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松くい虫被害は正式名称「マツ材線虫病」といい,夏から秋にかけてマツの葉が急速に褐変し枯死する被害です。
宮城県では昭和50年に石巻市で初めて確認されて以来,県内全市町村に拡がりました。
被害量は,平成8年度の28,986立方メートルをピークに減少傾向となっており,令和3年度は9,305立方メートル(前年度比92%)となっています。
松くい虫被害は,「マツノマダラカミキリ」に寄生する「マツノザイセンチュウ」がマツの樹体内に入ることで通道障害(水を吸い上げる能力が阻害)を起こし,枯れる仕組みになっています。
マツノマダラカミキリはマツの若い枝の樹皮を食べるので,その際,かみ傷からマツノザイセンチュウがマツの体内に侵入します。また,マツノザイセンチュウにより弱ったマツにマツノマダラカミキリは産卵し,成長すると翌年の6月頃に体内に多数のセンチュウを寄生させた状態で羽化脱出し,被害が拡大します。マツノマダラカミキリはメス一匹あたり約100個の卵を産卵するとも言われてます。
出典:(社)全国林業改良普及協会「松くい虫からみんなでマツを守ろう!」
松くい虫被害の対策には,「予防」と「駆除」と「再生」があります。
「予防」は守るべきマツが枯れないようにするため,薬剤の散布や幹への薬剤注入を行うことで,マツノマダラカミキリの殺虫やマツノザイセンチュウの侵入・増殖を防止する効果があります。
「駆除」は被害を受けて枯れたマツを伐倒,薬剤処理等をすることにより,被害木内のマツノマダラカミキリを殺虫し,羽化脱出を防ぐことから翌年の被害拡散を防止することができます。
「再生」はマツノザイセンチュウ被害に強い抵抗性のあるマツを植栽し,景観回復を図ることです。特別名勝「松島」地域など,マツが重要な景観形成に寄与している地域では,松枯れ跡地におけるマツ林の再生は重要な取組です。また,抵抗性マツの植栽は産卵リスクを減らすことにもつながります。
県内の予防対策として薬剤散布(空中散布,地上散布)及び樹幹注入による取組を行っています。
薬剤散布はヘリコプターにより散布する空中散布とスパウダーやホースにより散布する地上散布があります。マツノマダラカミキリが羽化脱出する前の6月~7月上旬までに散布することで,健全なマツを食害するカミキリを殺虫する効果が期待できます。薬剤散布に当たっては,安全に配慮し,散布区域周辺の方への周知や注意喚起に努めています。
樹幹注入とはマツの体内に直接薬剤を注入することでマツノザイセンチュウの侵入・増殖を防止する効果が期待できます。1本1本に薬剤を注入するため単木単位で予防をすることができますが,その分コストが高いので,対策をとるべきマツを精査することが重要です。1度の注入で5~7年程度効果が持続します。
左からヘリコプターによる空中散布,スパウダーによる地上散布,樹幹注入の写真です。
県内の駆除対策として伐倒駆除の取組を行っています。
伐倒駆除は伐ったマツをビニールで被覆し,薬剤でくん蒸処理する方法,搬出しチップ処理する方法,炭化処理する方法が主となっています。景観対策のためにヘリコプターによる搬出を行っている事例もあります。
被害量を減少させるためには,当年度に枯れたマツを当年度中に,遅くともマツノマダラカミキリが羽化脱出する6月上旬までに駆除することが必要となります。漏れの無い駆除を実施するために県・市町村・森林組合や森林所有者等で被害木調査を実施しており,被害減少に努めています。
左からヘリコプターによる被害木の搬出,薬剤くん蒸のための集積,薬剤くん蒸後の写真です。
県内の再生対策として,松枯れ跡地における抵抗性マツの植栽の取組を行っています。
抵抗性マツとはマツノザイセンチュウに対する強い抵抗力を持っているマツのことをいい,通常のマツよりも枯れにくい特徴を持っています。特別名勝「松島」地域だけでなく,海岸林のマツ林再生にも活用されています。
宮城県での抵抗性品種の開発は,平成4年度から開始されました。
県内の松枯れ激害地で生き残ったマツから,穂木を採取して抵抗性候補木として選抜します。選抜した穂木を,接ぎ木により3年間育て,マツノザイセンチュウを人工的に接種し,生存率90%以上で一定の基準を満たした苗木を一次合格(宮城県実施)として選抜します。さらに,国立研究開発法人森林総合研究所林木育種センターで2次試験行い,合格したものが抵抗性品種として認定されます。現在,アカマツで6品種,クロマツで11品種が認定されています。
左からマツノザイセンチュウの接種試験,抵抗性マツの採種園の写真です。
松くい虫被害対策を効率的に行うため,対策対象松林における事業推進計画(=「宮城県松くい虫被害対策事業推進計画」)を策定しています。計画期間は5年間となっており,定める事項は以下のとおりです。
宮城県防除実施基準,高度公益機能森林又は被害拡大防止森林の区域,樹種転換促進指針,地区防除指針又は地区実施計画の変更や,被害発生状況その他の情勢の変化により,必要が生じたときは,計画を適宜変更することとしています。
現在は,宮城県松くい虫被害対策事業推進計画(第6次)(計画期間:令和4年4月1日から令和9年3月31日)に基づき,事業を行っています。
宮城県松くい虫被害対策事業推進計画(最新版)
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