【集落情報発信支援員コラム#13】「みやぎ型グリーン・ツーリズム」を考える―座談会開催報告―
レジェンドたちと振り返るみやぎ型GT、これからの展望
令和8年2月、大崎市鳴子郷の川渡温泉「山ふところの宿みやま」を会場に、宮城県のグリーン・ツーリズムを牽引してきたレジェンドの方々や「みやぎグリーン・ツーリズム推進協議会」の方々にご協力いただき、座談会を開催しました。
テーマは「みやぎ型グリーン・ツーリズムって何だ?」で、これまで宮城県で推進してきたグリーン・ツーリズムの歩みを実践されてきた皆さんと振り返ると同時に、これから宮城県で目指していくグリーン・ツーリズムの在り方を一緒に考える時間となりました。その様子と宮城県として公表した今後の方針をご紹介します!
みやぎのグリーン・ツーリズムを牽引してきた皆さんとの座談会
まずは、当日お声がけしてご参加いただいた実践者の皆様をご紹介します。
|
〇宮城県でグリーン・ツーリズムを推進し始めた頃から活躍されてきた、大崎市田尻で「農家レストラン蔵楽(くらら)」を営む佐々木重信さん 〇佐々木さんと共に県のグリーン・ツーリズムを盛り上げてきて、鳴子温泉で「山ふところの宿みやま」のオーナーをされている板垣幸重さん 〇宮城県のグリーン・ツーリズムの推進においてさまざまな議論に参加されて導いてきた宮城大学名誉教授の宮原育子さん 〇佐々木さんや板垣さんと共に鳴子でも活躍された経験を持ち、その後現在県南の丸森町で里山時間を体験できる「ヒュッテ・モモ」を営む早川真理さん 〇栗原市で「くりはらツーリズムネットワーク」として数々の体験を提供し、暮らしの中にある大切なものを伝え続ける活動をされている大場寿樹さん 〇みやぎグリーン・ツーリズム推進協議会の副会長としてご参加いただき、登米市で営む「伊豆沼農産」としても体験提供や県北エリアへの誘客に貢献している佐藤裕美さん |

座談会にご参加いただいた皆さんと記念写真
この座談会を企画したきっかけは、宮城県農山漁村集落情報発信支援員として活動している中で知った「みやぎ型グリーン・ツーリズム」というワードについて、県の担当の方々と打ち合わせをしている中で「そもそも“みやぎ型”って何だ?」という話になったところから始まりました。
平成10年頃から「みやぎ型グリーン・ツーリズム」を推進してきた宮城県ですが、その定義は「農山漁村を舞台とした交流活動、共生の交流活動で、宿泊の有無等の形にこだわらず多様に展開する」とあります。イメージは分かるものの、どこでも同じようにも感じられ、何が“みやぎ型”なのかがピンと来ないですよね。

みやぎ型グリーン・ツーリズムの変遷
当時から今日に至るまでの間に、東日本大震災があり、コロナ禍があり、その他にもさまざまな社会情勢によって状況が変化しています。その都度計画やプランを更新してきた宮城県ですが、ちょうど令和8年度からの「みやぎ農山漁村交流拡大推進方針」を作成しているタイミングにありました。
宮城県なりわい課の担当者も含め、現在グリーン・ツーリズムに関わっていても当時のことを知らない世代やこれから実践していきたい人たちが改めて“みやぎ型”をどう捉えたら良いのか、考えるタイミングかもしれません。そこで、当時を知る方々に聞いてみたいとお声がけさせていただき、開催が実現しました。

座談会の様子1
これまでの“みやぎ型”の定義
さて、肝心の「そもそも“みやぎ型”って何だ?」の部分を丁寧に教えてくださったのが、宮城大学名誉教授の宮原育子さんです。「みやぎ型グリーン・ツーリズム」の業態の定義を設定していた当時のお話を用語の定義資料を共有いただきながら説明していただきました。
例えば、当時の「みやぎ型グリーン・ツーリズムの推進方向」では「民宿やレストラン等への農林漁家の主体的な取り組みが生まれるよう推進する」とあり、“みやぎ型”とは“農林漁業者”に限定する色が強いということが分かりました。

座談会の様子2
実践者の皆さんは当時を回顧しながら「当時は、貧しかった農村を盛り上げたい一次産業者が中心だったからね」「農林業などの傍らでできることをやりたいというお母さんたちの活動でもあったからなあ」などと、当時の背景や個々の経緯をお話してくださったので、私も理解しやすかったです。
一方で、一次産業の実態も変化していき、人口も減っていく地域が多い中、これからは“農林漁業者”に限定せず、一次産業を本業にしていなくても農山漁村を守りたい、盛り上げていきたいと思う人たちを多様に巻き込んで実施していく時代ではないか、というご意見もレジェンドの皆さんからいただくことができました。

夜は「遊山箱」という箱型のお重に入った夕食をいただきました
夕食にはみやまさんでご用意いただいたお料理を囲みながら、さらに深く語り合う素敵な時間に。皆さんがグリーン・ツーリズムを大切にしてきた背景や想い、県内の同志たちと共に挑んだグリーン・ツーリズムネットワーク大会等のお話などを通じて、築いてきた地盤を感じることができました。
今日に至るまでの約30年弱、宮城県でのグリーン・ツーリズムがどのように変遷していったのか、見えない苦労も含め垣間見ることができたと同時に、今後への期待やエールもたくさんいただき、私もグリーン・ツーリズムにまだまだ可能性を感じました!

「遊山箱」の中身は地元の食材も使った彩り豊かなお料理
これからの「みやぎ型グリーン・ツーリズム」
翌朝は、前日の話も踏まえて、なりわい課で作成を進めていた「みやぎ農山漁村交流拡大推進方針(令和8年度~令和12年度)」の案について、改善すべき点など意見を出し合いながら振り返る時間となりました。
平成初期は、農林漁家のやってきたものを「グリーン・ツーリズム」を通じてさらに盛り上げてきたところがありますが、これからうたう“みやぎ型グリーン・ツーリズム”は定義を少し時代に合わせて広義にイメージできるものにしようという方向性で合意でき、有意義な時間でした。

座談会の様子3
宮城県では、今回の座談会を通じて知ることができた“みやぎ型”の背景を再設定しつつ、皆さんの「農山漁村の“当たり前”の日常の中に、農や暮らしの大切なことが詰まっている」「グリーン・ツーリズムを通じて、命に繋がっているなりわいや食について考えるきっかけになれば」という想いを反映させたものにしたいと考え、案を急ぎ修正しました。
表紙のキャッチコピー「INAKA(田舎)は、食や暮らし、自然を支え命をつなぐ大切な場所です」にその想いを込め、新たな方針の中には近年の情勢も踏まえ「農林漁家だけではなく、それを取り囲む多様な主体が関り」という文言も入れています。

「みやぎ農山漁村交流拡大推進方針(令和8年度~令和12年度)」の表紙
グリーン・ツーリズムの取り組みに加わった「農泊」の考え方も含め、地域に根差したさまざまな活動そのものが「地域の魅力」であるという考え方のもと、基本方針についても「多彩な連携と交流による、持続可能な農山漁村地域づくり」とうたいました。
具体的には「地域ではぐくむ」「地域でみがく」「地域をひろめる」「地域をささえる」の4つの柱を掲げ、地域の取り組みを支援していく方針を示しています。農林漁家を中心としつつ、他産業従業者も含め地域ぐるみで行う共同の取り組みを推進していく方針です。これからの“みやぎ型グリーン・ツーリズム”は、より多様な人たちが「食や暮らし、自然を支え命をつなぐ」仲間となり一緒に取り組んでいくことで、持続可能な農山漁村を守り、皆さんの食や暮らしを守ることを目指します。

「みやぎ農山漁村交流拡大推進方針(令和8年度~令和12年度)」より一部抜粋
「みやぎ農山漁村交流拡大推進方針(令和8年度~令和12年度)」はこちら
みやぎ農山漁村交流拡大推進方針について-宮城県公式ウェブサイト
執筆者:宮城県農山漁村集落情報発信支援員-大場黎亜
掲載日:令和8年5月27日

