【集落情報発信支援員コラム#3】丸森町での農泊に関する取り組み紹介(丸森町)
なぜ丸森に人が集まるのか―地域おこし協力隊たちの活躍―

福島県との県境に位置する県最南端の丸森町。阿武隈川が流れる盆地状の地形が特徴で、温暖な気候と豊かな自然環境が魅力です。
丸森町を訪れてみて知ったのは、地域の魅力に取りつかれた人たちが各地でじわじわと立ち上がって、ゆるりと面白い繋がりが生まれていること。そして、その輪の中に入らせてくれる懐の広さと心地良さ。模索しながらも焦らず自分たちにできることを広げていく、農泊にも繋がる取り組みをご紹介します。
地域おこし協力隊が繋がり育む農泊事業
丸森町での農泊・グリーンツーリズム事業として、最近では「丸森グリーンツーリズム協議会」の活動や「こらいんツーリスト」というツアー企画の事業、竹林整備や猫神さまを敬う文化に伴った町おこし企画等さまざまに展開されています。そして、地域おこし協力隊にも農泊に関連するプロジェクトを立ち上げる人材も続々と増加。OG・OBには、丸森町の農泊を牽引する存在になっている人たちもいます。
「人生に、まわり道を。」を掲げて募集している丸森町の地域おこし協力隊。多くの先輩と現役が交流し、時に励まし合い、時に切磋琢磨することで、まわり道しながらもゆっくりと素敵に磨き上げられていくプロジェクトたち。そんな交流の場の一つが、以前ご紹介した丸森町のシェアハウス「たね家」です。オーナーの早川真理さんも協力隊OGで現在の運営スタッフにも現役協力隊が関わっています。協力隊の集いだけでなく、地域の集まりや農泊体験の拠点にもなっており、たね家を通じて農業体験や地域散策もできる素敵な場所。こういう場所が生まれるから、丸森町に人が集うのかもしれませんね。
丸森町のシェアハウス「たね家」に集う地域おこし協力隊たち
「古民家宿まるもり」「まるもりビレッジ」の誕生
丸森町の山奥にある筆甫(ひっぽ)地域で、地域おこし協力隊の活動期間中に古民家のリノベーションを手掛け「古民家宿まるもり」をオープンさせた若者もいます。オーナーの中村真悟さんは、茅葺屋根や囲炉裏のある築120年空き家に、地域の人たちをはじめ外からお手伝いにきてくれる人々も巻き込んで手を加えていき、みんなで作り上げた場所としてオープンしました。実際、2022年のオープン以降も一棟貸しとして宿泊に利用されているほか、地域のコミュニティの場、そして地域外から訪れた人と地元の方が繋がることができる場としても活用されています。
さらに2024年には、同エリアに旧保育所をリノベーションした「まるもりビレッジ」をオープン。ご本人含め、すでに協力隊を卒業した仲間たちと共に改修し、保育所の面影が味のある広々とした宿泊・コミュニティ拠点として誕生しました。「古民家宿まるもり」も「まるもりビレッジ」も、元の姿を活かしたリノベーションとなっていて、滞在しているだけでも地域が刻んできた時間を感じることができ、周囲の大自然も満喫できる贅沢なひとときが待っています。
旧保育所を利活用した「まるもりビレッジ」はその面影が趣になっている
養蚕で栄えた文化を継承する「SILKWa(しるくわ)」
かつて養蚕の地として栄え「丸森しるく」を作り続けている文化を継承すべく立ち上がった「SILKWa(しるくわ)」も、地域おこし協力隊のOGの阿部倫子さんが代表を務めています。シルクが生まれるまでの営みやストーリーを伝えながら、可視化・言語化できない感動や価値、人の魅力を伝えたいと、体験企画や交流企画、商品の宣伝などさまざまに取り組んでいます。
地域で桑を育てている農家さんと連携した交流付きの桑の葉収穫体験や親子でも参加できる作り手さんと交流しながらの体験企画は、リピーターも多く毎年恒例行事に。ただ収穫やものづくりをするだけでなく、丸森町の美しさや地域の人たち抱く地域への愛着、人の魅力がじわじわと伝わっていくのがリピーターさん続出の秘密かもしれません。
「しるくわ」での体験の様子
まだまだ活躍する丸森町の地域おこし協力隊たち
「地域の自然をもっと人に繋げたい」という想いで協力隊に応募した阿賀花さん。学校教諭をしていた経験や自身の幼少期からの思い出から、自然を通して得られる学びの偉大さを感じていたため、子どもたちをはじめたくさんの人たちにその機会を提供しようと取り組んでいます。丸森町の「不動尊公園キャンプ場」や一棟貸し切り宿の「MARUMORI-STAY風土」の運営に携りながら、災害時にも役立つアウトドア飯の開発なども力を入れ“自然”と“教育”を結び付けた活動を実践中です。
そのほか、地域の食材や文化を融合させたスイーツを手掛ける「MARUMORICAFE」や地域の猫神さま文化を伝える「まるもふ猫神プロジェクト」など、食や文化の面でも協力隊たちが活躍中!丸森町をフィールドに挑戦する個々のプロジェクトが、交流や連携を重ねていくことで大きな農泊・グリーンツーリズムの魅力に繋がっています。今の時代に合わせて進化させながらも、文化を継承して守ろうと取り組む人たちがたくさんいる丸森町。それこそが、今の丸森の魅力と言えるでしょう。
丸森の自然環境の中でガイドをする阿賀さん
執筆者:宮城県農山漁村集落情報発信支援員-大場黎亜