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宮城県で問題となる稲作害虫5種について,発生予察法や防除法について検討した。イネヒメハモグリバエは現在一般的な5月上旬から中旬の田植時期の範囲では,田植が早いほど被害が大きかった。また,例外的に遅い6月上旬に田植された場合も被害が大きかった。成虫の発生消長を調べると,4月下旬と6月上旬に発生のピークを示したことから,5月初めや極端に遅い移植は,成虫の1回目あるいは2回目の発生時期と一致して多発しやすいと結論した。1950年代以降の発生面積率の増減も,成虫発生時期と田植時期の一致または不一致により説明できた。イネドロオイムシは幼虫加害時期の年次変動が大きいが,それは越冬後成虫の越冬地からの離脱と水田侵入が,温量ではなく高温日の出現によって誘導されるためであることを明らかにした。また,水田飛来後の分散は温暖で風の穏やかな条件で促進された。侵入害虫・イネミズゾウムシは予想されたよりも被害が少なかったため,田植時期と関連させて被害解析を実施したところ,宮城県で一般的な5月上旬の田植では要防除水準(5%減収レベル)は株当たり約6個体で,同0.5個体程度とする西南暖地に比べ明らかに高かった。西南暖地に比べ寒冷なため成虫の活動開始は遅い反面,田植が早い宮城県では生育が進んだイネを加害するため,被害は大幅に軽減されると考えられた。また,寒冷地では越冬後成虫の水田侵入は,飛翔ではなく歩行が主となることを見いだし,これを利用して育苗箱施用剤の処理苗を水田周縁部に移植するだけで,防除が可能であることを示した。イチモンジセセリの越冬幼虫は,寒冷地での生存が困難視されるが,その次世代である第1世代幼虫が1990年の6月から7月にかけて,県内の広い範囲で認められた。発育に必要な有効積算温度を遡ることによって産卵時期を推定したところ,西南暖地の発生時期と大差なかった。また,宮城県における冬季の気温と発生程度にも相関がないことから,第1世代幼虫の発生は温暖な地域から飛来した成虫に由来すると結論した。ツマグロヨコバイは,西南暖地ではピーク世代密度が安定しているが,東北や北陸では時に大発生が起こる。個体群動態の地域性を,全国の誘殺記録を比較することにより検討した。年間誘殺数の変動係数は,トラップが設置された緯度が高いほど大きく,本種の個体数変動はわが国の南の地域では小さく,北に向かうほど大きくなることが明らかになった。また,多発したときの個体数は宮城県が位置する北緯38度付近で最も高くなり,それより北上すると変動性はさらに増すものの,高密度にはならなかった。世代間増殖率の密度依存性を解析し,西南暖地では密度に依存した増殖率の低下が起こるのに対し,東北地方では密度依存性は小さく,前世代の密度がそのまま後の世代に反映されていた。以上5種の稲作害虫の検討結果を踏まえて,(1)寒冷地での発生特徴と地域性,(2)要防除水準設定の意義,(3)育苗箱施用法と減農薬防除の3点について詳細な考察を行った。
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寒冷地における稲作害虫の発生予察と総合的管理に関する研究(PDF:5,773KB)
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