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掲載日:2017年2月17日

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第三百五十九回宮城県議会知事説明要旨

平成29年2月17日

本日ここに第三百五十九回宮城県議会が開会され、平成二十九年度一般会計当初予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、平成二十九年度の県政運営の考え方と議案の概要を御説明申し上げます。

東日本大震災から六年が経過しようとしております。

復興は未だ途上にあり、仮設住宅には今も二万二千人余りの方々が入居しておられますが、前年の半数程度にまで減少しております。被災地の復興まちづくりは次々に完成の声が聞かれ、災害公営住宅の整備も来年度中には計画戸数の九十八パーセントが完成する見通しとなるなど、各種インフラの整備は一歩ずつ着実に進んでおります。

平成二十九年度は、宮城県震災復興計画において四年間と定めた再生期の最終年度であり、復興の一層の加速化とともに、県民の皆様と推進してきた創造的な復興を確固たるものとするため、これまで蒔いた種の萌芽を大切に育て上げることで、次の発展期につなげていく正念場の年となります。各地で復旧・復興の姿が具現化しておりますが、私は、ふるさと宮城が将来にわたって持続的発展を遂げるためには、震災復興を最優先課題としつつ、直面する高齢化や人口減少の課題解決に向けた地方創生の取組と、自立的な地域経済の構築に向けた富県宮城の諸施策を一体として推進し、従来にも増して相乗効果を高めていかなければならないものと、改めて強く感じております。このことを踏まえ、今年度が終期である宮城の将来ビジョンに関しましては、計画期間を震災復興計画の終期である平成三十二年度まで延長し、併せて必要な見直しを行うことといたしました。現行ビジョンに掲げる県政運営の理念や目指す将来像など基本的な枠組は維持しながら、復興の進展に伴って生じた新たな課題、地方創生や現下の社会情勢を反映したニーズに対応する取組を追加するなど見直しを図り、今議会に改定案を提案しているところであります。

今後も私が先頭に立ち、職員と共に一意専心、早期復興を目指すとともに、「生まれてよかった、育ってよかった、住んでよかった」と思える宮城の創造へとひた走ってまいる所存でありますので、議員各位の御理解とお力添えをお願い申し上げる次第であります。

震災復興の状況でありますが、平成二十九年度においても、防災集団移転促進事業や土地区画整理事業は確実に進む見込みであり、年度末には九割強の地区で住宅等の建築が可能となる予定であります。三陸縦貫自動車道は南三陸町の歌津インターチェンジまで延伸されるほか、気仙沼市大谷から松岩までの本吉気仙沼道路も来年度中に開通する見通しであり、沿岸部のアクセス向上によって水産業や観光業の振興が図られ、地域活性化に弾みがつくものと期待しております。また、十一月には、移転新築中の気仙沼市立病院が開院する予定となっており、地域医療連携の強化や災害対応機能の充実により、気仙沼圏域の皆様の暮らしの安心が一段と高まるものと考えております。

創造的な復興の関連では、東北初の商用水素ステーションがこの三月に業務開始となるなど、水素社会の構築に向けた取組は着実に進展しております。来年度は新たに、民間企業との協力の下、燃料電池自動車の有料貸出しの導入実証事業や、燃料電池バスの試験運行などの普及啓発事業に着手し、「東北における水素社会先駆けの地」として、水素エネルギーが県民の皆様になお一層身近なものとなるよう、積極的に施策を推進してまいります。

また、広域防災拠点については、平成三十二年度の一部供用開始を目標に、土地取得特別会計からの用地の買い戻しのほか、JR貨物に対する公共補償も進めてまいります。さらに、県内の各圏域防災拠点に配備する資機材の保管庫の整備を進めるほか、自主防災組織や防災指導員の体制強化も図るなど、大規模災害に迅速かつ的確に対応できるよう、市町村とともに地域防災力の向上に取り組んでまいります。

なお、放射性物質による汚染廃棄物につきましては、昨年十二月の時点で、焼却処理の方針に対して一部の市町村長に意見の相違が見られたことから、当面はすき込みや堆肥化等での処理を検討することといたしました。この状況を踏まえながら、改めて焼却について議論することとしておりますが、汚染稲わら等を保管する農家の負担を斟酌しますと解決は急務であり、各市町村の考え方も伺いながら、粘り強く問題の解決に当たってまいりたいと考えております。

来年度は、県内で十万人規模の大きなイベントが相次いで開催され、全国から訪れる方々に我が県の復興状況と元気な姿を御覧いただくとともに、支援への感謝をお伝えする絶好の機会と捉えております。

まず、七月から八月にかけては、全国高等学校総合文化祭及び全国高等学校総合体育大会が開催されます。全国の高校生が宮城に集い、文化芸術の祭典において日頃の成果を披露し、また、サッカー、水泳、女子バレーボールなど十一の競技で熱戦が繰り広げられます。

また、九月には全国和牛能力共進会宮城大会が開催されます。良質な肉用牛の生産に日々しのぎを削る全国の和牛産地が最も注目する大会であり、万全の大会運営はもちろんのこと、我が県の出品牛が日本一の称号に輝けるよう、鋭意努力してまいります。

さらに、七月下旬から九月上旬にかけて、「リボーンアート・フェスティバル二〇一七」が石巻市を中心に開催される予定であります。アートや音楽の力で地域も一体となって取り組む先進的な文化芸術プロジェクトは、県内に新たな交流と活力をもたらし、必ずや復興の大きな力になるものと私も期待を寄せており、積極的に支援してまいります。

また、震災復興計画の最終年に当たる平成三十二年には、「全国豊かな海づくり大会」を開催することが決定いたしました。水産県宮城の魅力、そして復興を果たした我が県の元気な姿を全国に発信できるよう、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えております。

さて、昨今の経済情勢についてでありますが、為替相場や株式市場は、アメリカの経済・外交政策に対する期待と不透明感が交錯して敏感な反応を示しているほか、加盟国離脱の影響が憂慮される欧州連合の行方や、アジアにおける地政学的な緊張の高まりなど、様々な懸念があります。国は、来年度の経済見通しについて、今年度に講じた経済対策など各種政策の推進によって雇用・所得環境が改善し経済の好循環が進展する中で、民需を中心とした景気回復が見込まれるとし、実質GDPの成長率を一・五パーセント程度と予想しております。しかし、企業業績の回復が個人消費の増加に十分結びつかず、内需拡大に不安を残しているほか、国税収入の伸びも鈍化しており、我が国の経済は楽観できない状況にあると認識しております。

本県の経済情勢につきましては、住宅投資や個人消費などに弱い動きがみられるものの、生産は持ち直しており、有効求人倍率は十か月連続で一・四倍を上回る水準を維持し、基調としては緩やかに回復しております。しかし、国の経済政策の恩恵は、県内の中小企業や農林水産業などにあまねく波及しているとは言い難く、少子高齢化、後継者難や人手不足の課題は地域に影を落としている上、復興に伴う各種需要が今後収束に向かうことから、先行きには厳しさがあるものと考えております。

このような時こそ、未来への希望の灯を輝かせることが重要であり、企業立地も含めた雇用機会の創出とともに、食材、観光資源や都市機能の集積といった本県の優位性を十分に活用した産業振興など、地域経済の活性化を一段と加速させながら、将来を担う子どもたちの健全育成と生み育てやすい環境整備をはじめ、医療、介護などの面で暮らしやすい社会づくりに向けた施策の充実が必要不可欠と考えております。このため、来年度は、乳幼児医療費助成制度の拡充や、第三子以降の小学校入学経費に対する助成制度の創設のほか、子育て支援施設の加速的整備や新たな手法を用いた医療や介護の施策にも踏み込むなど、従来にも増して積極的な施策展開を図ることとしたところであり、これら事業の実施に全力を注いでまいります。

(当初予算の編成方針)

次に、当初予算の編成に当たっての基本的な考え方を御説明申し上げます。

国の平成二十九年度予算案は、前年度同様、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算として編成され、一般会計の総額は九十七兆円を超え過去最大規模となりました。東日本大震災復興特別会計は、二兆六千九百億円が計上されており、施設復旧や高台移転等がピークを過ぎたことなどによって前年度を五千六百億円下回っておりますが、被災者支援総合交付金が引き続き確保され、復興道路等の整備には今年度を上回る額が措置されるなど、本県が必要とする事業に係る財源は概ね計上されていることから、来年度も復興事業を着実に進めることができるものと考えております。

地方財政対策は、地方自治体が一億総活躍社会の実現や地方創生の推進、防災・減災対策等に取り組みながら、安定的に財政運営を行うことができるよう、今年度を上回る地方一般財源が確保されており、一定の評価をしております。しかし、近年抑制基調にあった臨時財政対策債が増加している点は看過できず、法定率の引上げなど、特例措置に依存しない地方交付税制度本来の対応によって、持続可能な制度の確立が図られるよう、引き続き訴えてまいりたいと考えております。

平成二十九年度当初予算案は、昨年十月に策定した「平成二十九年度政策財政運営の基本方針」に基づき、最重要課題である復旧・復興施策を強力に推進するとともに、地方創生の取組や先ほど申し上げた新たに踏み込むべき暮らしの充実施策などの行政課題にも重点的に予算を配分することとして編成したものであります。

このうち震災対応分については、震災復興計画に掲げる施策を着実に推進するため、国の復興予算を最大限活用するとともに、復興基金や地域整備推進基金など独自の財源も活用し、被災者、被災企業への支援策や被災地の活性化に資する施策を積極的に予算化しておりますが、災害復旧の進展などにより今年度を一千億円下回っております。

また、通常分については、税収の伸びが鈍化し今年度を上回る額を期待できない一方で、社会保障関係費や公債費は依然、高水準に留まることなどから、徹底した既存事業の見直しや重点化を行い、新規事業は効果が高いものを厳選するなど、一層のメリハリを効かせております。なお、現在、県が担っている政令指定都市分の義務教育諸学校の教職員給与費四百七十億円が仙台市へ移管されることも、予算規模減少の一因となっております。

この結果、平成二十九年度当初予算案は、一般会計の総額で今年度当初予算を一割程度下回ったものの、震災前の一・五倍と依然大きな規模が続いており、引き続き全庁を挙げて着実な執行に努めてまいりたいと考えております。

平成二十九年度当初予算案における主な施策について、「政策財政運営の基本方針」に掲げた四つの「政策推進の基本方向」に従って御説明申し上げます。

(再生期における迅速な震災復興)

初めに、再生期における迅速な震災復興について、震災復興計画で重点的に取り組むこととした七つの主要政策に沿って順次御説明申し上げます。

第一に、被災された方々の生活再建と生活環境の確保についてでありますが、仮設住宅からの転居を支援するため、コールセンターによる物件情報の提供に加え、新たに東部被災者転居支援センターを設置いたします。

また、今後の生活が潤いと希望に満ちたものとなるよう、コミュニティの再生活動をハードとソフトの両面から支援するとともに、復興支援事業を行うNPO等に対する助成のほか、文化芸術の力による多様な活動を充実させるなど、民と官の力を結集して多角的かつ強力に地域づくりを支援いたします。なお、帰郷に関する意向が明らかでない県外避難者の方々について、調査員による戸別訪問等も実施してまいります。

第二に、地域における保健・医療・福祉提供体制の回復・充実についてでありますが、まず、地域医療では、気仙沼市立病院の移転新築のほか、基幹災害拠点病院である仙台医療センターの機能強化などを図ってまいります。

復興が進むにつれ、個々の状況に差が生じたり、新たな問題が顕在化したりすることから、むしろ今になって焦燥感や孤立感に苛まれている方もおられるのではと心配されます。このため、県内三か所に設置されている心のケアセンターの運営支援を行うほか、新たに親子滞在型施設を設置し里親委託の円滑化や家族の絆の回復に向けた支援に着手いたします。

人材確保の面では、東北医科薬科大学の医学部入学者を対象とした修学資金の貸付原資を出資するほか、沿岸部の看護師確保策として、新たにICTを活用した地域の基幹病院との連携による研修体制の整備を支援いたします。また、介護関係では、被災市町の介護事業所の職員確保を財政支援するほか、気仙沼圏域において、離職防止セミナーや専門家による訪問調査と業務改善のモデル事業を実施してまいります。

第三に、「富県宮城の実現」に向けた経済基盤の再構築についてでありますが、グループ補助金や県単独補助金、専門家による相談支援事業等により、被災企業の復興をしっかりとサポートするとともに、販路開拓や取引拡大についてきめ細やかな支援を行います。また、沿岸地域での就職サポートセンター運営などを通じ、被災者の再就職を支援するとともに、事業を創業する方に対し、商品開発や営業など広汎な用途の資金助成と併せ、専門家による指導も含めた伴走型の支援を行います。

観光振興については、平成三十二年に県内の外国人宿泊者を五十万人とする目標の下、インバウンドの促進策を更に強化いたします。台湾をターゲットとした誘客促進策に引き続き重点を置くほか、新たに首都圏や北海道など国内他地域からの外国人観光客の本県への回遊に力を入れるとともに、多言語の看板や公衆無線LANなど受入環境の整備を支援してまいります。また、民営化した仙台空港から大都市仙台、そして日本三景松島が連坦する本県の強みを存分に活用して復興観光拠点都市圏のモデル事業に取り組み、市町村や東北各県とも連携しながら積極的に誘客促進を図ってまいります。なお、松島水族館の跡地については、現在、利活用を行う事業者の公募に向けた調整を進めており、来年度に事業者を選定してまいりますが、松島湾エリアのみならず県内全域の観光交流の重要な拠点であることから、事業の初期投資に対して助成を行ってまいります。

仙台空港については、運用時間延長に係る調査検討を行うほか、空港運営会社や格安航空会社等と連携した航空需要の拡大や、二次交通の充実強化を図ってまいります。また、仙台港エリアにおいては、更なる賑わいを創出するため、立地企業などと一体となった官民連携組織を設立して各種イベントに取り組むほか、インバウンドの促進に向けた受入体制の調査検討や案内板の整備を行ってまいります。

第四に、農林水産業の早期復興についてであります。引き続き、被災した農地や漁港施設の復旧整備を急ぐとともに、農地の大区画化や漁港の機能強化を推進し、生産性の向上を図ります。

風評の払拭に向けて、各種広報媒体を通じて県産品の魅力を全国へ発信するほか、首都圏や関西圏における体感型のイベント開催や、米、牛肉、水産物など輸出基幹品目の東南アジア等での販促活動などを粘り強く実施してまいります。さらに、商品開発等に係る技術と資金の両面で支援を行うことで、被災企業の販路の開拓を後押しいたします。

また、特に売上げの回復が伸び悩んでいる水産加工業者に対して、新たに海外販路の拡大に向けたHACCPの認証取得を支援するとともに、商品を集約し共同で販売しようとする中小の加工業者への補助制度により、我が県の強みである水産加工業の底上げを図ってまいります。

全国和牛能力共進会の開催は、本県の畜産業の振興にとって千載一遇の機会であり、品質向上の取組はもとより、風評払拭、消費拡大やブランド力強化を積極的に推進するとともに、優良雌子牛の導入等に対する補助を拡充し、生産基盤の強化を図ります。

第五に、公共土木施設の早期復旧等についてでありますが、災害復旧については、今年度に予算のピークを迎えた河川、海岸、港湾などで復旧工事が本格化していることから、来年度も、他自治体からの応援や任期付職員の確保などによって可能な限りの人員を配し、事業の早期かつ円滑な進捗に全力を挙げてまいりたいと考えております。

道路については、三陸縦貫自動車道の整備を促進するほか、来月、橋梁本体が架設され、その全容がいよいよ姿を現します大島架橋について、地域の悲願達成に向け、平成三十年度の事業完了を目途に進捗を図ってまいります。また、みやぎ県北高速幹線道路のほか、国道三百九十八号石巻バイパス、県道岩沼蔵王線、石巻女川線や女川牡鹿線などにつきましても、更に建設改良を進めてまいります。

国際コンテナ貨物取扱量が二年連続で過去最多を更新した仙台塩釜港につきましては、一層の利活用の促進を図るため、新たに高砂コンテナターミナルの拡張に着手いたします。

公園関係では、東松島市の矢本海浜緑地について、平成三十一年度の開園を目指し、津波対策を兼ねた築山や管理棟などの整備を進めてまいります。また、石巻南浜津波復興祈念公園は、用地の取得を進めるとともに造成工事にも着手する予定であり、国及び石巻市と緊密に連携しながら整備を推進してまいります。

第六に、安心して学べる教育環境の確保についてでありますが、気仙沼向洋高等学校と農業高等学校の復旧については、校舎のほか実習棟など実業高校として必要な施設設備の整備も含め、平成三十年度から新校舎において授業が開始できるよう、鋭意、準備を進めてまいります。

震災が子どもたちの心に大きな影響を及ぼし、不登校やいじめにつながることが今なお懸念されるほか、復興の進展とともに取り巻く環境も多様化、複雑化しております。このため、スクールカウンセラーの配置や登校支援ネットワークによる訪問指導などのほか、スクールソーシャルワーカーによる学校や家庭への支援を拡充するとともに、子どもの心のケアハウスについて、新たに五つの市町を対象に加え、設置運営の取組を支援してまいります。

第七に、防災機能と治安体制の回復についてであります。六年前の震災直後、多くの方々が自発的に助け合い、困難な状況を耐えしのいだ避難所の光景を目の当たりにし、私は日頃から地域の結びつきを高め、災害に備えることの必要性を胸に深く刻みました。これを踏まえ、地域防災力の総合的な強化に着手することとし、来年度は、市町村と連携し、自主防災組織の立ち上げや活性化を図るモデル事業を展開するほか、防災資機材の購入経費を助成いたします。また、防災教育の面では、多賀城高等学校を中心とした防災ジュニアリーダー養成研修を行うとともに、児童向けの防災啓発書籍を作成し、県内のほか全国の小学校や公立図書館に配布する予定としております。さらに、震災の教訓を活かしながら、創造的な復興と持続的な発展を担っていくための人材の育成と定着が極めて重要であることから、宮城大学が新たに取り組む地域復興に貢献する人材教育を積極的に支援してまいります。あわせて、県内全ての大学等が加盟する「学都仙台コンソーシアム」による復興大学の活動が一段と充実するよう支援してまいります。

震災の風化が憂慮され、記憶や教訓の対外的発信や伝承の重要性がますます高まる中、今後の防災・減災を進めるためにも、行政、教育研究機関、企業やNPO等の多様な主体が、これまで以上に連携と協力を図っていくことが求められております。このため、有識者からの意見聴取などを通じ、伝承の在り方に関する検討に着手いたします。

復旧を進めております気仙沼合同庁舎については今年の夏、また、石巻合同庁舎は来春の建築工事完了を目指し、着実に整備を進めます。被災した警察施設では、南三陸警察署について、平成三十三年度の供用開始を目標に設計に着手いたします。また、野蒜や牡鹿など十一か所の交番・駐在所について設計や工事を進めるとともに、復興まちづくり等の進展に併せ、信号機や交通標識の整備を行ってまいります。

(産業経済の安定的な成長)

次に、産業経済の安定的な成長についてであります。先ごろ、ウレタン発泡製品等製造の大手企業が栗原市への工場進出を決定いたしましたが、雇用を創出し産業の高度化や地域経済の活性化につながる企業立地について、経済の立て直しが急務である被災沿岸部はもとより、集積が進んでいる内陸部でも更なる進展が図られるよう、引き続き積極的に推進してまいります。

また、来年度は、県内企業の技術力や競争力の向上施策も意欲的に推進することとしております。まず、多様な活用可能性を秘める次世代素材として脚光を浴びるセルロースナノファイバーについて、産学官の連携により、用途開発を目指した研究会の開催や認知度向上に向けたセミナーなどを実施し、県内企業のレベルアップを図ってまいります。さらに、産業用として急速に活用領域が拡大している三次元プリンターに関し、試作や製品開発に向けた県内企業の活動を支援するとともに、エンジニアの育成や技術の普及促進にも取り組んでまいります。

県内中小企業の収益力の強化については、技術力の向上や国内外の市場動向を的確にとらえた経営戦略の構築のほか、研究開発や生産性の向上を支援してまいります。さらに、理工系学生の県内定着に向けた新規施策や首都圏の学生を対象としたインターンシップ、小学校から大学までの段階に応じたキャリア教育の推進など、人材育成も充実してまいります。販路の拡大の面では海外展開にも注力することとし、近年経済成長が著しいベトナムをはじめとする東南アジアを対象に県産食品の売り込みを行うほか、巨大市場である中国への足掛かりとして、上海や大連で商談会を開催いたします。加えて、産業振興や技術開発、地域経済の活性化等に大きな波及効果が見込まれる放射光施設等の誘致についても、地元経済界や各大学等と連携しつつ、腰を据えて取り組んでまいります。

また、今年は我が県の礎を築いた伊達政宗公の生誕四百五十年に当たりますことから、郷土の輝かしい歴史の再発見や観光振興につなげるため、ロゴマークを定めて様々な形でプロモーション活動を推進してまいります。

待望のコメの新品種「だて正夢」は、政宗公のように国内外にその名がとどろき、米どころ宮城の再興が成就する願いを込めて名付けられたものであり、玄米食向け品種である「金のいぶき」共々、生産から流通販売までを網羅した戦略の推進により、ひとめぼれ、ササニシキと並び立つブランドの確立に全力を注ぐとともに、これら県産米の一層の消費拡大を図ります。また、全国でも産出額が上位のイチゴやキュウリなどを重点振興品目と位置付け、生産から販売までの一貫した支援により、トップブランドへと育成してまいります。六次産業化の取組では、加工機械等の整備と事業計画の策定等を併せた伴走型支援を新たに行うほか、販路拡大を念頭に、専門家による開発商品の磨き上げや販売戦略の立案などを支援いたします。

林業分野では、公共建築物への木材の利用拡大に向けた事業者講習会の開催や技術開発を支援するとともに、近年、関心が高まっているCLT工法による建築物に対する助成制度を創設し、県産材の需要拡大を図ります。さらに、老朽化している大衡村の林業技術総合センターの本館棟について、CLT工法による建替えに着手いたします。水産業では、漁業の担い手確保に引き続き力を入れるほか、新たな特産品として期待される「伊達いわな」の供給体制の確立と販売促進を図ってまいります。

(安心して暮らせる宮城)

次に、安心して暮らせる宮城についてであります。子ども子育て分野では、乳幼児医療費助成制度の拡充や小学校入学準備支援制度の創設のほか、新たに金融機関と連携した子育て世帯への低利融資制度を創設するとともに、民間企業による事業所内保育施設の整備支援など、待機児童解消の取組を加速いたします。さらに、様々な事由により課題を抱える子どもや家庭に対し、学習支援事業に加え子ども食堂、フードバンクの活動を推進するなど、子育て家庭への支援策を一段と充実いたします。

介護分野では、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、災害公営住宅やマンションなど既存の集合住宅に見守りや介護、多世代交流等の機能を付加するための調査検討に着手し、中長期的視点からサポート体制の構築を探ってまいります。また、人材確保の面では、外国人介護人材について介護福祉士資格の取得支援や事業者向けの意識啓発を行うほか、就労環境の改善のため、見守りなどの支援機器や人工知能を組み込んだコミュニケーションロボットなど介護機器の導入に対する助成を新たに実施いたします。

あわせて、現在実施している小児救急電話相談に加え、仙台市と連携して大人を対象とした夜間休日の救急電話相談事業を新たに開始し、救急医療の適正利用の推進に努めていくほか、県立障害者支援施設船形コロニーについて、老朽化等による建替のための設計を行います。

なお、循環器・呼吸器病センターにつきましては、県北地域の医療体制を将来にわたって維持していくため、平成三十一年度から栗原中央病院を中心とした地域の基幹病院に医療機能を移管することといたしました。来年度は、栗原中央病院敷地内に整備する結核病棟の設計を行うほか、今議会には県立病院機構の関連議案も提案しているところであり、地域医療体制の向上に向け、手続を着実に推進してまいりたいと考えております。

警察関係では、依然として大きな社会問題である特殊詐欺について、CMやダイレクトメールによる注意喚起を行い被害の防止に努めるほか、平成三十一年度の供用開始を目指し(仮称)若林警察署庁舎の建設に着手いたします。

教育分野では、震災以降の人口動態や地域の在り方が大きく変化していることを踏まえ、生徒数の将来推計なども勘案しつつ、平成三十一年度を始期とする次期の県立高校将来構想の策定に着手いたします。狭隘化の解消が急務である特別支援学校に関しては、名取支援学校の分校を名取市立不二が丘小学校に設置するための設計を行うほか、現在、病弱者教育を行う西多賀支援学校について、知的障害者の受入にも対応できるよう改修工事を行ってまいります。また、英語力向上とグローバル人材の育成を目指し、新たに仙台市を除く公立の全ての中学二年生を対象に英語能力測定テストを実施いたします。さらに、私立学校に対しては、運営費の補助単価を引き上げ、授業料軽減補助なども継続するほか、特別支援教育活動に係る助成を新設し、多様な教育ニーズへの対応を支援してまいります。

史実に忠実に復元され、文化的価値の高いサン・ファン・バウティスタにつきましては、先人の偉業を末長く継承できるよう、デジタルアーカイブによる記録の整備を行ってまいります。開館から三十五年が経過し、老朽化が進む宮城県美術館については、国内有数との評価に相応しい施設設備を維持していくためのリニューアルの準備を入念に進めており、来年度は基本方針の策定を行います。また、多賀城創建千三百年に当たる平成三十六年に向け、多賀城市と連携しながら、古代の政庁南大路などの復元整備に係る設計に着手いたします。

東京オリンピック・パラリンピックについては、我が県で開催される喜びを県民の皆様と分かち合い、復興を世界にアピールできるよう、最大限協力してまいりたいと考えており、気運醸成を図るとともに、宿泊施設や交通などの民間事業者を交えた組織づくりに加え、会場周辺や観光スポット等で案内を行うボランティアに係る基本計画の策定に向けた調査に着手するなど、着実に準備を進めてまいります。さらに、ホームページやパンフレットの作成により、事前キャンプを誘致する市町村を支援してまいります。

(美しく安全な県土の形成)

次に、美しく安全な県土の形成についてであります。平成二十七年の豪雨被害を受けて重点的に進めている災害に強い川づくりについては、計画を一部前倒しするなど早期の整備を図るとともに、県内各市町村の土砂災害警戒区域の指定に向けた基礎調査を加速いたします。さらに、蔵王山及び栗駒山の火山防災を強化し、住民や観光客の皆様のなお一層の安全性向上に努めてまいります。

また、県有施設の計画的な維持管理については、今年度に策定した公共施設等総合管理方針に沿ってより的確な更新や補修に努め、施設の維持に必要なトータルコストの低減や長寿命化を図ってまいります。

環境分野では、小規模火力発電所の設置計画が具体化している状況を踏まえ、大気汚染測定器の増設経費を計上し、県民の皆様に安心していただけるよう、監視体制を充実いたします。また、エネルギー源の多様化を図るため、未利用で大規模な再生可能エネルギー源として期待される洋上風力発電等に係る導入可能性調査を進めるほか、農作物被害が顕著となっている野生鳥獣の対策について、新たに地方振興事務所に指導員を配置し適正管理を推進してまいります。

以上、施策の主な内容について御説明申し上げましたが、平成二十九年度の当初予算規模は、一般会計で一兆二千二百四十九億六千二百余万円、総計で一兆五千七十七億六千五百余万円となります。財源の主なものとしては、県税三千五十四億円、地方交付税二千三百四十九億円、国庫支出金二千四百三十億二千八百余万円、繰入金二千四百六十二億四千三百余万円を計上し、また、臨時財政対策債及び借換債を含め県債一千九百四十六億四百余万円を発行することにしております。

次に、予算外議案については、条例議案十五件、条例外議案六十五件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。

まず、条例議案でありますが、議第十六号議案は、今後二年間にわたり知事等の給料を削減しようとするもの、議第十七号議案は、国民健康保険の都道府県単位化に向け、運営に係る重要事項を審議するため、協議会を設置しようとするものであります。また、議第十八号議案は、警察職員及び学校教職員の定数を改定しようとするもの、議第二十四号議案、議第二十五号議案、議第二十八号議案及び議第三十号議案は、各種使用料及び手数料を新設及び改定等しようとするもの、議第二十六号議案は、知事の権限に属する事務の一部を新たに市町村が処理できるようにするものであります。

次に、条例外議案でありますが、議第三十一号議案は、公の施設の指定管理者を指定することについて、議第三十三号議案ないし議第三十七号議案は、宮城の将来ビジョンなど四つの基本的な計画の策定等について、議第三十八号議案は、包括外部監査契約の締結について、議第三十九号議案は、東京電力福島第一原子力発電所事故に係る和解について、議第四十号議案ないし議第四十二号議案は、先ほど述べましたように、循環器・呼吸器病センターの医療機能の移管等に係る地方独立行政法人宮城県立病院機構の定款及び中期計画の変更などについて、議第四十四号議案ないし議第六十三号議案は、工事請負契約の締結について、議第六十四号議案ないし議第九十三号議案は、工事請負変更契約の締結について、議第九十四号議案及び議第九十五号議案は、市町村受益負担金について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。

以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。

お問い合わせ先

広報課企画報道班

宮城県仙台市青葉区本町3丁目8番1号

電話番号:022-211-2281

ファックス番号:022-263-3780

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