普及に移す技術第91号/第91号参考資料19
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参考資料(平成27年度)
分類名〔病害虫〕
津波被災農地における雑草植生と斑点米カメムシ類発生の特徴
津波被災農地における雑草植生と斑点米カメムシ類発生の特徴(PDF:963KB)
宮城県古川農業試験場
1 取り上げた理由
東日本大震災大津波の被害を受けた農地では,比較的被害の小さい内陸部から被害のより大きい沿岸部に向けて順次復旧が進められてきた。その結果,津波被災農地の中には,早期復旧を果たした地域から復旧後間もない地域まで様々な水田が存在しており,水稲の作付け環境も多様であるため各々の状況に応じた適切な管理が必要である。そこで,水稲作付け開始年の異なる内陸部から沿岸部にかけた復旧農地において,雑草植生と斑点米カメムシ類の発生の特徴が明らかとなったので参考資料とする。
2 参考資料
- 1)早期に復旧し水稲の作付けを開始した内陸部の地域では,復旧後間もない地域と比べて,水稲作付け水田内にイヌホタルイやノビエの残草が多い。イヌホタルイ・ノビエはいずれの地域でも残草している一方で,沿岸部の水稲作付け水田では特異的にコウキヤガラの残草割合が高い(図1)。
- 2)早期に水稲の作付けが再開された内陸部では,水田内にイヌホタルイが残草している場合に斑点米の発生リスクは高まる。一方,復旧後間もない沿岸部の水稲作付け水田では,水田内のイヌホタルイの有無でも斑点米の発生を説明できず,さらに,内陸と比べ水稲出穂期から8月下旬にかけて,斑点米カメムシ類発生量の増加が著しい(図2)。
- 3)復旧後間もない沿岸部の地域には,ほ場区画は復旧したものの未だ作付けされない休耕田が混在している(図3)。それら休耕田にはコウキヤガラを中心とした雑草が繁茂しており,斑点米カメムシ類の発生源となっている。沿岸部地域の水稲作付け水田における,水稲出穂期から8月下旬にかけてのカメムシ発生量の急増は,この休耕田からの飛び込みによるものと考えられる(図4)。
3 利活用の留意点
- 1)本成果は平成23年から復旧が進められている宮城県名取市の津波被災農地において,平成24年から平成26年に行った3ヶ年の調査を基にしている。水稲の作付けを再開した水田を順次調査地点としているため,作付け開始年の違う地域毎に調査年数が異なる。
- 2)津波被災農地でも,内陸部は一般的な水田と同じく,イヌホタルイを中心とした水田内雑草の管理により斑点米被害を抑えることができる。一方,復旧後間もない沿岸部には,アカスジカスミカメの重要な寄主であるコウキヤガラが特異的に多発する地域も存在する。そのような地域において水稲作付け水田と休耕田が混在する場合には,休耕田がコウキヤガラ及び斑点米カメムシ類の温床となるため,水稲作付け水田内の防除に加えて,周辺休耕田の雑草管理も徹底する必要がある。
(問い合わせ先:宮城県古川農業試験場作物保護部 電話0229-26-5108)
4 背景となった主要な試験研究
- 1)研究課題名及び研究期間
食料生産地域再生のための先端技術展開事業
食料生産地域再生のための土地利用型営農技術の実証(平成24~27年度)
- 2)参考データ
図1 水稲作付け開始地域別の水田内の残草量と残草ほ場割合
図3 平成26年水稲作付け開始地域における休耕田の分布状況
図2 水稲作付け水田内におけるイヌホタルイの有無と斑点米カメムシ類すくい取り虫数および斑点米率の関係
図4 平成26年水稲作付開始地域の休耕田と水田内におけるコウキヤガラ発生量と斑点米カメムシ類すくい取り虫数の関係
- 3)発表論文等
- a 関連する普及に移す技術なし
- b その他
平成26年度東北農業研究成果情報
- 4)共同研究機関 農研機構 東北農業研究センター
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