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掲載日:2012年9月10日

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宮城のプルサーマル情報|講演会・討論会の記録

会場で寄せられた全ての質問と回答(平成21年11月19日現在・最終版)

I.プルサーマル(2)

プルサーマル導入に伴う安全性

MOX燃料の使用
プルトニウムとウランからMOX燃料を作るそうですが、現有の原発(女川原発)で使用して安全なのでしょうか[牡鹿]
[出光講師]
同様の組成での海外での実績もあり、現行のウラン燃料と同様の安全性を持っています。
[小林講師]
プルサーマルは現在の原発が持っている安全余裕を確実に削りますので、危険性は増加します。安全余裕は事故防止や事故時の危険を低下させるために重要な役目を果たすものです。また、プルサーマルによって原発の運用がより複雑になりますので、新たなトラブルや事故のきっかけを増やすことにもつながります。
理論と現実は違う場合が多いので、フランスなどのように少しずつPuを入れていくことは検討しないのか?[牡鹿]
[東北電力]
フランスでは原子炉にMOX燃料を導入するに当たり、一回の燃料取替えにおけるMOX燃料の体数を徐々に増やした実績があります。東北電力では、使用するMOX燃料は炉心の燃料重量にして1/3(228体)以下とし、これを3回に分けて装荷した場合について安全であることを確認しています。
なお、毎年の利用量は0.2t/年(プルトニウム利用計画)なので、毎年の装荷体数はより少なくなります。
軽水炉(ウラン燃料)でMOX燃料は本当に安全なのか。なぜ燃料棒は1/3に押さえるのか。[牡鹿]
[出光講師]
海外での多くの実績、日本でのふげんの実績等もあり、安全性はウラン燃料と同等です。1/3は検討するときの設定で、とりあえずの値です。その他の設定と同様、設定値の範囲内であれば、現行の原子炉を改造することなく使えるという解析結果の大元の設定となっています。ただし、これを越えたら直ちに危険になるというものではありません。海外では、1/3以上の装荷をしている例もあります。
[小林講師]
今の原発(軽水炉)はウラン(低濃縮ウラン)を燃料とするように設計されたものです。女川原発のプルサーマルは、炉の構造を改造しないまま本来の目的とは違うプルトニウムでできたMOX燃料を使う計画です。その結果、制御棒の効きの低下など国が定めた安全基準を守れなくなる恐れが出てきます。そのため、原子炉内に入れられるプルトニウムの重量を国の基準を満たせるように燃料全体の1/3以下に押さえると決めています。基準を満たしていると言ってもウラン燃料に比べると制御棒の効果が低下するなど安全余裕は確実に減ります。
3号機にMOXを入れることは石油ストーブに灯油ではなくガソリンを入れるようで危険ではないのか?今は実験段階、やめるべきではないか。[女川]
プルサーマルは灯油用のストーブにガソリンを入れるようなものといっている人がいるが、本当か?安全性はきちんと確保されるのか?[牡鹿]
[出光講師]
普通の軽水炉に、MOX燃料に入れるというのは、ストーブにカソリンを入れるというものではありません。核燃料の臨界にする能力をウラン燃料と同じくらいの反応度になるように調整して入れるので、ウラン燃料と能力的に変わらないものを入れると理解いただきたい。
[小林講師]
プルサーマルは、本来の燃料として想定していなかったより燃えやすい別の燃料(MOX燃料)を入れ、その結果危険性を増やすという意味ではそうたとえられるかも知れません。プルサーマルはもんじゅ事故で急に起こってきた間に合わせ的な動きで、安全性も十分確かめられているとはいえません。必要性からもやる意味がないのでやめるべきです。
ペレットは固体と思っていたが、気体があり、危険が高い性質といっていたようですが、もう一度説明してほしい。(ペレットの取扱上の危険性について)[牡鹿]
[出光講師]
燃料ペレットは固体ですが、その中のウランもプルトニウムも核分裂すると、ある割合で気体状の核分裂生成物ができます。プルトニウムの核分裂では気体状のものができる割合がウランに比べ少し多いので、燃料棒の中の圧力が高くならないように、燃料棒内部のガス溜めの空間を拡げる、最高燃焼度(どれだけ核分裂させるか)をウラン燃料よりも下げる等の対策をとっており、最終的な内部の圧力をウラン燃料程度にするよう設計されています。
[小林講師]
ペレットは新燃料のときは固体です。運転によってウランやプルトニウムが核分裂し核分裂生成物ができると、その一部にクリプトン85などの気体物質が含まれています。この気体物質の発生はウラン燃料よりMOX燃料の方が多く、運転とともに燃料被覆管内にたまる量も多くなります。その結果、燃料棒内の圧力が高くなり対策を講じないと破裂する事故につながります。MOX燃料棒ではガス溜めの体積を多くし最初に封入するヘリウムガスの圧力もウラン燃料棒の半分ほどに下げて対処することになっています。それでも1つ少ない燃焼サイクルの段階でウラン燃料棒の最終サイクルとほぼ同じ内圧に達します(配付資料のず7参照)。初期封入圧をウラン燃料棒より低くすることは、燃料の温度をより高くすることと、外圧に押されて変形する危険を増やします。一つの安全対策のために別の面で安全余裕を削るというやり方といえます。
MOX燃料管内で増加した放射性の希ガスは外に漏れる危険性はないのか、どう検証していますか?[女川]
[出光講師]
燃料棒の破損(ピンホール)は数万本にひとつ程度発生しますが、漏れが発生すれば、原子炉冷却水のモニターで検出することができます。また、ピンホールからの漏れはわずかで、燃料棒の大きな破損につながることはありません。漏れた希ガスはしばらく冷却水中に留まりますが、その後、ガス処理系の吸着剤に吸着されます。その一部は原子炉から放出されることがありますが、環境中の放射能濃度に影響を与えるものではありません。
[小林講師]
気体状の核分裂生成物(放射性の希ガス)は、常時、微量に漏れています。それらは完全に捕獲することはできず、高い排気筒から環境中へ放出されます。燃料棒の破損事故が起こると放出される量も増えます。
燃料集合体の配置、割合の定義を教えてください。[牡鹿]
[東北電力]
燃料集合体の配置とは、原子炉内における燃料集合体の並べ方のことです。MOX燃料を装荷した炉心においては、MOX燃料とウラン燃料の配置を工夫することにより、出力の均一化を図っています。
燃料集合体の割合とは、「原子炉全体の燃料の重量」に占める「MOX燃料の重量」の割合のことです。なお、東北電力では、女川3号機の燃料集合体560体のうち、使用するMOX燃料の体数を228体以下(「原子炉全体の燃料の重量」に占める「MOX燃料の重量」の割合にして1/3以下)としています。
原子炉の制御性への影響
プルサーマルの安全性について、原子炉の停止機能とMOXペレット温度について、現行のウランだけの原発と比較すれば、どちらも余裕が低くなっている。安全余裕が低下している:大丈夫なのか?[女川]
[出光講師]
原子炉を止めるための安全余裕は十分に満たしています。ペレット温度についても融点よりも十分に低い温度に保たれています。
[小林講師]
プルサーマルは、これまでウラン燃料だけの炉心が持っていた安全余裕をいろんな点で削ります。原子炉停止機能の低下やMOXペレット温度の上昇もそれらの一つです。安全余裕は、平常運転時ではなく異常時に重要な安全対策のです。異常から事故への拡大防止や事故の進展防止に安全余裕が役立つことがありますが、それを削ると防止できる事故も防止できなくなる可能性がでてきます。推進する側では、事故を想定しても安全が保てることを国の安全審査で確かめているとされていますが、あらかじめ想定されている事故シナリオに対応できるのは当然で、本来事故というのはに予期せぬ事態によって起こるものです。過去の事故すべてがそれを証明しています。安全余裕はそのような事態に対する備えで、特に原発のように一度大事故が起こると被害が大きいものでは削っていいものではありません。
フランスでMOX燃料を使うときは、日本では原子炉の改修工事をする予定は全くないということですね。そうすると、フランスで増やすMOX使用と日本は同条件ではないということですね?[女川]
[出光講師]
日本の原子炉は、非常に安全に作られており、もともと制御棒の数が多く、現在の設定であれば改修の必要はないということです。女川で使用されている原子炉にも多数の制御棒が備えられており、制御棒を増やさなくても、停止や運転制御ができるということです。
[小林講師]
フランスは、制御棒を追加する改造工事を行った特定の型の原発でのみプルサーマルを実施しています。日本は一切改造は行わず、そのままの炉で実施されます。MOX燃料のプルトニウム含有率も、最初5.3%の低い所から始め、経験を積んで少しづつ上げています。現在は試験的に8.65%を一つの原発だけで試みている段階です。日本のように、最初から世界に例のない13%を規制値にするようなやり方はしていません。
作業時の被ばく
MOX燃料は、ウラン燃料と同じ扱い方でいいの?[女川]
[東北電力]
新燃料の表面の線量当量率は、ウラン新燃料で0.04mSv/h、MOX新燃料で2.7mSv/hという解析例があり、MOX新燃料がウラン新燃料に比べ高いですが、作業時の被ばくという観点から適切な被ばく低減対策((1)遮へい体の設置、(2)燃料集合体からの距離の確保および燃料近辺での作業時間の短縮[遠隔カメラを使用した遠隔操作等])をとることにより従来のウラン新燃料と同等に取り扱うことができます。
プルサーマルを実施すると、今以上に定期点検作業員の被ばくが増えると言われています。東北電力は、住民説明会でそんなことはない、現在の原発(ウラン使用)とかわらないと説明されましたが、どちらが本当ですか。[女川]
現場での労働者の被ばくは増えないのか?[牡鹿]
[出光講師]
使用済み燃料につきましては、内包されている放射能量というのは、ウラン燃料、MOX燃料で、変わりません。そして取り扱いも今のウラン燃料と同様に扱われるということになります。九州電力、四国電力、それから中部電力では、既にMOX燃料を受け入れておりますが、それに伴う被ばく量の上昇というのは報告されておりません。
[小林講師]
作業時の被曝でプルサーマルが特に問題になるのはMOX燃料の製造時、新燃料の運搬時、原発では積み降ろしや移動、貯蔵プールへの装荷など人手で行う取扱時です。MOX燃料とウラン燃料とでは放射能の強さが大きく違います(配付資料の図9を参照)。被曝にとって大事な放射線は中性子とガンマ線ですが、そのうち中性子は、ウラン燃料の発生数を1としますとMOX燃料は約10000倍、ガンマ線は約20倍とMOX燃料の方がずっと多く出します。MOX燃料取扱作業は十分注意しないと被ばく量が増える恐れがあります。
MOX燃料では、制御棒がききにくくなると言いますが、地震の際、緊急自動停止は確実に出来るのでしょうか[牡鹿]
[出光講師]
制御棒が挿入されればMOX燃料であってもウラン燃料と同様に停止することができます。同様の制御棒駆動機構を持つ東京電力柏崎の原子炉では所定の時間内に制御棒が全数挿入され安全に停止されています。
[小林講師]
制御棒装置の耐震性は、想定された地震の大きさを前提に設計されています。したがって、緊急自動停止が確実にできるかどうかは設計で想定された地震の正しさにかかっています。しかし、最近頻発する地震の経験や全国の原発耐震性の見直しで明らかになったように、それまでの想定地震がほとんどの原発で甘すぎたことが判明しました。日本は世界で有数の地震国で、現在地震の活動期に入っています。地震学が発達したと言われる現在でも、いつどこで、どれだけの大きさの地震が起こるかあらかじめ知ることができません。想定を越える地震時に緊急自動停止が確実に機能するとは断言できません。
地震によるプルサーマルへの影響
プルサーマルを実施すると、地震の際に危険性が増すのではないか。[牡鹿]
[東北電力]
プルサーマルで用いるMOX燃料は、ウラン燃料集合体と基本的な構造が同一であり制御棒挿入性及び燃料の強度は変わりません。また、原子炉施設の変更を伴わないことから、プルサーマルの実施により、耐震安全性に影響を与えるものではありません。
近い将来起こるであろう宮城県沖地震がもし起こった場合、プルサーマルをしても大丈夫なのでしょうか?(安全性の面で)[牡鹿]
宮城県沖地震、プルサーマルの実施で本当に安全なのか。[女川]
[東北電力]
東北電力は2005年の地震で得られた知見を反映して、想定宮城県沖地震、更に大きな安全確認地震動を設定し、これらに対して、十分安全であることを確認しています。この確認結果については、国の耐震・構造設計小委員会での審議を経て、妥当と評価されています。
また、津波についても、想定される最大規模の津波に対して安全であるように敷地の高さが設定されています。
更に、東北電力では、国が改訂した新しい指針に対しても、新たに地質調査を実施した上で、基準地震動を策定し、主要施設の安全性を確認しており、現在、国の耐震・構造設計小委員会で審議されているところです。
宮城県沖地震が想定されるのに推進する訳は?[牡鹿]
[東北電力]
東北電力は2005年の地震で得られた知見を反映して、想定宮城県沖地震、更に大きな安全確認地震動を設定し、これらに対して、十分安全であることを確認しています。この確認結果については、国の耐震・構造設計小委員会での審議を経て、妥当と評価されています。エネルギー資源の乏しい我が国においては、エネルギーの安定供給の確保やプルトニウムの平和利用の観点からプルサーマルは必要であり、国の原子力利用の基本的な考え方ともなってます。
東北電力としても、安全確保を最優先に、原子燃料サイクルを積極的に推進していくこととしており、女川3号機においてプルサーマルを実施することとしています。
事故時の周辺への影響
万が一事故が起きたときは、ウラン燃料とプルサーマル燃料の場合で被害は、どれほど違ってくるのか。[女川]
ウランを燃料とする今の女川原発で大規模な放射能放出事故が起きた場合に比べて、プルサーマル中に大規模な放射能放出事故が起きた場合、住民への危険性は更に高まるのではないか。ちなみに、石巻市の原子力防災計画では、例えばここ旧牡鹿町について言えば、大規模な原発事故が起きた場合に備えて、女川原発から最も遠い17km先の集落を含む全域住民の旧牡鹿町外への避難計画がつくられている。[牡鹿]
プルトニウムは、原爆の原料ですし、放射能もすごいです。万が一事故が起きた場合、ふつうのウランを使った原発の何倍くらいの被害が出るのでしょう?[牡鹿]
[出光講師]
プルトニウムを入れる、入れないでは、内蔵する放射能量には大きな差はありません。ヨウ素などについても1%以内ということで、ほとんど変わらない。今のウラン燃料の運転と同様に十分に安全に行えば、被害は起こらないということです。
[小林講師]
国の安全審査で想定する事故レベルでは、ウラン燃料だけの場合とプルサーマルとで影響はほとんど変わりません。ただし、安全審査の想定を越える大事故が起こる可能性は、技術的にも過去の実例からも否定できません。その場合、両者の違いに注目するよりも、ウラン燃料だけであろうとプルサーマルであろうと大事故が起こればいずれにしても被害は甚大で、両者の違いは問題にならないでしょう。なお、苛酷な事故でも大きな爆発などを想定すればMOX燃料の方が影響が大きくなる可能性もあります。
炉心事故が起きたらの処置を考えているのか。[女川]
[東北電力]
原子力発電所は、異常が発生した場合でも、異常の拡大を防止し、放射能による外部への影響が無いよう十分な安全設計を実施しています。また、事業者として「防災計画」と策定し、防災体制、資機材の整備等を行うとともに、万一の事態を想定して、毎年、訓練を県や女川町、石巻市と連携して行っています。
[宮城県]
国、宮城県、女川町、石巻市および事業者は、「原子力災害対策特別措置法」に基づき、「防災計画」をそれぞれ策定し、防災体制、資機材の整備等を行うとともに、万一の事態を想定して、毎年、訓練を行っており、万が一、原子力災害が発生した場合は、「防災計画」に従い、迅速な通報連絡を行うとともに、国、事業者などと連携し、災害発生に至った原因の除去、災害の拡大防止、復旧対策にあたることとしています。

お問い合わせ先

原子力安全対策課事故被害対策班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号13階北側

電話番号:022-211-2340

ファックス番号:022-211-2695

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