東日本大震災宮城の震災対応記録

(職員インタビューによる震災の記憶・経験の伝承)

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河川・海岸施設の復旧

 県の所管する海岸施設は、建設海岸、漁港海岸、農地海岸、港湾海岸、治山(海岸)があり、それぞれに所管課がある。これは海岸法により各海岸の監督省庁が定められていることに対応したものである。東日本大震災では、県が所管する全ての海岸施設に被害が及んだため、従来の災害のように所管課がそれぞれの基準で災害復旧を行うのではなく、県全体として統一した基準の下で災害復旧に当たる必要があった。また、5月には、七北田川以南の建設海岸の施設復旧を、国で施行することが告示された。
 平成23年4月、学識者と海岸を所管する省庁及び岩手・宮城・福島の3県の関係者で構成される「海岸における津波対策検討委員会」が開かれ、県は本委員会での検討結果を踏まえ、平成23年9月に「宮城県沿岸における海岸堤防高さの設定について」を公表した。この中で、海岸線を22のユニットに分けて海岸施設の整備の高さを設定し、今後想定される津波をレベル1とレベル2に分け、レベル1の津波には防潮堤による防御、レベル2の津波にはソフト・ハード施策を組み合わせた「多重防御」によって減災する計画とした。
 海岸施設の災害査定では、設計の対象となる津波高は決まったものの、詳細な技術基準が決まっていない段階で進められたため、各海岸保全施設の復旧工事が開始される平成24年度以降、ほとんどの箇所で設計変更により対応することとなった。また、海岸施設の整備は市町のまちづくりとも密接に関わっており、県庁内関係各課、関係機関が連絡調整会議を頻繁に開いて、横断的な連携を図りながら、一体となった復旧・復興を目指した。
 河川堤防及び防潮堤の整備には、地域住民の合意が不可欠であった。県は市町と共に整備方針を理解していただくための説明会を各地で開いたが、円滑に合意形成が図られる地域もあれば、住民から強い反対を受ける地域もあった。県は、住民の意向をもとに可能な限り景観や環境に配慮した設計変更を行い、景観を確保する技術的提案を行う等して合意形成に努めた。令和元年7月に気仙沼市内の漁港の合意が得られたことで、県内全ての海岸施設の工事が着工可能となった。

後輩たちへのメッセージ

関連項目

東日本大震災~発災から1年間の災害対応の記録~

(宮城県農林水産部農林水産総務課・平成25年6月)

宮城県土木部東日本大震災5年間の復旧・復興の記録

(宮城県土木部土木総務課・平成29年3月)

東日本大震災~復旧・復興に係る宮城県農林水産部の対応記録~第2集 平成24~27年度

(宮城県農林水産部・平成29年9月)

東日本大震災宮城県河川海岸復旧・復興環境配慮記録誌

(宮城県土木部河川課・令和3年3月)

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