必要な事務を行うこと。 (障害を理由とする差別に関する相談業務の委託) 第十条 県は、前条第二項各号に掲げる業務を行わせるため、適当と認める者に、当該業務の全部又は一部を委託することができる。 2 前項の規定による委託に係る業務に従事している者は、正当な理由がなく、当該委託に係る業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。当該委託に係る業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。 (助言又はあっせんの申立て) 第十一条 障害のある人及びその家族その他の関係者は、障害を理由とする差別に関し、事業者による第八条第一項又は第二項に係る事案(以下「対象事案」という。)について、第九条の相談を経ても当該対象事案の解決が見込めないときは、知事に対し、当該対象事案の解決のために必要な助言又はあっせんを求める旨の申立てをすることができる。 2 前項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当する場合は、同項の申立てをすることができない。 一 対象事案が障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和三十五年法律第百二十三号)の規定に基づき紛争の解決を図ることができるものであるとき。 二 同一の事案について、過去に前項の申立てをしたことがあるとき。 三 対象事案が発生した日(継続する行為にあっては、その行為が終了した日)から三年を経過したものであるとき(その期間内に前項の申立てをしなかったことにつき正当な理由がある場合を除く。)。 四 障害のある人の家族その他の関係者が前項の申立てをする場合において、当該申立てをすることが当該障害のある人の意に反するとき。 (事実の調査) 第十二条 知事は、前条第一項の申立てがあったときは、当該申立てがあった対象事案に係る事実の調査を行うものとする。 2 前項の対象事案の当事者(当該対象事案に関し、前条第一項の申立てをした者及び第八条第一項又は第二項の規定に違反する行為をしたとされる事業者をいう。以下同じ。)その他の関係者(以下「対象事案関係者」という。)は、正当な理由がある場合を除き、前項の調査に協力しなければならない。 (助言又はあっせん) 第十三条 知事は、前条第一項の調査の結果に基づき、必要があると認めるときは、当事者に対し、その対象事案の解決のための助言を行い、又は宮城県障害を理由とする差別の解消のための調整委員会(以下本条及び次条において「委員会」という。)にあっせんを行うよう求めるものとする。 2 委員会は、前項の規定によるあっせんの求めがあったときは、その対象事案を解決するため、あっせんを行うものとする。ただし、委員会が、当該対象事案の性質上あっせんを行うことが適当でないと認めるときは、この限りでない。 3 委員会は、あっせんのために必要があると認めるときは、第一項の規定によるあっせんの求めがあった対象事案に係る対象事案関係者に対し、説明又は資料の提出を求めることその他の必要な調査を行うことができる。 4 委員会は、必要があると認めるときは、知事に前項の調査の全部又は一部を行わせることができる。 5 対象事案関係者は、正当な理由がある場合を除き、第三項の調査(前項の規定により知事がその全部又は一部を行う場合を含む。次条において同じ。)に協力しなければならない。 6 委員会は、第一項の規定によるあっせんの求めがあった対象事案の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提示するものとする。 7 あっせんは、次の各号のいずれかに該当したときは、終了する。 一 あっせんにより対象事案が解決したとき。 二 あっせんによっては対象事案の解決の見込みがないと認めるとき。 8 委員会は、第二項ただし書の規定によりあっせんを行わないこととしたとき又は前項の規定によりあっせんを終了したときは、当事者にその旨を通知するとともに、知事に第一項の規定によるあっせんの求めへの対応の結果を報告するものとする。 (勧告) 第十四条 委員会は、知事に対し、次の各号のいずれかに該当する場合は、事業者に対して障害を理由とする差別の解消に必要な措置を講ずるよう勧告することを求めることができる。 一 前条第二項の規定によりあっせんを行った場合において、当該事業者が、正当な理由がなく、あっせん案を受諾せず、又は受諾したあっせん案に従わないとき。 二 当該事業者が、正当な理由がなく前条第三項の調査を拒んだとき。 三 当該事業者が、前条第三項の調査に対し、虚偽の資料を提出し、又は虚偽の説明を行ったとき。 2 知事は、前項の規定による勧告の求めがあった場合において、必要があると認めるときは、当該事業者に対して障害を理由とする差別の解消に必要な措置を講ずるよう勧告することができる。 (事実の公表) 第十五条 知事は、前条第二項の規定による勧告を受けた事業者が正当な理由がなく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 2 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、当該公表の対象となる事業者に対し、あらかじめ、その旨を通知し、当該事業者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、これらの者が正当な理由がなく意見の聴取に応じないときは、この限りでない。 第三章 共生社会の実現に向けた施策 (普及啓発) 第十六条 県は、基本理念にのっとり、県民の障害等に関する理解を深めるための啓発、知識の普及その他必要な施策を講ずるものとする。 (教育の推進) 第十七条 県は、学校教育において、障害等に関する理解について、正しい知識を得るための教育が行われるよう、情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。 (交流による相互理解の推進) 第十八条 県は、障害のある人及び障害のない人の交流を積極的に促進し、相互理解を推進するものとする。 (情報保障の推進) 第十九条 県は、市町村、県民、事業者等において、手話、拡大文字、筆記、点字、音声、触手話(触覚により認識することができる手話をいう。)、平易な表現その他の障害の特性に応じた多様な意思疎通等の方法が普及するよう必要な施策を講ずるものとする。 2 県は、手話通訳、点訳、盲ろう通訳介助、要約筆記その他の方法により、障害のある人の情報の取得並びに意思疎通を支援する者の養成、確保及び技術の向上のために必要な施策を講ずるものとする。 3 県は、障害のある人が県政に関する情報を速やかに得ることができるよう、可能な限り、障害のある人に配慮した方法によって情報の提供を行うものとする。 4 県は、市町村その他の関係機関と連携して、災害その他非常の事態の場合において、障害のある人に対し、その安全を確保するために必要となる情報を迅速かつ的確に伝えられるよう、多様な情報提供の手段の確保について配慮するものとする。 第四章 障害を理由とする差別の解消のための調整委員会 (設置) 第二十条 第十三条第一項の規定によるあっせんの求めに応じ、同条第二項の規定によるあっせん及び第十四条第一項の規定による勧告の求めを行うため、知事の附属機関として、宮城県障害を理由とする差別の解消のための調整委員会(以下「委員会」という。)を置く。 (組織等) 第二十一条 委員会は、委員十人以内で組織する。 2 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。 一 障害を理由とする差別の解消に関し学識経験を有する者 二 障害のある人 三 障害のある人の家族 四 障害のある人の福祉に関する事業に従事する者 五 事業者又は事業者により構成される団体の役職員 六 関係行政機関等の職員 七 前各号に掲げる者のほか、知事が適当と認める者 3 委員の任期は、二年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。 4 委員は、再任されることができる。 (専門委員) 第二十二条 委員会に、専門の事項を調査させるため必要があるときは、専門委員を置くことができる。 2 専門委員は、当該専門の事項に関し識見を有する者のうちから、知事が任命する。 3 専門委員は、当該専門の事項に関する調査が終了したときは、解任されるものとする。 (委員等の服務) 第二十三条 委員及び専門委員は、正当な理由がなく、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、同様とする。 (委員長及び副委員長) 第二十四条 委員会に委員長及び副委員長を置き、委員の互選によって定める。 2 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。 3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故があるとき、又は委員長が欠けたときは、その職務を代理する。 (会議) 第二十五条 委員会の会議は、委員長が招集し、委員長がその議長となる。 2 委員会の会議は、委員の半数以上が出席しなければ開くことができない。 3 委員会の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。 (委員長への委任) 第二十六条 この章に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が委員会に諮って定める。 第五章 雑則 (市町村の条例との関係) 第二十七条 知事及び委員会は、第十一条第一項の申立てがあった事案であって、市町村が当該市町村の条例により当該事案の解決又は改善を図ることを目的として第十三条第一項の規定による助言、同条第二項の規定によるあっせん、第十四条第二項の規定による勧告若しくは第十五条第一項の規定による公表に準ずる行政指導その他の行為をし、又は当該行為をするための手続を開始したものについては、第十三条第一項の規定による助言、同条第二項の規定によるあっせん、第十四条第二項の規定による勧告又は第十五条第一項の規定による公表を行わないものとする。 (委任) 第二十八条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。 (罰則) 第二十九条 第十条第二項又は第二十三条の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 附 則 (施行期日) 1 この条例は、令和三年四月一日から施行する。ただし、第十一条から第十五条まで、第四章、第二十七条及び第二十九条(第二十三条に係る部分に限る。)の規定は、同年七月一日から施行する。 (準備行為) 2 委員会の委員の選任のために必要な行為その他委員会の設置のために必要な準備行為は、前項ただし書に規定する規定の施行の日前においても行うことができる。 (検討) 3 知事は、この条例の施行後三年を目途として、この条例、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律その他の関係法令の施行状況、社会情勢の変化等を勘案し、この条例の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。  (附属機関の構成員等の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例の一部改正) 4 附属機関の構成員等の給与並びに旅費及び費用弁償に関する条例(昭和二十八年宮城県条例第六十九号)の一部を次のように改正する。   別表に次のように加える。 宮城県障害を理由とする差別の解消のための調整委員会の委員及び専門委員 出席一回につき 一一、六〇〇円 六 級 (障害を理由とする差別を解消し障害のある人もない人も共生する社会づくり条例終わり)