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令和2年2月12日
本日ここに第三百七十一回宮城県議会が開会され、令和二年度一般会計当初予算案をはじめとする提出議案を御審議いただくに当たり、令和二年度の県政運営の考え方と議案の概要を御説明申し上げます。
説明に先立ち、天皇皇后両陛下におかれましては、昨年十二月二十六日、本県に行幸啓になられ、令和元年台風第十九号により被害を受けた丸森町において、被災された方々をはじめ災害対応に尽力した関係者に対しまして、温かいお見舞いと激励の言葉を賜りました。ここに、県民を代表して謹んで御礼を申し上げます。
それでは御説明申し上げます。
間もなく東日本大震災の発生から九年が経過することとなります。復興・創生期間も残り一年余りとなり、昨年十二月に「『復興・創生期間』後における東日本大震災からの復興の基本方針」が閣議決定され、現在開会中の通常国会において、関連法案が審議される予定であります。国の方針によれば、復興庁の設置期限を十年延長するほか、地震・津波被災地域の被災者支援等の事業について、復興・創生期間後五年間で完了を目指すとされております。また、ハード事業は完了までの支援を継続するほか、五年間で終了しない被災者の心のケア等のソフト事業については、事業の進捗に応じた支援の在り方を検討し適切に対応するものとされております。今回の方針は本県をはじめ被災団体の要望を踏まえ、国の財政支援の継続が示されており、概ね評価できるものであります。今後とも復興に全力で取り組むとともに、復興・創生期間後五年以内に終了しない施策については、被災された方々の心の復興や安心に確実につなげられるよう、引き続き国に対して、被災地の実情に寄り添った柔軟な対応を強く求めてまいります。
令和元年台風第十九号による豪雨被害につきましては、死者十九名、行方不明者二名、住家被害は二万棟近くに上り、被害総額は千五百億円余りと甚大な規模となっております。現在、公共土木施設等の復旧作業に全力で取り組むとともに、被災された方々の生活再建支援、被災企業や農林漁業者の施設復旧を進めており、今回提案いたします来年度当初予算案及び今年度補正予算案にも復旧・復興経費を計上しております。また、本県では、関東・東北豪雨による被害の教訓を踏まえ、「防災・減災、国土強靱化のための緊急対策」に係る予算を活用するなど、河川改修等を行ってまいりましたが、近年、従来の想定を超える豪雨災害が頻繁に発生していることから、治水安全度の検証を進め、より災害に強い県土の構築を目指してまいります。
令和二年度は、宮城県震災復興計画、そして国の復興・創生期間の最終年となり、復興の総仕上げに向けたラストスパートの年であるとともに、復興期間後の取組も見据えていくべき重要な年であります。ハード事業については、概ね計画どおり進んでいるものの、道路、河川等の公共土木施設や農地、漁港施設等の復旧・復興、被災事業者の施設復旧は、計画変更や事業間調整により想定以上の期間を要している箇所も残っている状況です。先ほど申し上げました国の基本方針によれば、復興・創生期間後においても、県民の安全・安心確保のため、事業の完了まで支援が継続される予定でありますが、可能な限り来年度内での事業完了を目標とし、スピードを最大限重視しながら全力で取り組んでまいりたいと考えております。
心の復興をはじめとするソフト事業については、被災された方々に寄り添っていくことが何よりも優先されるべきであり、引き続き心のケアや見守り活動、健康支援等の施策に重点を置いて取り組んでまいります。また、被災された方々が地域で生き生きと暮らしていくためには、地域コミュニティの形成・維持が必要であり、コミュニティの活動や互いに支え合う体制づくりの支援を継続して進めることとしております。これらのソフト事業については、復興・創生期間後の国の財政支援の方向性を踏まえ、独自財源の活用も視野に入れながら、きめ細かくかつ息の長い支援の継続を検討してまいります。
様々な経済指標によれば、現在、我が国経済は若干の鈍化が見られるものの、依然として景気回復基調にあるとされております。しかしながら、本県においては、景気回復を十分に実感できていないという声も聞かれることから、地域経済の実状にも配慮しながら、富県宮城を推し進め、地域経済全体の底上げを図ってまいりたいと考えております。特に、喫緊の課題であります各種産業における人材の育成・確保対策については、若年層のみならず高齢者・女性の就業促進による労働力の確保や、新たな在留資格「特定技能」の創設などを踏まえた外国人材の活用、さらには、働き方改革やAI及びIoTなどのデジタル・先端技術の活用による生産性向上が不可欠であります。このような労働市場における人手不足問題を筆頭に本県経済は様々な課題を抱えていることから、効果的かつ時宜にかなった施策を進めることにより、県内中小企業及び農林水産業の競争力強化や商店街の活性化、製造業の集積やインバウンド誘致、再生可能エネルギーの導入等を推進し、地域経済の持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。
また、本県経済の成長及び持続的な地域社会の形成にとって高いハードルとなる人口減少・少子高齢化の進行に対しましては、引き続き地方創生に向けた施策などを積極的に推し進めることが重要であります。具体的には、安定した雇用の創出、UIJターンなどによる移住・定住の推進、子育て・教育支援や地域包括ケアシステムの充実などの施策に万全を期してまいります。加えて、根本的な解決に向けた国の強力なリーダーシップを強く求めていくことにより、「生まれてよかった、育ってよかった、住んでよかった」と心から思っていただけるような明るい未来を描ける地域社会の構築に全力を挙げてチャレンジしてまいります。
東京二○二○オリンピック・パラリンピック競技大会については、開幕まで半年を切り、来月には、聖火が東松島市に空輸され、「復興の火」として、石巻市及び仙台市で展示される予定であります。五月には大会公式文化プログラム「NIPPONフェスティバル」が岩沼市の千年希望の丘で開催されるほか、様々な機運醸成イベントが行われることとなっております。加えて、大会開催の機会を最大限に活かすため、大会期間中、東北・新潟の官民が連携して東京都内に「東北ハウス」を設置し、東北の復興・観光をPRするほか、訪日外国人旅行者向けの情報発信にも取り組みます。復興に向かう姿を発信し支援への感謝を伝える「復興五輪」として、さらには、世界各地で多発している紛争や経済摩擦などを超越し、世界中の人々が手と手を取り合う平和の祭典として、大会が成功裏に終わるよう万全を期してまいります。
九月に開催されます「第四十回全国豊かな海づくり大会~食材王国みやぎ大会~」については、石巻魚市場・石巻漁港において、式典行事や海上歓迎・放流行事を執り行うこととしております。本大会は、震災復興計画の最終年度において、震災で甚大な被害を受けた本県水産業の復興が進んだ姿を発信し、全国からいただいた数多くの御支援への感謝を伝えるまたとない機会であり、大会成功に向け着実に準備を進めてまいります。
観光振興施策の新たな財源確保につきましては、先月、「観光振興財源検討会議」において、更なる観光振興施策に取り組むため、安定かつ継続した財源の確保が必要であることから、法定外目的税として宿泊行為への課税が適当とする旨の答申がなされたところであります。本県の人口は、今後二十五年で約五十万人減少し、百八十万人程度になると予測され、県内経済の縮小が見込まれます。これらを踏まえ、外国人観光客の取り込みなどの交流人口の拡大により、地域経済の活性化と魅力ある地域づくりを継続的に実現するため、検討会議の答申を十分に踏まえ、観光振興施策の財源確保策として宿泊税を創設する条例案を今回提案しているところであります。今後とも、宿泊事業者や観光関係者等と十分な意見交換を重ねながら、より効果的で満足度の高い観光施策の展開に取り組んでまいります。
また、人口減少や少子高齢化を見据え、今年度初めから「県有施設再編等の在り方検討懇話会」を開催し、老朽化が進む公共施設等の再編整備の在り方について、有識者の御意見をいただいているところであります。近日中に策定する県民会館や美術館などの再編整備等の基本方針の最終案に基づき、今後、県民ニーズにも十分配慮しながら、集約・複合化に向けた基本構想などについて引き続き検討を進めてまいります。
上水道、工業用水道、下水道の三事業に係る「みやぎ型管理運営方式」については、先の議会において実施方針に係る条例の改正案を可決いただいたことから、令和四年度の事業開始を目指し、今後、募集要項を公表した上、有識者等による客観的・専門的な審査により、事業者の選定を行うこととしております。
感染拡大が懸念される新型コロナウイルス感染症については、対策本部を設置し、全庁を挙げて対策に取り組んでいるところであります。今後も、状況に応じて機動的な対応に努め、県民の安全・安心の確保のために万全を期してまいります。
最近の国際情勢を概観いたしますと、世界経済の減速懸念も強く、高い経済成長は期待できない状況であるほか、米中貿易摩擦やイギリスの欧州連合離脱など様々な政治・社会的問題が生じております。また、日米貿易協定等の経済連携協定発効により、我が国はボーダーレス化した世界経済の荒波の中を進むこととなり、今後の見通しに最大限の注意を払うべき状況にあると考えております。
一方、先月、国が発表した経済見通しによりますと、我が国経済は、総合経済対策の円滑かつ着実な実施により、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心とした景気回復が見込まれ、来年度の実質経済成長率は一・四パーセント程度の若干のプラス成長が見込まれております。
マクロベースにおける高い経済成長という量的な拡大が見込めなくなった世界経済、そして我が国においては、分配面における格差や貧困を改善することにより、実体経済を底上げしていく質的な転換を進めることが重要であります。この質的転換は、地域社会における国民・県民の「心の豊かさ」や「生活重視」につながり、SDGsの方向性とも合致するものと考えられます。本県では残り一年余りの計画期間となった「宮城の将来ビジョン」及び「宮城県震災復興計画」の後継計画として、次期総合計画の策定を進めております。新計画においては、SDGsの考え方を反映させ、本県が抱える諸課題の解決を図り、富県宮城を更に躍進させていくことにより、令和という新たな時代において、県民一人ひとりが幸福を実感し、いつまでも安心して暮らせる宮城を実現できる持続的な地域社会の構築を目指してまいります。
(当初予算の編成方針)
次に、当初予算の編成に当たっての基本的な考え方を御説明申し上げます。
国の令和二年度予算案は、幼児教育・保育の無償化や高等教育の修学支援など、全世代型社会保障への転換を推進するため、社会保障関係費が過去最高額となったほか、「防災・減災、国土強靱化のための緊急対策」などの経費が盛り込まれたことにより、一般会計の総額は、二年連続で百兆円を超え、今年度予算を上回る過去最大の規模となりました。また、東日本大震災復興特別会計には、震災復興特別交付税や災害復旧事業費、被災者支援総合交付金などが計上され、引き続き復興の総仕上げに向け、各種事業を計画的に進めることができるものと考えております。
地方財政対策では、幼児教育・保育の無償化や高等教育の修学支援に加え、地域社会の維持・再生に係る財源が重点的に計上されております。歳入面では、地方税収は若干の増加が見込まれるほか、地方交付税についても前年度比増となり、交付団体ベースでの地方一般財源総額も前年度を約一・一兆円上回る水準が確保されたところであります。また、昨年度に引き続き国・地方で折半していた地方財政計画の最終的な財源不足が解消されたこと等により、赤字地方債である臨時財政対策債の発行が抑制され、その残高も縮減されたことは、地方財政の健全化に向け評価できるものであります。
令和二年度当初予算案は、昨年十月に策定した「令和二年度政策財政運営の基本方針」に基づき、「復興計画完結予算」として、心のケアをはじめとする被災された方々へのソフト面における支援や公共土木施設の復旧事業など、復興の総仕上げに全力で取り組むこととしております。また、「政策展開の方向性」に沿った地域経済の更なる振興策や復興期間後も見据えた地方創生を推進する施策に予算を重点配分し、編成しているものであります。
このうち震災対応分は、引き続き国の制度や支援を最大限活用するとともに、復興基金など県独自の財源も効果的に活用することにより、創造的な復興の完遂を目指すこととしております。通常分については、地方交付税は前年度比で増加見込みであるものの、引き続き大幅な税収増は期待できないほか、臨時財政対策債の発行額は相当程度の減少を見込んでいることから、多額の財源不足が生じ、特例的な県債の活用に加え、財政調整基金の取崩しを行わざるを得ない状況です。このような中で、令和元年台風第十九号からの復旧・復興経費を計上するとともに、東日本大震災からの復興期間後を見据えた新たなニーズへの対応のため、既存事業についてはその効果及び実施方法の検証や見直しを徹底し、富県宮城の推進に必要不可欠な施策を重点的に予算化しているところであります。
この結果、令和二年度当初予算案は、一般会計の総額では今年度予算を上回り、引き続き一兆円を超える規模となっております。
令和二年度当初予算案における主な施策について、「政策財政運営の基本方針」に掲げた四つの「政策推進の基本方向」に沿って御説明申し上げます。
(力強くきめ細かな震災復興)
初めに、震災復興についてであります。
まず、被災された方々の生活・保健・福祉面における環境の確保についてであります。被災された方々がコミュニティの一員として地域と密接に関わりながら日常を送っていただくことは大変重要なものと考えており、見守り活動や健康の維持・確保、地域コミュニティの自主的な住民活動への支援に加え、NPO等を活用した人と人とのつながりを生み出す被災者支援を実施いたします。
また、被災された方々に寄り添い心の復興を目指していくため、心のケアセンターの運営を支援するほか、心の問題から生じる不登校等への体制整備として、子どもの心のケアハウス運営市町村を拡充するとともに、石巻圏域子ども・若者総合相談センターの運営によるワンストップ相談体制の充実を図ります。さらに、各学校においては、スクールカウンセラーを引き続き配置し、震災等による環境の変化に対して児童・生徒一人ひとりへのきめ細かい心のケアを行うほか、いじめ・不登校等の課題への対応支援を行うべく、心のケア支援員や心のサポートアドバイザーを配置することとしております。
地域における産業基盤の復興は富県宮城の実現に不可欠な課題であり、引き続きグループ補助金などを活用し、沿岸部を中心とした被災事業者の施設・設備の復旧整備や生産性向上への助成を行うほか、販路の回復、創業・第二創業や経営の安定化への支援に取り組んでまいります。また、被災農地や漁港などの生産基盤の復旧を進めるほか、県産農林水産物や食品製造業の失われた販路を取り戻し、県産品のイメージ向上と県内外での消費拡大を図るべく、PRイベントの開催や海外販路の開拓など消費拡大に向けた取組を行います。
観光振興の面では、特に沿岸部における観光客数の回復を目指し、今年度好評をいただいたキャラクターとタイアップした通年型キャンペーンを引き続き実施するほか、再来年度に開催予定の東北六県を対象としたデスティネーションキャンペーンの準備を進めており、効果的に本県及び東北の魅力を発信し、国内外からの交流人口の拡大を図ります。
仙台空港は民営化から四年目を迎え、タイ国際航空のバンコク便や中国国際航空の大連便が再開するなど、路線の拡大が進んでおります。引き続き、東北の玄関口として更なる利用拡大に向け、LCCをはじめとする航空会社に対する路線開設支援に取り組むほか、空港運用の二十四時間化に向けて、地元自治体や空港周辺地域の方々と丁寧な協議を行ってまいります。
このほか、復興事業として行われている三陸縦貫自動車道やみやぎ県北高速幹線道路など交通インフラの整備についても、早期の全線開通を目指し、積極的に推進してまいります。
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質による汚染廃棄物につきましては、各圏域で焼却やすき込み等による処理が進められております。県としましても一時保管状態の早期解消を目指し、関係市町村の状況把握に努めるとともに、円滑かつ安全に処理の促進が図られるよう、国とも連携を図りながら市町村の取組を支援してまいります。
また、学び支援コーディネーターを引き続き配置することにより、震災を体験した児童生徒が安心して学べる教育環境の確保に取り組むほか、地域で震災伝承活動に取り組む団体を対象とした研修会の開催などにより、県内の震災伝承体制の充実強化を図ります。さらに、今月設置いたしました学校防災体制在り方検討会議において、学校における防災対策への取組について協議を行ってまいります。加えて、石巻南浜津波復興祈念公園に建築が進められている中核的施設内に震災伝承関連の展示整備を実施するほか、被災庁舎の復旧では、来年度内での完成を目指し、南三陸警察署をはじめとする警察施設の建設工事を行うこととしております。
(地域経済の更なる成長)
次に、地域経済の更なる成長についてであります。
富県戦略を推進する上で重要な施策であるものづくり産業を中心とした企業集積については、現在、その核となる次世代放射光施設の土地造成が進んでおり、今年度内に基本建屋の建設が着工される見通しとなっております。これらを踏まえ、来年度は大学等の研究拠点誘致によるリサーチコンプレックス形成に向けた調査を行ってまいります。さらに、積極的に企業誘致を行うことにより本県への投資拡大を図り、地元企業の技術力向上、取引機会の拡大を進めるとともに、県内立地企業の雇用確保支援を効果的に実施するほか、ユニバーサルデザインタクシーの導入などにも支援を行います。
地域経済を支える中小企業・小規模事業者の振興につきましては、引き続き商工会及び商工会議所における活動を支援するほか、企業におけるAIやIoT等の先端技術の導入を促進する実証事業の拡充や、人材育成に向けた取組を実施します。地域活性化の面では、地方創生推進交付金を活用し、民泊の開業支援や普及啓発を図るとともに、松島湾地域の観光資源を活かした、長期滞在を促す体験型コンテンツを創出するなど、新たな松島湾エリアの魅力を創造してまいります。
労働市場における人手不足は、本県のみならず、我が国全体で解決していくべき大きな課題であります。来年度は、引き続きUIJターンにより創業する方などを対象にスタートアップ支援や経営安定までの伴走型支援を進めるほか、みやぎジョブカフェへの企業採用コンシェルジュの試行配置や就職氷河期世代への就労支援を実施いたします。加えて、学生等の若年層における製造業の認知度向上と魅力発信に引き続き取り組むとともに、ベトナムでの人材セミナー・交流会や県内及び首都圏の留学生等を対象とした合同企業説明会の開催などにより、受入拡大が見込まれる外国人材の活用を推進してまいります。また、老朽化が進む高等技術専門校については、有識者の御意見を伺いながら、在り方検討を進め、富県宮城を支えるものづくり人材の育成を図ってまいります。
農業振興の面では、引き続き「だて正夢」をはじめとする県産米の認知度向上と販路拡大を推進するとともに、関係人口を拡大し、持続可能な農山漁村を構築するため、「令和のむらづくり」として、地域資源を活用したビジネスの創出や地域資源ペアリングの推進、交流拡大プラットフォームの運営支援などを進めてまいります。また、自動運転やほ場・経営管理システムの活用によるスマート農業技術の普及・促進に取り組み、省力化・効率化を進めるほか、強い園芸特産地を育成していくため、いちごの新品種「にこにこベリー」のモデル生産農家における実証ほ場を県内全域に設置し、収量増加や生産拡大を図ります。畜産業においては、引き続き基幹種雄牛造成を行うほか、集乳施設の統廃合・機能強化を図り、酪農経営の安定と消費者への安定供給に取り組みます。
水産業及び林業の振興については、水産業の担い手確保を図るため、漁業就業者確保育成センターを運営するとともに、就労した担い手の定着を目指し、漁協等における受入体制の整備支援を行うほか、林業の新規就業希望者に対する技術研修を開始いたします。さらに、近年問題となっているプラスチック等海洋ごみの回収・処理支援やウニの除去などの磯焼け対策支援を実施いたします。このほか、森林環境譲与税を活用し、林業労働力確保支援センターにおける安全講習等の受講支援やスマート林業の推進に取り組みます。
(安心していきいきと暮らせる宮城の実現)
次に、安心していきいきと暮らせる宮城の実現についてであります。
持続可能な地域社会を構築していくためには、未来を担う子どもたちの健全な育成に向けた環境整備が不可欠なものと考えております。迅速な対応が求められる児童虐待防止対策としては、SNSを活用した相談事業の試行や児童相談所の体制強化に取り組みます。また、乳幼児医療費助成や地域子ども・子育て支援事業を継続するとともに、認可外保育施設における事故防止対策として必要な機器の導入助成を実施します。このほか、子どもの貧困対策事業を行う市町村や子どもの居場所づくりに取り組む団体を支援いたします。
福祉分野では、各種イベントにおいて食品を回収するフードドライブを実施しフードバンク等の普及啓発や回収した食品の関係団体への提供を進めます。高齢者介護においては、介護人材確保緊急対策として、働き方改革に取り組む介護事業者に対する制度構築への助成や、外国人介護人材の受入支援及び介護イメージアップ事業を実施するほか、市町村が行う高齢者のフレイル対策を支援します。加えて、認知症疾患医療センターへの介護支援専門員の配置経費への助成を行い、医療機関及び関係機関と連携した認知症患者や家族の相談支援を実施いたします。また、障害のある方に対する情報保障・合理的配慮の推進の面から、筆談や音声の文字化及び遠隔手話通訳機能を有したタブレット端末を県庁及び各保健福祉事務所に設置することとしております。ひきこもり対策としては、ひきこもり地域支援センターから市町村等の活動を支援するアドバイザーを派遣することに加え、県北及び県南地域に、居場所となり社会活動の準備を行うことのできるモデル的な拠点を設置いたします。
適正な医療の提供により県民の健康・生命を守る観点からは、四十歳未満のがん患者に対する生殖機能温存治療費の助成を開始するほか、二十歳未満を対象に造血幹細胞移植後のワクチン再接種費用助成を行います。また、地域医療の課題や今後の医療需要について調査・分析を行い、地域医療構想の実現に向けた病床機能の分化・連携を進めます。
教育の面では、今年度に引き続き幼児教育・保育の無償化を実施するほか、新たに私立専修学校の授業料軽減などの高等教育の修学支援をスタートさせます。また、教員の多忙化解消を目的に、モデル事業として小中学校にスクールサポートスタッフを配置し、効果検証を行います。加えて、学力向上マネジメント・アドバイザーの配置を拡充し、学力向上のためのPDCAサイクルの確立に取り組みます。特別支援学校については、スクールバスを増便することにより、通学時間の短縮を図ります。本県の学校教育において重要な役割を果たしている私立学校に対しては、新たに私立高校入学金の減免や学校安全・災害対策への助成を実施することにより、保護者の経済的負担の軽減と学校経営の健全化を進めます。
不登校児童生徒支援においては、学び支援教室をモデル的に小中学校に設置し、コーディネーターや加配教員による学習・自立支援を開始いたします。また、児童生徒の体力・運動能力及び地域のスポーツ力の向上に向け、引き続きモデル事業に取り組むとともに、中学校に加え新たに県立高校に部活動指導員を配置し、教員の負担軽減を図ります。
警察関係では、若柳警察署と築館警察署を統合する「(仮称)栗原警察署」の基本・実施設計や造成工事を行うほか、地域を守る警察官の安全確保の観点から、配備の優先度を踏まえつつ、速やかに改良型耐刃防護衣の整備を進めます。
(美しく安全なまちづくり)
次に、美しく安全なまちづくりについてであります。
令和元年台風第十九号による被害をはじめ、各地で多発している豪雨災害への対策として、引き続き国の「防災・減災、国土強靱化のための緊急対策」をはじめとする予算を活用しながら、迫川や七北田川などにおける河道掘削等の河川改修事業を更に進めるとともに、吉田川の床上浸水対策特別緊急事業を実施してまいります。また、大阪府北部を震源とする地震による事故の教訓を踏まえ、危険なブロック塀等の除却工事補助を実施する市町村への助成を行い、小学校スクールゾーンの安全確保を図ります。
地球温暖化防止対策の面では、次期環境基本計画に「二〇五〇年二酸化炭素排出実質ゼロ」の目標を掲げ、地産地消型エネルギーの導入拡大や住宅・建築物の省エネ化推進などに取り組んでまいります。また、民間事業者が行う水素ステーション整備を支援し、燃料電池バスを路線バスとして導入するなど、水素エネルギーの更なる利活用を図り、脱炭素社会の構築を目指します。
中山間地域における鳥獣被害の防止につきましては、狩猟者の技術力向上を目指した研修を新たに実施することに加え、イノシシによる農業被害等への対策として、地方振興事務所に配置する鳥獣被害対策専門指導員を増員することにより、市町村との協力体制を強化し、被害の低減に努めてまいります。
また、来年度は慶長遣欧使節の帰国から四百年の節目の年であることから、先人の偉業を確認し、リニューアル予定の慶長使節船ミュージアムの魅力を広く発信する絶好の機会と捉え、帰国四百年記念シンポジウムをはじめとする各種イベントを開催いたします。
以上、施策の主な内容について御説明申し上げましたが、令和二年度の当初予算規模は、一般会計で一兆一千三百三十五億六千四百余万円、総計で一兆五千八百九十四億一千百余万円となります。財源の主なものとしては、県税二千九百三十二億円、地方交付税二千百二十六億円、国庫支出金二千四百六十六億六千六百余万円、繰入金二千二百三十億四千五百余万円を計上し、また、臨時財政対策債及び借換債を含め県債一千七百五十三億八千五百余万円を発行することにしております。
(令和元年度補正予算案)
次に、令和元年度補正予算案について御説明申し上げます。
今回の補正予算案は、先月末に成立した経済対策を主眼とする国の補正予算に対応し、令和元年台風第十九号による被害を踏まえた洪水・土砂災害対策やGIGAスクール構想に基づく校内通信設備整備に係る経費等を重点的に計上しております。補正額は、一般会計及び総計ともに二百三十三億八千四百余万円となり、財源としては、国庫支出金百三十五億三千三百余万円、県債七十一億九千七百余万円などを追加しております。この結果、今年度の予算規模は、一般会計で一兆二千七百九億四千五百余万円、総計で一兆七千五百六十四億六千四百余万円となります。
次に、予算外議案については、条例議案三十一件、条例外議案二十三件を提案しておりますが、そのうち主なものについて概要を御説明申し上げます。
まず、条例議案でありますが、議第十七号議案は、地方自治法の改正に伴い、知事等の県に対する損害賠償責任の一部免責に関する基準について必要な事項を定めようとするもの、議第十九号議案は、観光振興に係る施策を実施するため、財源の確保を目的として宿泊税を創設しようとするもの、議第二十九号議案は、各種手数料の新設を行おうとするもの、議第三十七号議案は、看護職員の地域偏在の解消を図るため、所要の改正を行おうとするもの、議第四十四号議案は、道路法施行令の改正に準じ所要の改正を行おうとするもの、議第四十七号議案は、土地区画整理事業の完了に伴い、関係条例を廃止しようとするものであります。
次に、条例外議案でありますが、議第四十八号議案は、宮城県地方創生総合戦略の変更について、議第四十九号議案は、包括外部監査契約の締結について、議第五十号議案ないし議第五十六号議案は、工事請負契約の締結について、議第五十七号議案ないし議第六十八号議案は、工事請負変更契約の締結について、議第六十九号議案及び議第七十号議案は、市町村受益負担金について、それぞれ議会の議決を受けようとするものであります。
以上をもちまして、提出議案に係る概要の説明を終わりますが、何とぞ慎重に御審議を賜りまして可決されますようお願い申し上げます。
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