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令和7年6月12日
第396回宮城県議会知事説明要旨
本日ここに第396回宮城県議会が開会され、提出議案を御審議いただくに当たり、最近の県政の動きと議案の概要を御説明申し上げます。
説明に先立ちまして、ただいま議長から伝達されましたとおり、ゆさみゆき議員におかれましては、県議会から在職30年議員顕彰をお受けになりました。県民の皆様とともに心からお祝い申し上げ、多年の御功労に対しまして深く敬意を表するものであります。なお一層御自愛の上、県勢発展のため今後とも御活躍いただきますよう御期待申し上げます。
それでは、御説明申し上げます。
初めに、最近の経済情勢についてであります。
先月公表された国の月例経済報告によれば、国内景気は緩やかに回復しているものの、アメリカの通商政策の影響による下振れリスクが指摘されております。今年の春闘では、昨年を上回る水準の賃上げとなるなど我が県経済にも明るい見通しを与える要素はあるものの、物価上昇の継続やGDPの伸び率が4期ぶりにマイナスとなる中、国際情勢が我が県に与える影響に強い危機感を抱いております。今回のアメリカの通商政策の変更を受け、その影響の顕在化を待つことなく、4月4日に資金繰り等の相談窓口を設置し、関係機関との情報交換や全国知事会を通じた国への緊急要望などの対策を早急に講じたほか、アメリカ政府による関税措置に対応するための新たな融資制度を近日中に設け、資金繰りの面からも県内中小企業の安定経営に資するよう支援してまいります。
また、国においては、本格的な経済対策予算の編成に先立ち、今回の関税措置や物価高への対応に万全を期すため、予備費の使用を先月27日に閣議決定したことから、現在、これに対応する補正予算案の調製を進めており、まとまり次第、今議会に追加提案したいと考えております。
先行き不透明な状況は、当面継続するものと思われますが、まずは、アメリカ政府の動向を始めとした国際情勢と我が県の経済動向に細心の注意を払うとともに、今後の国の対応にも留意しながら、局面の変化に応じて適時適切に対策を講じてまいります。
昨年10月1日現在の国の人口推計によりますと、日本の総人口は14年連続で減少し、外国人を含む総人口は前年から約55万人の減少となりました。特に、自然減は18年連続、15歳未満の人口の割合は過去最低となる一方、75歳以上の人口の割合は過去最高となりました。
少子高齢化の急激な進行は我が県においても例外ではなく、今後の持続的な発展に向けては、まずは子どもを産み・育てやすい社会づくりが最も肝要であり、「未来への確かなメッセージ『要』予算」と銘打った今年度当初予算においても、人口減少への対応に最優先で取り組むこととしております。加えて「DXによる変革みやぎ」と「半導体をはじめとする成長産業の誘致・育成」を重点項目として掲げているところであり、それぞれの施策の進捗について、項目に従って御説明いたします。
第1に、人口減少対策については、不妊検査費用の助成を拡充し、第2子以降も助成対象とすることで、妊娠・出産を望む方々の希望を叶えられる環境づくりを進めるとともに、子育てしやすい環境を目指し、県内企業における男性の育児休業取得の促進と期間の長期化を促す新たな施策として「宮城県男性育休取得奨励金」を創設し、4月から申請受付を開始いたしました。この奨励金を通じて、男性の育児休業取得のモデルケースを構築し、仕事と家庭を両立しやすい職場環境を整備してまいります。
また、深刻な人手不足への対応としては、昨年、インドネシアで実施し、大変な熱気に包まれたジョブフェアを、今年は仙台市内で8月に実施いたします。監理団体や人材とのマッチングから定着に至るまで、ワンストップで支援し、昨年以上に多くの県内企業が人手不足を解消できるよう取り組んでまいります。また、4月に開校した「おおさき日本語学校」については、運営費の一部支援と専門コーディネーター派遣を行い円滑な学校運営を支援するほか、県内公立学校に在籍する外国人児童生徒等に対しては、学校生活や学習面での支援を行うアドバイザーを派遣することで、外国人材が安心して学び、暮らすことができる環境づくりを進め、修了後の県内定着につなげてまいります。
第2に、DX推進の一環として昨年4月に本格運用を開始したデジタル身分証アプリについては、昨年度中に約66万人の皆様に御登録いただきました。災害時のみならず、平時においても幅広く活用できることから、我が県における情報インフラとして、サービスの拡充と登録者数の増加に鋭意努めております。
サービスの拡充に向けては、「みやぎポイント」の利用可能店舗の新規募集を4月に開始したほか、子育て世帯の支援や観光振興などでのポイントの活用を図るとともに、民間企業との連携による新たなアプリの検討を進めてまいります。また、昨年度と同様、新規登録者へのポイントキャンペーンを来月から実施するなど年内に100万人の登録を目標にアプリの普及拡大を目指してまいります。
また、人口の減少が進む中、行政サービスの維持・向上を図るためには、デジタル化によるなお一層の業務効率化が必要であり、我が県においては、キャッシュレス決済の導入や行政手続きのオンライン化を積極的に推進しております。今年度は更なるデジタル化への取組として、県立学校入学者選抜におけるウェブ出願システムの導入を進め、県民の利便性の向上と多忙を極める学校現場の負担軽減を実現してまいります。
その他、市町村におけるDXの推進やデジタル技術を活用した民間企業の生産性向上等への支援に引き続き取り組むことで、社会全体の効率化に向け、県民生活、産業・地域、行政運営等のあらゆる場面でのデジタル化を力強く推進してまいります。
第3に、成長産業の誘致・集積に向けては、半導体関連産業の戦略的かつ効果的な誘致・集積に向けた指針として、「みやぎ半導体産業振興ビジョン」を3月に策定いたしました。
半導体は、あらゆる電子機器に組み込まれ、脱炭素や省電力、デジタル社会の実現に不可欠な技術であります。非常に裾野の広い産業であり、生成AIの普及等を背景に、今後も持続的な成長が見込まれる有望な市場でもあることから、半導体関連産業の誘致・集積は更なる「富県躍進」の中核をなすものと考えております。新たな振興ビジョンの下、人材育成や参入支援など、立地優位性を一層高める取組を重層的に推進しながら、我が県が国内における半導体生産の重要拠点になるよう、半導体工場の誘致に引き続き全力で取り組んでまいります。
次に、インバウンドを含めた交流人口の拡大についてであります。
昨年の我が県の外国人宿泊者数は約73万人と過去最多の見通しであり、仙台空港、仙台空港アクセス鉄道の利用者数についても過去最多を更新いたしました。また、今年度は、仙台空港に東北初となる高雄便が来月、新規就航するほか、仙台塩釜港には外国クルーズ船8隻を含む延べ15隻のクルーズ船が寄港を予定しております。
地域の人口減少が進む中、交流人口の拡大は消費の下支えや新たな雇用の創出、とりわけ若い世代の定住の契機となるなど、地域経済の活性化にとって必要不可欠な要素であり、持続可能な地域社会づくりに向けて、こうした動きを大変心強く感じております。
為替相場の影響や感染症の収束による観光需要の回復に加え、精力的な誘致活動や観光施策の積み重ねなど、これまでの地道な取組が実を結びつつあることもこれら好調の要因と考えておりますが、堅調な東アジアからの誘客に対し、滞在期間が長く、消費金額も高い北米や欧州などからの誘客については、三大都市圏に水をあけられており、今後重点的に取り組むべき課題と考えております。
こうした課題認識を踏まえ、今年度からフランスのパリに職員を派遣し、現地旅行会社等とのネットワークを構築するほか、新潟を含む東北各県や仙台市と連携しながら、欧州でのプロモーションを強化いたします。また、県内事業者による訪日外国人向けの商機創出を新たに支援するなど、この好機を逃すことなく、宿泊税の有効活用も念頭に置きながら、新規誘客とリピーターの獲得に向けた施策を積極的に展開してまいります。
また、現在開催されている「大阪・関西万博」においては、明日から東北各県と連携したプロモーションを実施いたします。国内外から多くの来場者が見込まれるこの機会に、私が先頭に立ち、震災への御支援に対する感謝や復興の姿、食や観光など宮城の魅力を存分に発信し、我が県の更なる認知度の向上や誘客の促進につなげてまいります。
さらに、今年は、我が県において、二つの全国規模の大会が予定されております。来月には「第61回献血運動推進全国大会」が、10月には「第48回全国育樹祭」が開催され、それぞれの大会の成功に向け、関係機関としっかり連携しながら、万全の体制で臨むべく準備を進めているところであります。両大会には、多くの県外からの参加者が見込まれており、是非この機会に、我が県の魅力を実感いただき、今後の交流人口の拡大の契機となるよう努めてまいります。
次に、宿泊税についてであります。
観光振興のための安定的な財源を確保し、地域経済の活性化と交流人口の拡大を図ることを目的に導入を目指してまいりました宿泊税については、昨年10月17日に条例案を可決いただいた後、速やかに総務大臣協議を開始し、3月21日に同意をいただきました。
その導入に当たっては、県内各地で宿泊事業者の皆様を中心に説明や意見交換を重ね、さらには、議員の皆様からも様々な御意見をいただいたところであり、そのようなお声に真摯に耳を傾け、先般、繁忙期を避けた来年1月13日からの課税開始としたほか、事業者の皆様の負担軽減の観点から特別徴収義務者交付金の嵩上げ措置を講じるとともに、官民連携による観光振興の協力金も新設し、制度改善を進めたところであります。
今後は、県民や旅行者の皆様への一層の周知を図るとともに、宿泊事業者の皆様には、税制度や徴収実務に関する個別相談会を実施し、御不安や御懸念の払しょくに丁寧に取り組んでまいります。また、宿泊事業者の皆様と持続可能な観光地域づくりについて共に考え、効果的な宿泊税活用施策を展開していくため、みやぎ観光振興会議に新たに「宿泊事業者部会」を設置し、各圏域での意見交換を開始いたしました。引き続き、仙台市とも歩調を合わせ、円滑な課税開始と有効活用策の検討に努めてまいりますので、議員各位におかれましては、一層の御理解・御協力を賜りますようお願い申し上げます。
次に、持続可能な医療提供体制の構築についてであります。
仙台医療圏の病院再編については、救急医療体制の偏在性などの解消を進めるとともに、医療資源の最適な配分を通じて、将来に渡り安心して医療を受けられる地域社会を目指し検討を重ねてまいりましたが、先月9日に労働者健康安全機構理事長から、東北労災病院の富谷市移転について、コロナ禍後の患者動向の変化や物価高騰等により厳しい経営環境にあることを理由に、協議を終了したい旨の申し出がありました。これまで仙台医療圏北部の政策医療上の課題解決に向けて病院の移転を目指してまいりました県としましては、誠に残念ではありますが、申し出を受け入れざるを得ないものと判断いたしました。
今回の方針決定により、令和元年の県立病院のあり方検討会による報告書を踏まえて進めてきた再編は、大きな節目を迎えたものと認識しております。引き続き、仙台赤十字病院と県立がんセンターの統合による新病院及び名取市内で建て替える県立精神医療センターについて、関係者との協議を進めてまいります。
一方、現在、富谷市が救急・急性期を担う病院を公募しているところであり、富谷・黒川地区の4市町村長からは、財政面を含む支援を要請されております。県といたしましては、新たな病院の政策医療への貢献度等を見極めながら、支援の妥当性や内容について慎重に判断してまいります。
次に、女川原子力発電所についてであります。
先月28日、原子力規制委員会において、女川原子力発電所2号機の使用済燃料乾式貯蔵施設の設置に係る原子炉設置変更許可の決定がなされたところであります。県といたしましては、今回の設置変更許可を受け、女川町及び石巻市とともに、住民の安全こそが最優先との立場から審査内容を確認の上、適切に対応するとともに、東北電力に対しては、乾式貯蔵の意義や安全性等について、立地自治体や住民への説明にしっかり取り組むよう強く要望してまいります。
今回御審議をお願いいたします提出議案は、条例議案18件、条例外議案5件でありますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第78号議案は、公文書の管理について必要な事項を定めようとするものであります。また、議第80号議案は、部分休業に新たな取得形態を追加しようとするもの、議第82号議案は、選択的週休3日制の対象職員の範囲の拡大などを行おうとするもの、議第84号議案は、地方税法等の改正に伴い、特定親族特別控除を創設するなど、県税条例の一部を改正しようとするもの、議第85号議案ないし議第87号議案は、離島振興対策実施地域、原子力発電施設等立地地域及び特定復興産業集積区域における県税の課税免除等の適用期間を延長しようとするもの、議第88号議案は、被災関連市町村から特定の交換により土地を取得した場合における不動産取得税の課税免除の適用期間を延長しようとするもの、議第89号議案、議第90号議案及び議第95号議案は、各種使用料及び手数料等を改定及び廃止しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第96号議案は、財産の取得について、議第97号議案及び議第98号議案は、(仮称)県民会館・NPOプラザ複合施設に係る工事請負契約の締結について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。また、議第99号議案は、地方税法等の改正に伴う県税条例等の一部改正について、議第100号議案は、令和6年度宮城県一般会計予算の補正について、それぞれ専決処分を行いましたので、その承認をお願いしようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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